PHQ-9・GAD-7 スコアの読み方完全ガイド|うつ・不安・睡眠の重症度別セルフケアと受診の目安を救急×精神科二重専門医が解説

phq9 gad7 self care guide
急な症状でお困りの方へ ─ 胸痛・麻痺・激しい頭痛・呼吸困難など緊急性のある症状は 救急受診ガイド(119を呼ぶ目安) をご確認ください。

「PHQ-9 が 14 点だった」「GAD-7 が 12 点」——スコアそのものは数字にすぎません。問題は、その数字があなたの今後 1 週間・1 か月・半年をどう変えるかです。スクリーニングは診断ではなく「ふるい分け」のツール。低くても見逃せないサインがあり、高くても緊急ではない場合があります。本稿では救急科と精神科の二重専門医の視点から、各スコアの重症度別に「次の一歩」を具体的に示します。

目次

PHQ-9 完全ガイド — うつ症状を 9 項目で評価

PHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)は、Kroenke らが 2001 年に J Gen Intern Med に発表した、世界で最も使用されているうつ病スクリーニング尺度です。DSM のうつ病診断基準 9 項目を、過去 2 週間の頻度(0〜3 点)で自己評価します。総得点 0〜27 点。日本うつ病学会の「大うつ病性障害治療ガイドライン 2024」も、プライマリケアでの使用を推奨しています。

救急外来では、自殺企図後の患者に PHQ-9 を施行することがあります。9 項目目(自分を傷つけたい、死んでしまいたい)が 1 点以上であれば、総得点に関わらず精神科緊急対応を検討します。項目 9 が 1 点以上=総得点を見る前にまず動く、これが救急現場の鉄則です。

0〜4 点:症状なし/軽微

うつ症状はほぼないと判断されます。ただし、ストレス耐性が極端に高い人や、感情を言語化しにくい人(アレキシサイミア傾向)では低く出ることがあります。心当たりのある不調があれば、GAD-7 や K6 も併せて施行してください。次の一歩:日常のセルフケア(睡眠・運動・食事)を維持。3 か月後に再施行。

5〜9 点:軽度

軽度のうつ症状があります。仕事や生活への支障が軽微であれば、まずは生活習慣の見直しから入る選択肢があります。日本うつ病学会のガイドラインでも、軽症うつ病に対しては必ずしも薬物療法が第一選択ではなく、心理教育・支持的精神療法・運動療法が推奨されています。次の一歩:2 週間後に再施行し、上昇トレンドなら受診を検討。睡眠 7 時間確保、週 150 分の有酸素運動、アルコールを週 2 日以上休肝日に。

10〜14 点:中等度

中等度のうつ病が疑われ、医療機関の受診を検討すべき領域です。仕事のパフォーマンス低下、対人関係の摩耗、食欲・睡眠の明確な変化が出ているはずです。精神科外来では、この領域から薬物療法と精神療法の併用が選択肢に入ります。次の一歩:2 週間以内に精神科・心療内科を受診。職場のストレスチェック窓口や産業医も活用可能。

15〜19 点:中等度〜重度

仕事や家事が「なんとかこなせる」から「明らかに困難」に移行する領域です。希死念慮が伴うことも増えてきます。次の一歩:1 週間以内に受診。可能な限り家族や信頼できる人を同伴。診断書・休職の検討も視野に。

20〜27 点:重度

重度のうつ病が強く疑われます。日常生活が成立しないレベルで、食事・入浴・排泄など基本的活動にも支障が出ます。希死念慮や自殺念慮を伴う頻度が高く、入院適応となるケースもあります。救急現場では、この領域の患者が過量服薬で搬送されてくることが少なくありません。次の一歩:当日中に受診。一人で来院困難なら家族同伴、それも難しければ「いのちの電話」「よりそいホットライン」「精神科救急情報センター」を経由。希死念慮が切迫していれば 119 番をためらわないでください。

GAD-7 完全ガイド — 不安症状を 7 項目で評価

GAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)は全般性不安障害のスクリーニング尺度として開発されましたが、パニック障害・社交不安障害・PTSD のスクリーニングにも有用性が報告されています。総得点 0〜21 点。

0〜4 点:症状なし/軽微

不安症状はほぼありません。ただし、不安は「身体症状」として現れることがあり(動悸・発汗・胸部圧迫感)、本人は「不安」と認識せず救急外来に「心臓発作かもしれない」と来院するケースが多いのも事実です。次の一歩:身体症状で気になるものがあれば、循環器・消化器の精査と並行してメンタル面も評価。

5〜9 点:軽度

軽度の不安症状。生活への影響は軽微ですが、不眠の入口になりやすい領域です。次の一歩:呼吸法(4 秒吸って 6 秒吐く)、カフェイン制限(1 日 200mg 以下、コーヒー 2 杯まで)、就寝前のスマホ使用を 30 分以上断つ。2 週間後に再施行。

10〜14 点:中等度

中等度の不安障害が疑われる領域です。仕事の集中力低下、回避行動(電車に乗れない、人前で話せない)、身体症状(動悸・発汗・腹部不快感)が顕在化します。認知行動療法(CBT)の効果が最も実証されている領域でもあります。次の一歩:精神科・心療内科の受診を 2 週間以内に。CBT 対応のクリニックや、認知行動療法士の在籍する施設を選ぶと選択肢が広がります。

15〜21 点:重度

重度の不安障害。パニック発作、強い回避行動、外出困難など生活への支障が大きく、薬物療法(SSRI など)と精神療法の併用が標準的です。次の一歩:1 週間以内に受診。発作が頻発していれば、頓服の準備も相談。アルコールでの自己治療は短期的に楽になっても依存を招くため避けるべきです。

K6 完全ガイド — 一般精神苦痛を 6 項目で評価

K6(Kessler 6)は、うつ・不安を分離せず「一般的な精神的苦痛」を測る 6 項目尺度。厚生労働省「国民生活基礎調査」でも採用されています。総得点 0〜24 点。スクリーニング感度が高く、PHQ-9・GAD-7 の補完として有用です。

0〜4 点:問題なし

精神的苦痛は低いレベル。次の一歩:現状維持+セルフケア継続。

5〜12 点:軽度〜中等度の精神的苦痛

「気分の落ち込みと不安が混在している」「どちらか分からないがつらい」といった状態に対応する領域です。PHQ-9 と GAD-7 を併用して、どちらが主体かを切り分けると次の一手が決まります。次の一歩:5〜9 点ならセルフケア継続+2 週後再評価。10〜12 点なら受診検討。

13 点以上:重度の精神的苦痛

13 点以上は気分・不安障害の可能性が高く、受診が強く推奨される領域です。厚労省 e-ヘルスネットでも、13 点以上を「重度精神的苦痛」のカットオフとしています。次の一歩:1〜2 週間以内に受診。

アテネ不眠尺度 完全ガイド — 不眠を 8 項目で評価

アテネ不眠尺度(Athens Insomnia Scale、AIS)は WHO「Worldwide Project on Sleep and Health」プロジェクトで開発された国際標準の不眠スクリーニングです。日本睡眠学会のガイドラインでも紹介されています。総得点 0〜24 点。

0〜3 点:不眠なし

睡眠は良好。次の一歩:現状維持。ただし日中の眠気が強ければ STOP-BANG で睡眠時無呼吸を確認。

4〜5 点:不眠の疑い

軽度の睡眠の問題。次の一歩:睡眠衛生指導が第一選択。就寝・起床時刻を一定に、寝室を暗く涼しく、寝床でのスマホを禁止、カフェインを午後 2 時以降は避ける。2 週間後に再評価。

6 点以上:不眠症の可能性大

不眠症が強く疑われます。長期化すると、うつ病・不安障害・生活習慣病(糖尿病・高血圧)のリスクを高めるため放置は禁物です。次の一歩:精神科・心療内科・睡眠外来を受診。安易にベンゾジアゼピン系睡眠薬を求めるのではなく、CBT-I(不眠症の認知行動療法)が有効な選択肢として推奨されています。

STOP-BANG — 睡眠時無呼吸スクリーニング

STOP-BANG は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)のスクリーニング。8 項目(いびき、日中の眠気、無呼吸の指摘、高血圧、BMI 35 超、年齢 50 超、首周り 40cm 超、男性)の Yes 数で評価します。

Yes 数OSA リスク次の一歩
0〜2経過観察
3〜4呼吸器内科・睡眠外来で簡易検査を検討
5〜8速やかに睡眠外来で PSG(終夜睡眠ポリグラフ)検査

OSA は心血管疾患・糖尿病・突然死リスクを高めます。CPAP 治療で QOL と長期予後の双方を改善できる、介入価値の高い疾患です。

複数スコアが高い時の優先順位 — うつ × 不安 × 不眠の重なりを整理する

臨床的に、うつ・不安・不眠は単独で出ることは少なく、しばしば三つ巴で襲ってきます。優先順位は以下の通り考えます。

  • 項目 PHQ-9-9(希死念慮)が 1 点以上:他の何より優先。当日中の対応。
  • 不眠が 4 週以上持続:不眠を治すとうつ・不安が連鎖的に改善することが多い。睡眠から介入。
  • STOP-BANG 5 点以上:身体疾患(OSA)が背景にある精神症状の可能性。先に呼吸器評価。
  • うつ>不安が顕著:精神科でのうつ病治療を主軸に。
  • 不安>うつが顕著:CBT 対応の精神科・心療内科を選ぶ。

受診の目安 — 何科に行くべきか

  • 精神科:薬物療法を含めた本格的治療が必要なレベル(PHQ-9 15 点以上、GAD-7 15 点以上、K6 13 点以上)。
  • 心療内科:身体症状(動悸・腹痛・頭痛)が前面に出ているケース。
  • 睡眠外来・呼吸器内科:AIS 6 点以上または STOP-BANG 3 点以上。
  • かかりつけ医:軽度〜中等度で、まず相談先が欲しい場合。連携の入口として有用。
  • 精神科救急情報センター・119 番:希死念慮が切迫しているとき。

救急外来で精神科専門医として勤務してきた経験から言えば、「受診のハードルを下げてあげる人」が周囲にいるかどうかが、最初の一歩の有無を決めます。一人で抱え込まず、家族・友人・職場の産業医・自治体の保健師、誰でも構いません。

セルフケアの基本 5 原則(運動・睡眠・食事・社会的つながり・認知行動)

  • 運動:週 150 分以上の中強度有酸素運動。うつ病・不安障害の双方にエビデンスあり。
  • 睡眠:7 時間前後を確保。就寝・起床時刻を固定、寝床でのスマホ禁止、カフェイン午後 2 時以降回避。
  • 食事:地中海式食事パターン(魚・野菜・全粒穀物・オリーブオイル)はうつ病リスク低下と関連。アルコールは週 2 日以上の休肝日。
  • 社会的つながり:孤立は精神疾患・心血管疾患・認知症の独立したリスク因子。週 1 回以上の対面接触を意識。
  • 認知行動:思考の歪み(全か無か思考、破局視、過度の一般化)に気づき、別の視点を試す。書籍やアプリでの自己学習も入口として有用。

よくある質問

Q1. スコアが低いのにつらい場合は?

スクリーニングは万能ではありません。アレキシサイミア傾向、身体症状優位の不安障害、適応障害などはスコアに反映されにくいことがあります。つらさが続くなら受診をためらわないでください。

Q2. 薬は怖いので避けたい

軽症ではセルフケアと精神療法が第一選択です。中等度以上では薬物療法が選択肢に入りますが、CBT 単独も実証された治療です。主治医と相談のうえ、自分が納得できる治療を選んでください。

Q3. 一度受診したら一生通うのか

うつ病・不安障害は寛解する疾患です。再発予防期を含め半年〜2 年程度の治療が標準的ですが、症状改善後に減薬・終結する患者も多くいます。

Q4. 会社に知られたくない

受診情報は守秘義務で守られます。診断書を出さない限り、職場に病名が伝わることはありません。健康保険を使っても、保険組合に病名が共有されることはありません。

Q5. 子どもや高齢者にも使えるか

PHQ-9・GAD-7 は成人向けです。子どもには別の尺度(SDQ など)、高齢者には GDS(老年期うつ病評価尺度)が推奨されます。

まとめ

スクリーニングスコアは「次の一歩を決めるための地図」です。項目 9 が 1 点以上=即受診、PHQ-9 / GAD-7 が 15 点以上=1 週間以内受診、K6 が 13 点以上=1〜2 週間以内受診、AIS が 6 点以上=睡眠外来検討、STOP-BANG が 3 点以上=呼吸器評価、これだけ覚えておけば判断できます。スコアを取って終わりにせず、必ず行動に変換してください。それが、救急と精神科の現場で何百例と見てきた立場からの最も伝えたいメッセージです。

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監修医師:工藤 智博 医師(日本救急医学会 救急科専門医(認定番号 第6456号)/日本精神神経学会 精神科専門医、医籍登録番号 第498377号)

公開日:2026-05-10 / 最終更新日:2026-05-10

参考文献

  • 日本うつ病学会 大うつ病性障害治療ガイドライン2024
  • 日本精神神経学会 精神科診療ガイドライン
  • Kroenke K, Spitzer RL, Williams JB. The PHQ-9. J Gen Intern Med 2001;16:606-13
  • 日本睡眠学会 睡眠障害診療ガイドライン
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「うつ病」「不眠症」

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監修医師:小林 正敬 医師(日本糖尿病学会 糖尿病専門医 / 日本内科学会 総合内科専門医 / 日本老年医学会 老年科専門医・指導医)
医籍登録番号:第486214号
所属:まさぼ内科クリニック飯田橋院 院長 / 一般社団法人代表理事
公開日:2026-05-10 / 最終更新日:2026-05-10

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この記事を書いた人

まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院 代表理事 / 院長。日本糖尿病学会 糖尿病専門医/日本糖尿病協会 糖尿病認定医/日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医/日本内科学会 認定医制度審議会 病歴要約評価委員/日本老年医学会 老年科専門医・指導医/日本抗加齢医学会 抗加齢専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター。医籍登録番号 第486214号。国立国際医療研究センター国府台病院で内科研修を始めた後、糖尿病内科の道に進み、現在は最新の薬物療法(GLP-1作動薬・チルゼパチド等)と、栄養・運動・漢方を組み合わせた包括的な糖尿病・代謝診療を実践しています。

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