「肩こりがマッサージで取れない」「月経痛で寝込む」「シミが急に増えた」「健康診断で頸動脈エコーに指摘」——一見バラバラな症状が、漢方医学では「瘀血(おけつ)」というひとつの体質軸で説明できることがあります。瘀血は血の流れが滞った状態を指し、現代医学の動脈硬化・血栓傾向・微小循環障害と高い親和性を持つ概念です。本ガイドでは、糖尿病専門医として循環器リスク群を診療してきた立場から、瘀血の症状・代表処方・食養生・生活戦略を体系的に解説します。
日本糖尿病学会 糖尿病専門医 / 日本内科学会 総合内科専門医 / 日本老年医学会 老年科専門医・指導医
医籍登録番号:第486214号
公開日:2026-05-10 / 最終更新日:2026-05-10
瘀血タイプとは — 血の流れが滞る体質
瘀血(おけつ)とは、漢方医学において「血(けつ)の循環が滞り、組織に停滞・凝集した状態」を指します。古典『金匱要略』では「瘀血」「乾血」「畜血」などの語で記述され、固定性の刺痛・紫斑・腫塊・月経異常といった臨床像が古代から把握されてきました。
現代医学の用語に置き換えると、瘀血は動脈硬化・微小循環障害・血栓形成傾向・組織灌流低下を包括する概念に近いと考えられます。日本東洋医学会 漢方診療ガイドライン2023でも、瘀血証は循環器疾患・婦人科疾患・慢性疼痛との関連が整理されており、駆瘀血剤(くおけつざい)と総称される処方群の臨床応用が示されています。
糖尿病・脂質異常症・高血圧・喫煙といった動脈硬化の古典的リスク因子を持つ患者は、漢方の弁証では瘀血証を呈することが圧倒的に多いというのが、私自身の臨床実感です。厚生労働省 e-ヘルスネットの「動脈硬化」項目でも、内皮機能障害・血小板凝集・LDL酸化といった病態が解説されていますが、これらはまさに漢方が古来「瘀血」と呼んできた状態と病態的に重なります。
瘀血タイプの主要症状
瘀血証の臨床的特徴は、「固定性」「刺痛」「暗紫色」「血塊」という4つのキーワードに集約されます。気滞による「移動性の張った痛み」とは対照的に、瘀血の痛みは「いつも同じ場所が刺すように痛む」のが特徴です。
1. 固定性の刺痛
「いつも右肩甲骨の内側だけ」「左下腹部の決まった一点」——場所が動かず、針で刺されるような鋭い痛みが瘀血の典型像です。夜間や安静時に悪化し、温めると一時的に楽になる傾向があります。慢性肩こり・頭痛・腰痛で、マッサージや鎮痛薬で取れにくいタイプは瘀血を疑います。
2. 舌下静脈の怒張
舌診で最も客観的な瘀血所見は、舌下静脈の怒張です。舌を上に持ち上げ、舌の裏側を観察したとき、左右に走る静脈が太く青黒く浮き出ている状態は瘀血の確かな指標とされます。健常者では細く目立たないか、淡い水色に見える程度です。
3. 暗紫舌・舌の紫斑
舌の色が淡紅ではなく暗紫色を帯びている、あるいは舌に点状の紫斑が見られる場合も瘀血の典型所見です。コーヒーを飲んだ直後や寒冷暴露後は健常者でも一過性に紫を帯びますが、常時暗紫である場合は瘀血証の可能性が高くなります。
4. シミ・くま・肌のくすみ
顔のシミ(特に頬骨上の肝斑)、目の下の青黒いくま、肌全体のくすみは、皮膚微小循環の停滞を反映した瘀血所見と捉えます。基礎化粧品で改善しないシミ・くまは、内側の血流改善が必要なサインです。
5. 月経血塊・月経困難症
月経血に黒褐色の血塊(レバー状の塊)が混じる、月経痛で鎮痛薬を要する、月経が遅れがちで経血が濁る——これらは婦人科領域の瘀血証の代表的サインです。子宮内膜症・子宮筋腫の合併も瘀血と密接に関連します。
6. 痔・静脈瘤
痔核、下肢静脈瘤、毛細血管拡張なども、局所の血流停滞という観点から瘀血の所見に含まれます。長時間の座位・立位、妊娠・出産歴、運動不足が増悪因子です。
7. 頑固な肩こり・頭痛
マッサージや湿布で一時的に軽快しても、すぐに同じ場所に戻ってくる頑固な肩こり・頭痛は瘀血型を疑います。後頭部から肩甲骨にかけてのコリ、片頭痛で同じ側だけ毎回痛むケースも該当します。
8. 冷えのぼせ
下半身は冷えるのに上半身は火照る「冷えのぼせ」は、血が下半身に巡らず上半身に偏在する瘀血証の典型像です。更年期女性に多く見られ、桂枝茯苓丸の代表的適応となります。
9. 健診異常(脂質・頸動脈エコー・腹部CT)
LDLコレステロール高値、頸動脈エコーでのIMT(内膜中膜複合体厚)上昇、腹部CTでの内臓脂肪面積増大——これらの動脈硬化リスク所見は、漢方的には瘀血の物質的基盤と位置づけられます。日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022でも、これらの定量指標が予防介入の判断材料とされています。
瘀血タイプの代表処方
瘀血証に用いられる処方群は「駆瘀血剤(くおけつざい)」と総称され、活血化瘀(血を巡らせ瘀を除く)を主作用とする生薬——桃仁・牡丹皮・紅花・当帰・芍薬・川芎・牛膝・大黄など——を含みます。以下、保険適用の主要処方を体力・症状軸で整理します。
| 処方名(ツムラ番号) | 体力 | 主な適応 | キー生薬 |
|---|---|---|---|
| 桂枝茯苓丸(25番) | 中等度〜やや充実 | 更年期障害、月経困難、子宮筋腫、シミ、冷えのぼせ、肩こり | 桂皮・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬 |
| 桃核承気湯(61番) | 充実(実証) | 強い瘀血、便秘、のぼせ、月経痛、精神不安 | 桃仁・大黄・桂皮・甘草・芒硝 |
| 桂枝茯苓丸加薏苡仁(125番) | 中等度 | 桂枝茯苓丸の適応+肌荒れ・シミ・ニキビ | 桂枝茯苓丸+薏苡仁 |
| 通導散(105番) | 充実 | 打撲、外傷後の瘀血、月経痛、便秘、精神不安 | 大黄・芒硝・当帰・紅花・枳実 |
| 治打撲一方(89番) | 体力問わず | 打撲・捻挫・外傷後の腫脹と疼痛 | 桂皮・川芎・川骨・甘草・大黄 |
| 大黄牡丹皮湯(33番) | 充実 | 下腹部の瘀血、月経痛、痔、便秘 | 大黄・牡丹皮・桃仁・芒硝・冬瓜子 |
| 温経湯(106番) | 虚証寄り | 冷えと瘀血の混在、月経不順、不妊、手掌煩熱 | 呉茱萸・当帰・川芎・芍薬・人参・桂皮・牡丹皮 |
| 当帰芍薬散(23番) | 虚証 | 冷え性、貧血、むくみ、軽度瘀血、妊娠中の諸症状 | 当帰・芍薬・川芎・茯苓・白朮・沢瀉 |
| 疎経活血湯(53番) | 中等度 | 関節痛・神経痛、腰痛、坐骨神経痛、瘀血を伴う慢性疼痛 | 当帰・芍薬・川芎・牛膝・桃仁・地黄等17味 |
処方選択のポイント
第一選択は桂枝茯苓丸(25番)です。中等度の体力で瘀血証を呈する患者の標準処方として、更年期・月経・冷えのぼせ・シミ・慢性肩こりまで幅広く対応します。PubMedでも、桂枝茯苓丸が末梢循環・血液粘度・血小板凝集に与える影響を検討した研究(Kimura et al., J Ethnopharmacol; Sakamoto et al., Phytomedicine など)が複数報告されており、現代薬理学的にも循環改善作用が裏づけられつつあります。
体力が充実し便秘・のぼせ・精神不安が強い場合は桃核承気湯(61番)。下半身の瘀血と便秘が顕著なら大黄牡丹皮湯(33番)。打撲・外傷後の瘀血には治打撲一方(89番)または通導散(105番)。冷えと瘀血が混在する不妊体質には温経湯(106番)が選択肢になります。虚証寄りで貧血・むくみを伴う軽度瘀血は当帰芍薬散(23番)が穏やかに効きます。
- 桃仁・大黄・牛膝・牡丹皮・芒硝を含む処方は妊婦原則禁忌または慎重投与。桃核承気湯・通導散・大黄牡丹皮湯・桂枝茯苓丸は妊婦には使わない
- 桃核承気湯・通導散・大黄牡丹皮湯は大黄・芒硝の下剤作用が強く、軟便傾向の人は減量から開始(1日1包から)
- 大黄含有処方の長期連用は大腸メラノーシス・耐性を生じうる
- 甘草含有処方(桃核承気湯・治打撲一方等)の長期服用で偽アルドステロン症(低K血症・浮腫・高血圧)に注意
- 当帰・川芎はワルファリン・DOACなど抗凝固薬との相互作用報告あり、併用時は出血傾向に注意
瘀血タイプの食養生
瘀血改善の食養生は、「血を巡らせる」「血液をサラサラにする」「酸化ストレスを減らす」という三方向から組み立てます。中医学の「活血化瘀」食材と、現代栄養学の抗動脈硬化食材は、驚くほど重なります。
推奨食材
- 玉ねぎ:硫化アリル・ケルセチンが血小板凝集を抑制。生で週3回以上が目安
- 青魚(サバ・イワシ・サンマ・アジ):EPA・DHAが中性脂肪を下げ血小板凝集を抑える。週3〜4回
- 納豆:ナットウキナーゼが線溶系を活性化(ただしワルファリン服用者は禁忌)
- 黒豆:アントシアニンによる抗酸化、中医学では「活血」食材の代表
- 酢(黒酢・りんご酢):酢酸による末梢血流改善、食後血糖スパイク抑制
- 生姜:ジンゲロール・ショウガオールが末梢循環を改善、温活の中核食材
- ターメリック(ウコン):クルクミンの抗炎症・抗酸化作用
- 紅花茶(こうかちゃ):少量を継続。妊婦は禁忌
- 赤ワイン:レスベラトロールは候補だが、糖尿病・脂質異常症患者には1日グラス1杯まで
避けたい食習慣
- トランス脂肪酸(マーガリン・市販菓子パン・揚げ物の使い回し油)
- 過度な精製糖質(清涼飲料・菓子):糖化最終産物(AGEs)が血管内皮を障害
- 冷飲料の常用:末梢血管収縮を慢性化させる
- 過度な飲酒:適量を超えると中性脂肪・血圧上昇
瘀血タイプの生活習慣
瘀血改善の生活戦略は、「動かす・温める・座らない」の三本柱です。
有酸素運動
週150分以上の中等度有酸素運動(早歩き・サイクリング・水泳)が血管内皮機能を改善することは、日本動脈硬化学会GL2022でも推奨グレードAです。瘀血証の改善という観点でも、運動による循環刺激は最も強力な「天然の駆瘀血剤」と言えます。HIIT(高強度インターバルトレーニング)は時間効率が高い一方、未経験者は中等度有酸素から始めるのが安全です。
入浴で温める
シャワーだけで済ませず、40度前後の湯に10〜15分浸かる習慣を週5日以上。深部体温を上げ末梢循環を促し、副交感神経を優位にして睡眠の質も改善します。冬季は浴室と脱衣所の温度差によるヒートショック予防のため、脱衣所暖房も併用してください。
座位時間の制限
長時間の座位は下肢静脈うっ滞・深部静脈血栓・代謝低下のリスクとなります。デスクワーク中は30〜60分ごとに2〜3分の立ち上がり・足首回しを組み込んでください。スタンディングデスク・ステッパーの併用も有効です。WHO身体活動ガイドライン2020でも、座位行動の細切れ中断が推奨されています。
禁煙
喫煙は血管内皮を傷害し血小板凝集を促進する、瘀血の最大増悪因子です。禁煙外来(保険適用)の活用を強く推奨します。
瘀血×糖尿病・脂質異常症 — 動脈硬化リスク群との合致
糖尿病専門医として日々の診療で実感するのは、糖尿病・脂質異常症・高血圧・肥満を併せ持つ患者の大半が、漢方的には瘀血証を呈するという事実です。これは決して偶然ではなく、両者が同じ病態——血管内皮障害・微小循環不全・組織低酸素——を別の言語で記述しているためと考えられます。
頸動脈エコー・腹部CTで「見える瘀血」
頸動脈エコーでのIMT肥厚・プラーク所見、腹部CTでの内臓脂肪面積増大(基準100cm²超)は、現代医学が画像で可視化する「動脈硬化の客観指標」ですが、漢方的にはこれらをまさに瘀血の物的基盤として読み取ります。当院では糖尿病初診時に腹部CT・頸動脈エコー・血液検査をセット評価し、リスク階層化を行っています。
糖尿病合併症と駆瘀血剤
糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症はいずれも微小循環障害を基盤としており、漢方では瘀血の典型的合併証として捉えます。実臨床では牛車腎気丸(ツムラ107番)・桂枝茯苓丸(25番)・疎経活血湯(53番)などが補助的に用いられます。日本東洋医学会GL2023でも糖尿病性神経障害への牛車腎気丸の有効性が複数RCTを根拠に記載されています。
脂質異常症と瘀血
LDL高値・HDL低値・中性脂肪高値は、漢方的には瘀血+痰湿の混合証と捉えることが多く、桂枝茯苓丸+防風通聖散(ツムラ62番)の合方が用いられることもあります。ただし防風通聖散は大黄・麻黄・甘草を含むため、長期投与時は肝機能・電解質・血圧のモニタリングが必須です。
瘀血×婦人科 — 月経痛・子宮内膜症・不妊体質
瘀血証が最も鮮明に現れるのが婦人科領域です。月経困難症・子宮内膜症・子宮筋腫・不妊・更年期障害は、いずれも漢方の駆瘀血剤がエビデンスを持って用いられてきた領域です。
月経困難症の処方戦略
体力中等度で経血に血塊・冷えのぼせがあれば桂枝茯苓丸(25番)。実証で便秘・精神不安が強ければ桃核承気湯(61番)。下腹部痛が強く便秘もあれば大黄牡丹皮湯(33番)。冷えと瘀血が混在し不妊傾向なら温経湯(106番)。虚証で冷え・むくみを伴うなら当帰芍薬散(23番)。日本東洋医学会GL2023でも、月経困難症への桂枝茯苓丸・当帰芍薬散の有効性がエビデンスとして整理されています。
子宮内膜症・子宮筋腫
これらの疾患は西洋医学的にはGnRHアゴニスト・低用量ピル・手術が主軸ですが、症状緩和や再発予防の観点から桂枝茯苓丸・桃核承気湯・大黄牡丹皮湯が併用されることがあります。器質的病変は画像評価と婦人科専門医のフォローを優先してください。
兄妹医師シナジー — 当院の婦人科健康戦略
監修者の妹である小林早紀子歯科医は、ベストボディ・ジャパン2025 ミス・ドクター&医療従事者部門 西日本大会グランプリの実績を持ち、減量・体組成改善・血流改善のセルフ実践者です。彼女自身、コンテスト準備期の徹底した有酸素運動と栄養管理が「冷え」「肩こり」「肌のくすみ」を劇的に改善した経験を持ちます。当院では、糖尿病・代謝専門の正敬と、口腔健康・栄養指導の早紀子の兄妹連携により、婦人科領域の瘀血改善にも生活全体からアプローチできる体制を整えています。
瘀血×ベストボディ受賞医師の経験 — 減量と血流改善
瘀血改善における運動と減量の威力は、当院の医師自身の体験で裏づけられています。
小林高之 整形外科専門医(兄)
日本整形外科学会 整形外科専門医にしてベストボディ・ジャパン受賞者である小林高之は、コンテスト準備期に体脂肪率を10%台前半まで絞り込んだ経験を持ちます。彼が実感したのは、減量過程で慢性肩こりが消失し、肌色が明るくなり、運動後の疲労回復が劇的に速くなったことでした。これは漢方的には瘀血が解消した状態に他なりません。整形外科臨床でも、慢性疼痛患者の減量と有酸素運動が痛み軽減に寄与することは多くの研究で示されています。
小林早紀子 歯科医師(妹)
小林早紀子はベストボディ・ジャパン2025 ミス・ドクター&医療従事者部門 西日本大会グランプリ、モデルジャパン日本大会2025 日本TOP10の実績を持ちます。彼女のコンテスト準備プロセスは、栄養管理(アスリートフードマイスター資格に裏打ちされた)・有酸素運動・筋力トレーニング・睡眠管理を統合した「血流改善の生活モデル」と言えます。減量による内臓脂肪減少は、漢方的瘀血の物的基盤を直接削減する最も確実な手段です。
糖尿病専門医からみた減量と血流
糖尿病専門医として外来診療を行う監修者・小林正敬は、HbA1c 改善・脂質異常症改善・血圧降下とともに「冷え」「肩こり」「肌色」「疲労感」が患者さんの主訴として並行的に改善してくる症例を多数経験してきました。減量・有酸素運動・睡眠改善は単に検査値を動かすだけでなく、漢方的瘀血の臨床像にも明確に作用します。当院は 糖尿病・代謝専門の知見と、ベストボディ受賞医師(小林高之・小林早紀子)の減量実体験 を組み合わせ、検査値と体感の両面から瘀血改善をご支援します。
瘀血タイプ判定後の次の一歩
本ガイドで瘀血の傾向が強いと感じたら、次のステップを検討してください。
- セルフチェックの精緻化:当サイトの漢方体質診断アプリで50項目超の質問から9体質スコアを可視化
- 動脈硬化リスクの定量評価:頸動脈エコー・腹部CT・血液検査(脂質4項目・HbA1c・hsCRP)を一度受ける
- 食事・運動の3か月チャレンジ:玉ねぎ・青魚・納豆・黒豆を週単位で組み込み、週150分の有酸素運動を確立
- 漢方医療機関の受診:症状が強い場合・婦人科疾患合併がある場合は漢方を扱う医療機関で四診を受ける
- 定期再評価:3〜6か月後に舌診・症状・血液検査・体組成を再評価し、処方と生活戦略を調整
よくある質問
Q1. 桂枝茯苓丸を半年飲んでいますが、ずっと続けて大丈夫ですか?
桂枝茯苓丸は比較的副作用の少ない処方で長期服用例も多く報告されています。ただし3〜6か月ごとに肝機能・症状・舌診を再評価し、漫然投与を避けてください。妊娠の可能性が出た時点で必ず処方医に申告し、原則中止します(牡丹皮含有のため慎重投与)。
Q2. 桃核承気湯を飲むと下痢します。減らすべきですか?
はい、桃核承気湯は大黄・芒硝の下剤作用が強いため、1日1包から開始し便通の様子を見ながら2〜3包に調整するのが安全です。軟便・下痢が続く場合は減量または中止し、桂枝茯苓丸など穏やかな駆瘀血剤に変更を検討します。
Q3. 妊娠を希望しています。瘀血改善に飲める漢方は?
妊娠を希望する段階では当帰芍薬散(23番)・温経湯(106番)が穏やかで使いやすい選択肢です。桃核承気湯・通導散・大黄牡丹皮湯・桂枝茯苓丸は妊娠中は原則中止または慎重投与となるため、妊娠判明時点で必ず処方医に連絡してください。
Q4. 抗凝固薬(ワルファリン・エリキュースなど)を飲んでいます。駆瘀血剤は併用できますか?
当帰・川芎・桃仁などには抗血小板・抗凝固様作用が報告されており、抗凝固薬との併用で出血傾向が増強する可能性があります。納豆もワルファリン服用者には禁忌です。必ず処方医・薬剤師に併用薬を申告し、定期的なPT-INR・出血症状のモニタリングを受けてください。
Q5. 西洋医学的には「動脈硬化」と言われ、漢方では「瘀血」と言われました。同じものですか?
完全に同一ではありませんが、病態的に大きく重なる概念です。動脈硬化は血管壁の構造的・機能的変化を主軸とし、瘀血はそれを含むより広い「血流停滞・微小循環障害・組織灌流低下」を含意します。両者を相補的に捉え、西洋医学の薬物治療(スタチン・抗血小板薬・降圧薬)と漢方の駆瘀血剤・食養生・運動戦略を統合することが、最も実効性の高い動脈硬化対策となります。
Q6. 舌下静脈の怒張をセルフチェックする方法は?
明るい自然光の下で鏡を持ち、舌を上口蓋に向けて持ち上げてください。舌の裏側中央に左右1本ずつ走る静脈が、太く青黒く膨らみ、舌の長さの3分の2以上にわたって明瞭に見える場合は怒張ありと判定します。健常では細く水色で、舌先近くまで届かないのが通常です。冷たい飲食直後・寒冷時は一過性に強く見えるため、起床直後の評価が標準的です。
まとめ
瘀血は「血の流れが滞る体質」であり、固定性の刺痛・舌下静脈怒張・暗紫舌・シミくま・月経血塊・痔・頑固な肩こり・冷えのぼせという多彩な症状で姿を現します。現代医学の動脈硬化・微小循環障害・血栓傾向と病態的に深く重なる概念であり、糖尿病・脂質異常症・高血圧・肥満を持つ患者の多くが瘀血証を併せ持ちます。
桂枝茯苓丸を中軸に、桃核承気湯・通導散・大黄牡丹皮湯・治打撲一方・温経湯・当帰芍薬散・疎経活血湯といった駆瘀血剤群が、症状と体力に応じて使い分けられます。妊婦への桃仁・大黄・牡丹皮・牛膝の禁忌、桃核承気湯・通導散の下剤作用、抗凝固薬との相互作用には特に注意してください。
食養生では玉ねぎ・青魚・納豆・黒豆・酢・生姜・ターメリックを軸に、生活では週150分の有酸素運動・40度入浴・座位中断・禁煙を組み立てます。当院の医師兄妹(高之・早紀子)のベストボディ受賞経験が示すとおり、減量と運動は最も強力な駆瘀血戦略です。
本ガイドは概説であり、実際の処方選択・既往疾患との調整には医師の四診と病歴聴取が不可欠です。婦人科疾患・心血管疾患・抗凝固薬服用中・妊娠中・授乳中の方は、自己判断での漢方服用を避け、必ず漢方を扱う医療機関にご相談ください。当サイトの漢方体質診断アプリで体質傾向を可視化したうえで、減量シミュレーターと組み合わせ、瘀血改善の生活戦略を立ててみてください。
本記事の信頼性について
監修・執筆体制
本記事は、まさぼ内科クリニック飯田橋院 院長・小林 正敬 医師(医籍登録番号 第486214号)の監修のもと、公開時点で確認可能な学会ガイドラインおよび査読論文に基づいて作成されています。監修医師は 日本糖尿病学会 糖尿病専門医、日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会 老年科専門医・指導医 の資格を有し、糖尿病・代謝疾患・老年医学を専門とする臨床医として実務に従事しています。
利益相反(COI)の開示
本記事は、特定の医薬品・医療機関・企業からの広告料、紹介料、監修料の影響を受けず、独立した医学的判断のもと作成されています。治療法の選択は、必ず主治医の対面診察に基づき判断してください。本記事は一般的な医療情報の提供を目的とし、個別の診断・治療を代替するものではありません。
情報の鮮度と更新ポリシー
本記事は学会ガイドライン(日本糖尿病学会・日本東洋医学会等)、査読論文、厚生労働省公表データに基づき作成され、医学的内容の変化に応じて定期的な見直しを行います。公開日・最終更新日は本セクション直下の監修者バナーをご参照ください。
信頼性開示の最終確認日:2026-05-14
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監修医師:小林 正敬 医師(日本糖尿病学会 糖尿病専門医 / 日本内科学会 総合内科専門医 / 日本老年医学会 老年科専門医・指導医、医籍登録番号 第486214号、古方派漢方研修)
公開日:2026-05-10 / 最終更新日:2026-05-10
参考文献
- 日本東洋医学会 漢方診療ガイドライン2023
- 日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022
- 日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン2024
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「動脈硬化」
- WHO Guidelines on physical activity and sedentary behaviour 2020
- Kimura Y, et al. Effects of keishi-bukuryo-gan on platelet aggregation and blood viscosity. J Ethnopharmacol.
- Sakamoto S, et al. Pharmacological actions of Keishibukuryogan on the uterine circulation. Phytomedicine.
- ツムラ漢方薬 添付文書集(25・61・125・105・89・33・106・23・53番)
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