肥満はBMI 25 kg/m²以上という状態、肥満症は減量が必要な病気です。肥満症治療薬の保険適用には、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかの診断が前提となります。BMI 27 kg/m²以上35 kg/m²未満では、さらに肥満症に関連する健康障害がもう1つ以上(計2つ以上)必要で、BMI 35 kg/m²以上では前提の疾患のいずれかが必要です。肥満症と診断されても薬には治療歴や受診する施設などの条件があるため、体重だけで判断せず、健康障害も確認します。
肥満と肥満症は何が違いますか?
肥満は脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMI 25 kg/m²以上を指します。一方、肥満症は、肥満に関連する健康障害がある、または予測され、減量を必要とする疾患です。違いと薬の対象を早見表にまとめます。
| 区分 | BMIの目安 | 判断の要点 |
|---|---|---|
| 肥満 | 25 kg/m²以上 | 脂肪が過剰に蓄積した状態 |
| 肥満症 | 25 kg/m²以上 | 健康障害がある、または腹部CTで内臓脂肪面積100 cm²以上などの診断条件を満たし、減量が必要 |
| 高度肥満症 | 35 kg/m²以上 | BMIの高さに加え、肥満症としての診断も必要 |
| 保険で肥満症治療薬の対象 | 27 kg/m²以上35 kg/m²未満 | 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかに加え、肥満症に関連する健康障害がもう1つ以上(計2つ以上)必要。食事・運動療法、施設などの条件も満たす必要がある |
| 保険で肥満症治療薬の対象 | 35 kg/m²以上 | 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかが必要。食事・運動療法、施設などの条件も満たす必要がある |
肥満だけでは治療の対象とはなりません。
厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と肥満症」
肥満症はどのように診断しますか?
肥満症は、BMI 25 kg/m²以上を前提に、健康障害または内臓脂肪型肥満を確認して診断します。腹部CTで内臓脂肪面積が100 cm²以上なら、健康障害がなくても診断基準に当てはまります。
診断に関わる健康障害は次の項目です。
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患
- 脳梗塞・一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・女性不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 運動器疾患(変形性関節症、変形性脊椎症)
- 肥満関連腎臓病
私は初診で、健診結果票の血圧、血糖、脂質、尿酸、肝機能、腎機能を確認し、薬の前提となる高血圧・脂質異常症・2型糖尿病と、それ以外の健康障害を分けて数えます。そのうえで、肥満症の診断に必要な評価を決めます。
肥満症は何kgからですか?
肥満症は一律の体重では決まらず、身長に対するBMIと健康状態で判断します。次の表は「体重(kg)=BMI(kg/m²)×身長(m)の2乗」で計算した目安であり、表の体重に達するだけで肥満症や薬の対象が決まるわけではありません。
| 身長 | BMI 25 kg/m²の体重 | BMI 27 kg/m²の体重 | BMI 35 kg/m²の体重 |
|---|---|---|---|
| 150 cm | 56.3 kg | 60.8 kg | 78.8 kg |
| 155 cm | 60.1 kg | 64.9 kg | 84.1 kg |
| 160 cm | 64.0 kg | 69.1 kg | 89.6 kg |
| 165 cm | 68.1 kg | 73.5 kg | 95.3 kg |
| 170 cm | 72.3 kg | 78.0 kg | 101.2 kg |
| 175 cm | 76.6 kg | 82.7 kg | 107.2 kg |
| 180 cm | 81.0 kg | 87.5 kg | 113.4 kg |
身長170 cmで体重70 kgは肥満ですか?
身長170 cmで体重70 kgのBMIは24.2 kg/m²で、BMI 25 kg/m²以上という基準に届かないため、肥満には当たりません。ただし、腹囲や血液検査の結果は別に見ます。BMIと腹囲が食い違う場合は、隠れ肥満の記事も参考にしてください。
メタボと肥満症は何が違いますか?
メタボは内臓肥満に高血圧、高血糖、脂質代謝異常が組み合わさった病態で、腹囲が大きいだけでは当てはまりません。一方、肥満症はBMI 25 kg/m²以上を前提に、健康障害や内臓脂肪型肥満から診断します。腹囲の数値基準と意味は、腹囲の読み方の記事で確認できます。
肥満症治療薬を保険で使うには何が必要ですか?
肥満症治療薬の保険適用には、前提となる高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかの診断と、BMIに応じた健康障害の条件が必要です。
- BMI 35 kg/m²以上:前提の疾患のいずれかが必要です。
- BMI 27 kg/m²以上35 kg/m²未満:前提の疾患に加え、肥満症に関連する健康障害がもう1つ以上必要です。
対象となる製剤には、セマグルチドのウゴービとチルゼパチドのゼップバウンドがあります。ウゴービは2023年11月22日、ゼップバウンドは2025年3月19日に薬価収載されました。BMIと疾患の条件に加え、治療歴や施設の条件も確認します。
「保険で使えるか」と聞かれたとき、私はまず前提の疾患の診断を確認し、続いて投与施設での食事・運動療法の記録を見ます。その後にBMIと健康障害を照らし合わせます。
BMI 25 kg/m²以上なら薬は保険適用になりますか?
BMI 25 kg/m²以上は肥満の基準ですが、それだけでは肥満症治療薬の保険適用にはなりません。肥満症の診断と、薬に定められた条件は別です。健康障害を伴わない肥満や、美容・痩身目的で薬を使うための基準ではありません。
薬を使う前の6か月には何をしますか?
肥満症治療薬を使う前には、投与施設で治療計画に基づく食事・運動療法を6か月以上続け、その効果を確認します。期間中は2か月に1回以上、管理栄養士の栄養指導を受けます。効果が不十分な場合に、薬の対象かを検討します。
投与施設では、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病に対する薬物療法も条件として確認します。私は食事の内容と運動の続け方を先に整理し、薬を使う場合にも続けられる計画を決めます。
肥満症治療薬はいつまで使いますか?
肥満症治療薬の投与期間は最大72週で、終了を見据えて治療を進めます。投与中は毎月、体重、血糖、血圧、脂質を確認し、3〜4か月で改善傾向がなければ中止します。十分な減量が得られた場合も、72週を待たずに中止を考慮します。
私は開始時から、72週までに薬をやめる前提で食事を設計し、毎月の結果を見て薬と生活療法をどう進めるか決めます。中止後に悪化した場合は、原則として栄養指導を含む食事・運動療法を6か月以上行ってから、再投与を検討します。薬と筋肉量の関係はGLP-1治療と筋肉量の記事で扱っています。
肥満症にマンジャロは保険適用されますか?
マンジャロは2型糖尿病の治療薬であり、肥満症に用いるチルゼパチド製剤はゼップバウンドです。同じ成分でも、独立した臨床試験を経た別の製剤です。セマグルチドでも、2型糖尿病のオゼンピックと肥満症のウゴービは別の製剤です。薬剤ごとの詳しい説明はクリニック公式の肥満症治療薬の記事をご覧ください。
保険での肥満症治療薬はどこで受けられますか?
保険での肥満症治療薬は、定められた施設要件と医師要件を満たす施設で扱います。施設には、対象分野の専門医の常勤、教育研修施設であること、常勤の管理栄養士などの要件があり、医師にも肥満症と関連疾患の診療経験などの要件があります。受診先を探す際は、肥満症治療薬の保険診療に対応するか、その施設に直接確認してください。
見落としやすい落とし穴は何ですか?
見落としやすいのは、診断基準と薬の条件を同じものとして扱うことです。
BMIだけで判断する。 BMI 25 kg/m²以上なら肥満ですが、肥満症の診断には健康障害や内臓脂肪型肥満の確認が必要です。薬の保険適用には、さらに別の条件があります。
健康障害を数え違える。 肥満症の診断に関わる健康障害と、薬の前提となる疾患は同じ範囲ではありません。たとえば高尿酸血症は診断に関わりますが、薬の前提となる疾患には含まれません。
薬の開始だけを考える。 保険適用では、開始前の食事・運動療法に加え、投与中の確認と終了までの計画が必要です。薬をやめた後に続ける食事の形も、開始時に決めておきます。
ご自身で確認できることは何ですか?
ご自身で確認できるのは、BMI、健診結果、体重の変化です。BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割って計算します。健診結果票では血圧、血糖、脂質、尿酸、肝機能、腎機能などを確認してください。ただし、月経異常や睡眠時無呼吸症候群など、結果票だけでは分からない健康障害もあります。
ご自宅では体重を記録し、受診時に健診結果票と一緒に示してください。体組成計の「内臓脂肪レベル」は、腹部CTで測る内臓脂肪面積そのものではありません。表示の読み方は内臓脂肪レベルの記事をご覧ください。
よくあるご質問
Q1. 健診で高尿酸血症を指摘されました。肥満症治療薬の保険対象ですか?
A. 高尿酸血症は肥満症の診断に関わる健康障害です。ただし、それだけで薬の保険対象にはなりません。高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかの診断と、BMIなどの条件も確認します。
Q2. 内臓脂肪面積が100 cm²以上なら、健康障害がなくても肥満症ですか?
A. BMI 25 kg/m²以上で、腹部CTによる内臓脂肪面積が100 cm²以上なら、健康障害がなくても肥満症の診断基準に当てはまります。薬の保険適用は別の条件で判断します。
Q3. 2型糖尿病でマンジャロを使っています。肥満症の薬に自動で切り替わりますか?
A. 自動では切り替わりません。マンジャロは2型糖尿病の治療薬です。同じ成分でも肥満症に用いるゼップバウンドは別の製剤で、対象となる条件も確認が必要です。
Q4. 別の医療機関で食事・運動療法を続けていました。薬を始める条件になりますか?
A. 肥満症治療薬の条件は、投与施設で治療計画に基づく食事・運動療法を6か月以上行い、効果が不十分であることです。別の医療機関での経過も伝えたうえで、投与施設に確認してください。
Q5. 薬をやめた後に状態が悪化したら、すぐ再投与できますか?
A. すぐに再投与する扱いではありません。中止後に悪化した場合は、原則として栄養指導を含む食事・運動療法を6か月以上行ってから、再投与を検討します。
保険・自費どちらの可能性も含めてご相談ください
相談では、健診結果とこれまでの食事・運動療法を確認し、肥満症の診断と治療の選択肢を整理します。保険・自費どちらの可能性も含めてご相談ください。まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院のご案内はこちらです。
体格の区分をさらに確認したい方は、肥満の種類の記事もご覧ください。
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