医療コラムを、と言われてもうまく書けない夜があります。
ガイドラインの引用と、PubMed の文献番号と、学会の用量プロトコル。それらに守られた文章は、たしかに正確で、安全で、誰の役にも立つ。けれど書き終わったあとに、まだ言い残しているものが残る感覚が、ずっと自分のなかにありました。
たとえば、HbA1c が下がった患者さんが「先生、最近ね、孫と動物園に行けたんですよ」と笑ったときのこと。診察室の外で考えていること。土曜の午後に古いゲームセンターで覗き込む筐体の光。読み終わった本の余白に書きつけたメモ。
そういうものを、もう少し、書ける場所がほしいと思いました。
診療室の外にもある、健やかさ
このメディアのキャッチコピーは「健やかさは、診療室の外にもある。」です。コラム本編で書いているのは、診療室の中のことです。だから、ここでは外のことを書こうと思います。
医学的な正確さよりも、人としての温度のほうを優先したい話があります。エビデンスはありません。あるのは、ひとりの糖尿病専門医の、ひとりの人間としての視点だけです。それでも、もしかしたら、誰かの一日の支えになるかもしれない。そう信じて書きはじめます。
このノートについて
不定期です。気が向いたときに書きます。
短い手紙のような回もあれば、ちょっとした随筆のような回もあると思います。患者さんとの会話の断片から始まる回も、休みの日に立ち寄った場所の話から始まる回もあるはずです。
医療コラムのほうは引き続き、各領域の専門医と一緒に、きちんとしたエビデンスベースで書いていきます。Notebook はその裏側で、もう少し肩の力を抜いた言葉を、置いておく場所にしたいと思っています。
読んでくださって、ありがとうございます。
次の Letter で、また。
— 小林 正敬
FOUNDING DIRECTOR · DIABETOLOGIST