アスリート・ボディビル選手の食事戦略|ベストボディ受賞医師が伝授する増量・減量食

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トレーニングは「食事7・運動3」と言われるほど、競技パフォーマンスと身体造形の成否は食事戦略に依存します。同じ筋トレ・同じ走行距離でも、たんぱく質・糖質・脂質・水分・サプリメントの設計が変われば、結果は驚くほど変わります。本稿は、糖尿病専門医・小林正敬(まさぼ)の臨床知見に加え、当院の小林高之医師(整形外科専門医・ベストボディ・ジャパン2024 ミスター・ドクター&医療従事者部門入賞)小林早紀子医師(歯科医師・ベストボディ・ジャパン2025 ミス・ドクター&医療従事者部門 西日本大会グランプリ/アスリートフードマイスター)という兄妹ベストボディ受賞医師が、実際にコンテストに向けて減量・増量を成功させた一次体験を惜しみなく投入します。IOC(国際オリンピック委員会)のスポーツ栄養コンセンサス、ISSN(国際スポーツ栄養学会)の最新ポジションスタンド、日本糖尿病学会・日本臨床スポーツ医学会のガイドラインを根拠に、競技別エネルギー必要量・PFC設計・グリコーゲンローディング・サプリメント選択・ピーキング食までを体系化します。糖尿病をお持ちで運動を始めたい方への注意点も、専門医視点で詳説します。

目次

1. 競技別エネルギー必要量|「足りないアスリート」が一番多い

パフォーマンスを語る前に、まず確認すべきは総エネルギー摂取量です。ISSNや国際オリンピック委員会のコンセンサスでは、エネルギー利用可能量(Energy Availability:EA)= (摂取エネルギー − 運動消費エネルギー) ÷ 除脂肪量45 kcal/kg LBM/日以上でなければ、ホルモン分泌・骨代謝・免疫機能が乱れ、いわゆるRED-S(Relative Energy Deficiency in Sport:スポーツにおける相対的エネルギー不足)に陥ると警告されています。EAが30 kcal/kg LBM/日未満になると、女性では無月経、男性ではテストステロン低下、両性で疲労骨折・甲状腺機能低下・うつ症状が高頻度に発生します。

競技別の目安(体重×1日あたりのkcal)は次の通りです。

  • 持久系(マラソン・トライアスロン・ロードレース):体重×50-70 kcal。練習量により80 kcalを超えることも。
  • 球技系(サッカー・バスケ・テニス):体重×45-60 kcal。試合日は+500-800 kcalを上乗せ。
  • パワー系(ボディビル増量期・ウエイトリフティング・短距離):体重×40-55 kcal。
  • ボディビル減量期:体重×30-38 kcal。これ以下は筋分解と代謝適応のリスク
  • 体重別競技(ボクシング・柔道・レスリング):減量期は体重×30 kcal前後で限界。短期断食的減量は厳禁。

多くのアマチュアアスリートが見落とすのが「練習日と非練習日でエネルギー必要量は500-1,500 kcalも違う」という事実です。毎日同じ量を食べていると、練習日には不足し、休養日には過剰になります。後述する糖質ピリオダイゼーションは、この日内・週内変動に対応する技法です。

2. たんぱく質摂取|1.6-2.2g/kg・タイミング・分割

筋肥大とリカバリーの中核はたんぱく質です。ISSN 2017年ポジションスタンド、2022年改訂、IAAFの陸上競技栄養ガイドラインのいずれも、体重1kgあたり1.4-2.0g/日を強く推奨しています。ボディビルダーや減量期アスリートでは2.2-2.4g/kg/日まで増やすメリットがあるとする systematic review(Helms 2014, Morton 2018)も多数あります。

たんぱく質摂取で重要なのは「総量」「分割」「leucine量」「タイミング」の4軸です。

  • 総量:体重70kgなら110-155g/日。減量期のフィジーク選手は150-170g/日が標準。
  • 分割:1食20-40gを3-5回に分割。1回100g摂っても余剰アミノ酸は酸化されるだけ。
  • leucine量:1食あたり2.5-3g以上のロイシンでmTORが活性化し筋たんぱく合成(MPS)スイッチがオン。卵3個・鶏胸肉130g・ホエイプロテイン25gで達成可能。
  • タイミング:トレーニング後2時間以内(いわゆる「アナボリックウィンドウ」)と、就寝前のカゼイン(夜間MPS維持)。

食材の組み合わせ例:朝(卵2個+無糖ヨーグルト+プロテイン15g=約35g)、昼(鶏胸肉150g+雑穀ご飯=約40g)、トレ後(ホエイ30g=約25g)、夜(魚100g+豆腐半丁=約30g)、就寝前(カゼイン20gまたはギリシャヨーグルト=約20g)。合計150g。

「胃腸が弱くてプロテインで膨満する」場合は、WPI(ホエイプロテインアイソレート)またはEAA(必須アミノ酸)に切り替えるとほぼ解決します。乳糖不耐症の方はソイ・エッグ・ピープロテインも選択肢です。

3. 糖質摂取|運動前後・グリコーゲンローディング

糖質はアスリートにとって最も誤解されている栄養素です。一般人向けの「糖質制限」をそのままアスリートに適用すると、パフォーマンスは確実に低下します。糖質はATP再合成の主要基質であり、筋グリコーゲンの枯渇は競技中の急減速(マラソン35km地点の「壁」)の主因です。

練習強度・量別の糖質摂取目安(IOCコンセンサス2010・2018):

  • 軽い練習・休養日:体重×3-5 g
  • 中強度1-2時間/日:体重×5-7 g
  • 中高強度2-5時間/日:体重×6-10 g
  • 超持久系(4-5時間以上):体重×8-12 g

体重70kgの中強度トレーニーなら350-490g/日。意外と多い、という印象を持つ方が多いはずです。ご飯1杯(150g)は糖質約55g、食パン6枚切り1枚で約27g、バナナ1本で約21g。減量期でも体重×3 gは確保しないと、神経系の出力低下と筋分解が進みます。

3-1. 運動前の糖質

運動3-4時間前に体重×1-4 gの糖質(中GI〜低GI寄り)を摂取し、30-60分前にバナナ・おにぎり・エネルギーゼリーで体重×1 gを追加するのが王道です。空腹で運動を始めると低血糖リスクとパフォーマンス低下を招きます。

3-2. 運動中の糖質

60分以上の高強度では、1時間あたり30-60gの糖質を液体・ジェルで補給。2.5時間を超えるレースではグルコース+フルクトース混合(2:1比)で1時間あたり最大90gまで吸収可能(マルチトランスポーター戦略)。

3-3. 運動後の糖質(リカバリー)

運動後30-60分はグリコーゲン再合成のゴールデンウィンドウ体重×1.0-1.2 gの高GI糖質+体重×0.3 gのたんぱく質が黄金比。「ホエイプロテイン25g+バナナ2本+オレンジジュース200ml」のような組み合わせが、当院・小林高之医師がベストボディ受賞時に実際に用いていた直後リカバリー食です。

3-4. グリコーゲンローディング

マラソン・トライアスロンなどの90分以上の競技では、レース3日前から体重×10-12 gの糖質を摂り、運動量を漸減(テーパリング)することで筋グリコーゲンを通常の約2倍に蓄積できます。古典的な「糖質枯渇期+過剰摂取期」(Astrand法)は現代では推奨されず、テーパリング+高糖質摂取のみの改良版(Sherman-Costill法)が主流です。

4. 脂質摂取|オメガ3・ココナッツオイル・MCT

脂質はホルモン合成(テストステロン・エストロゲン・コルチゾール)と細胞膜流動性の基盤です。総エネルギーの20-35%を脂質から摂るのが標準。これを下回ると、特に女性ではホルモン異常・無月経のリスクが上がります。

  • 飽和脂肪酸(バター・ココナッツオイル・赤身肉脂):総脂質の1/3以下に。テストステロン合成の基質ではあるが、過剰でLDL上昇。
  • 一価不飽和脂肪酸(オリーブオイル・アボカド・ナッツ):心血管系に最も安全。総脂質の1/3-1/2を目安に。
  • 多価不飽和脂肪酸オメガ6(大豆油・コーン油):摂りすぎ注意。炎症性。
  • オメガ3(青魚EPA/DHA・亜麻仁油・くるみ)EPA+DHAで2-3 g/日を目標。筋たんぱく合成促進・遅発性筋肉痛軽減・関節保護。
  • MCT(中鎖脂肪酸・ココナッツオイル):肝臓で速やかにケトン体に変換。長時間運動時の補助エネルギー源。

当院・小林早紀子医師は、減量期に「朝のコーヒーにMCTオイル小さじ1+ココナッツオイル小さじ1」を加える「バターコーヒー風」の摂取で、午前中の集中力と空腹感の抑制を両立させていたと話します。ただしMCTは下痢を起こしやすいため、小さじ1から漸増することが必要です。

5. 水分・電解質|「のどが渇いた時点で2%脱水」

体重の2%の脱水でパフォーマンスは10-20%低下し、4%で熱中症リスクが急上昇します。のどの渇きは脱水のサインとしては遅い指標であり、競技者は計画的に水分を摂る必要があります。

  • 運動2-3時間前:500-600 ml
  • 運動15分前:200-300 ml
  • 運動中:15-20分ごとに150-250 ml(合計400-800 ml/時)
  • 運動後:体重減少分×1.25-1.5倍を2-4時間かけて補給

1時間以上の運動ではナトリウム500-700 mg/Lの電解質飲料が望ましく、自作なら「水500 ml+食塩1.5 g+砂糖15-30 g+レモン汁少量」で十分です。市販品ではアクエリアス・ポカリスエット、より塩分濃度の高いものとして経口補水液OS-1、競技用ではMag-on・MEDALIST・Tailwindなどが選択肢になります。

低ナトリウム血症(運動関連性低Na血症)はマラソン・ウルトラ競技で意外と多発します。「水だけを大量に飲む」は危険。長時間運動では必ず塩分補給を。

6. サプリメント|エビデンスのあるものだけを使う

サプリメント市場は玉石混交ですが、ISSN・IOC・オーストラリアスポーツ研究所(AIS)の「ABCD分類」でグループAに位置づけられている、つまり明確なエビデンスがあり競技でも使えるものは限られます。

6-1. プロテインパウダー(ホエイ・カゼイン・プラントベース)

食事だけで2.0 g/kgを摂るのは難しいため、プロテインパウダーは食事の延長として位置づけます。トレ直後はホエイ(吸収速度速い)、就寝前はカゼイン(吸収速度遅い・夜間MPS維持)が定石。WPC(濃縮)WPI(分離)では、乳糖が苦手ならWPI、コスパ重視ならWPCが基本選択。

6-2. BCAA・EAA

BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)は空腹時のトレーニングや減量期の筋分解抑制で有用です。ただし、たんぱく質が十分摂れていれば効果は限定的。EAA(必須アミノ酸9種)は単独でMPSを起こせるため、最近はBCAAよりEAAが優先されています。トレーニング中の摂取で持続出力をサポート。

6-3. クレアチン

クレアチンモノハイドレートはサプリメント界の王者。30年以上のメタアナリシスで瞬発力・最大筋力・除脂肪体重・認知機能すべてに改善エビデンス。ローディング(5g×4回×5-7日)→ 維持(3-5g/日)でも、ローディングなしの3-5g/日でも最終効果は同等です。安全性も高く、長期摂取で腎機能低下を起こさないことが確認されています。

6-4. カフェイン

運動30-60分前に体重×3-6 mgのカフェイン(70kgなら200-400mg、コーヒー2-4杯相当)で持久力・集中力・反応速度・痛覚閾値が向上。エビデンスはISSNグループA。ただし夕方以降の摂取は睡眠を阻害し回復を損なうため、16時以降は控えるのが鉄則。

6-5. ベータアラニン

体内でカルノシンに変換され、筋肉内のH+緩衝能を高めます。1-4分の高強度運動(400m走・1500m走・ボート・水泳・HIIT)で約2-3%のパフォーマンス向上。4-6 g/日を4-12週間継続で効果が出ます。摂取後のピリピリ感(パレステジア)は無害。

6-6. その他検討に値するもの

  • 重炭酸ナトリウム(重曹):1-7分の高強度運動で乳酸緩衝。0.2-0.4 g/kg、運動60-90分前。胃腸障害に注意。
  • 硝酸塩(ビートルートジュース):持久力で1-3%向上。
  • HMB:トレーニング初心者・高齢者・減量期で筋分解抑制。
  • ビタミンD:3,000 IU/日。骨・筋・免疫すべてに。

逆に、テストステロンブースター・コルチゾール阻害剤・「燃焼系」サプリの多くは、独立試験で効果が再現されていません。広告に踊らされないこと。

7. 減量期と増量期のPFC設計

「ボディメイクの基本はカロリー収支」――この原則は揺るぎません。しかし、PFC(Protein/Fat/Carb)の設計次第で、同じカロリー収支でも筋肉維持率はまったく違います。

7-1. 増量期(リーンバルク)

  • カロリー:維持カロリー +200-400 kcal。+500 kcal以上は脂肪過多のリスク。
  • P:1.6-2.0 g/kg(体重70kgで112-140g)
  • F:0.8-1.2 g/kg(体重70kgで56-84g)
  • C:残り全部。体重×5-7 gが目安。
  • 増加ペース:体重の0.25-0.5%/週。月1-2kg増まで。

7-2. 減量期(カット)

  • カロリー:維持カロリー −300-500 kcal。−25%以上は筋分解と代謝適応。
  • P:2.0-2.4 g/kg(体重70kgで140-168g)。減量期ほど高たんぱく。
  • F:0.6-1.0 g/kg(体重70kgで42-70g)。0.5 g/kg未満はホルモン低下リスク。
  • C:残り。体重×3-5 gが下限。
  • 減量ペース:体重の0.5-1.0%/週。それ以上の急減量は筋を失う。

7-3. リフィード・ダイエットブレイク

減量期が4-6週続くと、レプチン低下・甲状腺ホルモン低下・交感神経活性低下による代謝適応が起き、減量が停滞します。1-2週間に1日の高糖質日(リフィード)、または4-6週ごとに1週間の維持カロリー(ダイエットブレイク)を入れると、ホルモン環境を回復させ、筋肉維持と代謝維持に有利です。

8. コンテスト直前のピーキング食事戦略

ボディビル・フィジーク・ベストボディなどのコンテスト1-2週間前は、いわゆる「ピーキング」と呼ばれる繊細な調整期間に入ります。体脂肪を残しつつ筋肉のフルネスを最大化し、皮下水分を抜くのが目標です。

8-1. 7-10日前:水分・塩分の安定化

「水を大量に飲み、コンテスト前日に切る」という古典的手法は低Na血症リスクがあり推奨されません。水4-5 L/日を維持し、塩分も通常通り。下手に揺さぶらない方が皮下水分は安定します。

8-2. 5-7日前:糖質枯渇

糖質を体重×1-2 gまで一時的に下げ、筋グリコーゲンを軽く減らします。同時に高たんぱく・高脂質に切り替え、有酸素を維持。

8-3. 2-3日前:糖質ローディング

糖質を体重×8-10 gまで急増させ、筋にグリコーゲンと水分を引き込みます。1g糖質あたり3gの水を筋に引き込むため、見た目の筋ボリュームが増します。白米・餅・蜂蜜・バナナなど低脂質の高GI糖質が中心。

8-4. 当日:微調整

朝食に白米+赤身肉+蜂蜜+少量の塩。ステージ前2時間以内に大福・羊羹・ドライフルーツを少量。糖質と一緒に少量のグルタミン酸・コーヒーを摂ると、ステージ上での張りとカット感が両立しやすいと、当院ベストボディ医師たちは経験から語っています。

9. ベストボディ・ジャパン受賞時の実体験エピソード

ここから先は、当院の小林高之医師小林早紀子医師という、現役医師として第一線で勤務しながらベストボディ・ジャパンで実際にグランプリを獲得した兄妹の一次体験談です。教科書には載らない、現場のリアルな食事戦略がここにあります。

9-1. 小林高之医師(整形外科専門医・ベストボディ・ジャパン 西日本大会グランプリ 2連覇)の証言

「整形外科の手術業務をしながらコンテスト調整するのは、想像以上に難しいことでした。手術日は朝7時から夕方まで立ちっぱなしで食事の自由がきかない。そこで採用したのが“3食+3補食”の6回戦略です。朝5時にオートミール60g+プロテイン+卵3個。手術前の7時にバナナ1本+プロテインゼリー。手術合間の10時頃に鶏胸肉サンドとアーモンド。昼に弁当(白米150g+鶏胸肉200g+ブロッコリー)。手術後15時にプロテイン+オートミール30g。19時にトレーニング、終了後ホエイ40g+白米200g、夜の22時に魚+温野菜+カゼイン20g。これでだいたい3,200 kcal、P200g・F60g・C400gの増量期メニュー、減量期は同じ食材の量を縮めて2,200 kcalまで落としました。食事をルーティン化して『考えなくても摂れる』状態にしないと、医師業務とは両立できません」。

「コンテスト2週間前から、糖質枯渇→ローディングを実施しました。前日のグリコーゲンローディングは白米1合+餅3個+蜂蜜大さじ2を3食に分けて。当日は朝に大福3個と少量の塩水。ステージ上ではっきり『前日との皮膚の張りの違い』が分かったとき、栄養学のすごみを実感しました」。

9-2. 小林早紀子医師(歯科医師・アスリートフードマイスター・ベストボディ2025西日本グランプリ)の証言

「女性の減量は、男性よりホルモン環境への配慮が決定的に重要です。私は体脂肪率18%を下限と決め、それ以下に下げないことを大前提にしました。月経が止まる手前で必ずリフィードを入れる、脂質を0.7 g/kg以下にしないという2つのルールを徹底。アスリートフードマイスターの知識を活かし、たんぱく源は『ローテーション』です。鶏胸肉・卵・白身魚・牛赤身・大豆製品・乳製品を3日サイクルで回すことで、特定食材のアレルゲン化と栄養素偏りを避けました」。

「コンテスト1週間前は、糖質を体重×2 gまで落とし、最後の3日で体重×8 gまで急増させました。大会前日の夕食は、白米・赤身ステーキ・蜂蜜たっぷりのバナナ。当日朝は白米とハチミツとブラックコーヒー、ステージ前30分に大福1個と一口の赤ワイン(血管拡張で血管浮き出しを狙う、ただしこれは個人の経験談)。水は普通通り飲む。脱水戦略はやらない。これで皮膚の張りとカット感を両立できました」。

「もう一つ伝えたいのは、減量期のメンタル維持です。空腹は精神を蝕みます。私は『1日の楽しみ』を1つだけ用意することを徹底しました。低カロリーアイス、無糖プロテインラテ、サウナ、何でもいい。それがあるから6週間続けられました」。

10. 糖尿病者×運動の注意点|糖尿病専門医・小林正敬の臨床視点

糖尿病をお持ちの方が運動を始める、あるいは強度の高いトレーニングを行う際の注意点を、糖尿病専門医として整理します。

10-1. 低血糖の予防

インスリン治療中・SU薬服用中の方が運動すると、低血糖(血糖70 mg/dL未満)のリスクが顕著に上がります。日本糖尿病学会の運動療法指針に従い、運動前血糖が100 mg/dL未満なら15-30gの糖質を補食、100-180 mg/dLなら状況に応じて補食、180 mg/dL以上なら様子見、というのが原則です。

10-2. 高血糖時の運動禁忌

血糖250-300 mg/dL以上で尿ケトン陽性の場合、運動でさらに血糖が上昇しケトアシドーシスを誘発するため、運動は中止。インスリン補正後に再開します。

10-3. 増殖性網膜症・自律神経障害・腎症がある場合

これらの合併症がある場合は、有酸素は許容、しかし高強度の無酸素・バルサルバ動作(息止め)は禁忌に近い扱いです。眼底出血・血圧変動・腎機能悪化のリスクがあります。必ず主治医と連携してください。

10-4. GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬服用中の運動

GLP-1受容体作動薬は単独使用なら低血糖リスクは低いものの、SU薬・インスリンとの併用時はリスクが上がります。SGLT2阻害薬は脱水と正常血糖ケトアシドーシスのリスクがあり、長時間運動・高温環境では注意。水分・塩分補給を強化してください。

10-5. 糖尿病者でも筋肥大は十分可能

HbA1c 6%台で安定している2型糖尿病の方が、当院でも適切な栄養指導とレジスタンストレーニングで除脂肪体重を増やし、HbA1cがさらに改善する例を多数経験しています。「糖尿病だから糖質を一切摂れない」は誤解。運動と組み合わせれば、糖質はパフォーマンスと血糖管理を両立する最強の味方です。

11. FAQ|よくある質問

Q1. プロテインは腎臓に悪いですか?
腎機能が正常な方では、2.0-2.4 g/kg/日のたんぱく質摂取は腎機能を悪化させないことが、複数のRCT・メタアナリシス(Devries 2018など)で示されています。ただし、慢性腎臓病ステージ3以降の方では制限が必要です。腎機能不明の方は、まず血液検査でeGFRを確認してください。

Q2. 増量期に脂肪をつけずに筋肉だけ増やせますか?
完全な「lean gain」は初心者・トレーニング再開者・若年男性ではある程度可能ですが、中上級者では増えた体重の60-70%が筋肉、30-40%が脂肪になるのが現実です。これを「リーンバルク」と呼び、+200-400 kcalの緩やかな増量が最適です。

Q3. 朝食前の空腹有酸素は脂肪燃焼に効果的ですか?
空腹有酸素(fasted cardio)は脂肪酸化率は確かに高まりますが、1日トータルの脂肪減少量は食後有酸素と差がないとするメタアナリシスが多いです。むしろ筋分解リスクがあるため、当院ベストボディ医師たちはBCAAまたはEAA摂取後の有酸素を推奨します。

Q4. チートデイは必要ですか?
週1回の「無制限食」(チート)はカロリー超過しすぎて停滞の原因になりがち。むしろ計画的なリフィード(高糖質日)の方が、レプチン回復と代謝維持に有効です。「ご褒美」より「ホルモン管理」と捉えてください。

Q5. 食事だけで筋肉は増えますか?
増えません。筋肥大には機械的刺激(progressive overload)が必須。栄養はその刺激を最大化する燃料・建材です。トレーニング・栄養・休養(睡眠7時間以上)の三本柱で初めて結果が出ます。

12. 判定後の次の一歩|カロリー計算機で「あなたの最適摂取量」を5秒算出

本稿で紹介したPFC設計は、あなたの体重・体脂肪率・活動量・目的(増量/維持/減量)に応じて細かく調整する必要があります。当院では、これらをすべて入力すると1日の総カロリー・PFCグラム数・推奨食材リストが即時出力されるカロリー計算機ツールを無料公開しています。

増量期も減量期も、まず「自分の維持カロリー」を知ることから。下記からツールにアクセスしてください。

減量・増量シミュレーター(無料)

運動・食事・睡眠と並んで、もう一つお勧めしたいのが定期的な健康チェックです。HbA1c・血中脂質・テストステロン・甲状腺・ビタミンD・フェリチンの定期測定は、特に減量期・増量期のアスリートには強く推奨されます。

13. まとめ|「強い体」は「強い食事戦略」から

本稿の要点を再掲します。

  • エネルギー利用可能量45 kcal/kg LBM/日を死守。RED-Sを避ける。
  • たんぱく質は1.6-2.4 g/kg、3-5回に分割、leucine 2.5g/食以上、就寝前カゼイン。
  • 糖質は体重×3-10 g、運動強度・量で調整。運動後は1.0-1.2 g/kgで即時補給。
  • 脂質は総エネルギーの20-35%、オメガ3を2-3 g/日。
  • 水分は計画的に、長時間運動では電解質を併用。
  • サプリはエビデンスのあるものだけ:プロテイン・クレアチン・カフェイン・ベータアラニン・EAA・ビタミンD。
  • 増量期+200-400 kcal、減量期−300-500 kcalを厳守。月の体重変化2%以内。
  • コンテストピーキングは「水抜き」ではなく「グリコーゲンローディング」。
  • 糖尿病者の運動は主治医連携のもとで、低血糖・高血糖・脱水に注意。

当院は兄妹ベストボディ受賞医師糖尿病専門医が連携する、おそらく日本でも稀な医療機関です。スポーツ栄養・ボディメイクと、糖尿病・生活習慣病の予防医療を、同じ屋根の下で受けられます。本気で身体を変えたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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監修:小林 正敬 医師
日本糖尿病学会 糖尿病専門医 / 日本内科学会 総合内科専門医 / 日本老年医学会 老年科専門医・指導医
医籍登録番号:第486214号
共同監修:小林 高之 医師(日本整形外科学会 整形外科専門医・ベストボディ・ジャパン2024・2025 ミスター・ドクター&医療従事者部門 西日本大会グランプリ 2連覇)/小林 早紀子 医師(歯科医師・日本口腔外科学会 認定医・アスリートフードマイスター・ベストボディ・ジャパン2025 ミス・ドクター&医療従事者部門 西日本大会グランプリ)
公開日:2026-05-10 / 最終更新日:2026-05-10

参考文献

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  • 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023.
  • Australian Institute of Sport (AIS). Supplements – ABCD Classification System. 2024.
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この記事を書いた人

まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院 代表理事 / 院長。日本糖尿病学会 糖尿病専門医/日本糖尿病協会 糖尿病認定医/日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医/日本内科学会 認定医制度審議会 病歴要約評価委員/日本老年医学会 老年科専門医・指導医/日本抗加齢医学会 抗加齢専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター。医籍登録番号 第486214号。国立国際医療研究センター国府台病院で内科研修を始めた後、糖尿病内科の道に進み、現在は最新の薬物療法(GLP-1作動薬・チルゼパチド等)と、栄養・運動・漢方を組み合わせた包括的な糖尿病・代謝診療を実践しています。

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