体重計に乗ったら「内臓脂肪レベル 10.5」と出た——この数字は、CTで測る内臓脂肪の面積を、メーカーが独自の推定式で置き換えた目安です。境目が10なのは、内臓脂肪面積100平方センチメートルという医学的なラインに合わせて作られているから。そして知っておいてほしい弱点がひとつあります。家庭用の体重計型は、内臓脂肪が多い人ほど実測より低い数字を出します。結論の早見表から始めます。
早見表——内臓脂肪レベルの数値帯が意味すること
内臓脂肪レベルは、体に微弱な電流を流して得た電気抵抗値から内臓脂肪の面積を推定し、0.5刻みの数字に置き換えたものです。判定は3段階に分かれます。
| 内臓脂肪レベル | メーカーの判定 | 医師としてどう読むか | 次の一歩 |
|---|---|---|---|
| 9.5以下 | 標準 | 面積100平方センチメートル未満という推定値。低めに出ている可能性は残る | 腹囲と並べて確認。腹囲が基準以上ならレベルを疑う |
| 10.0〜14.5 | やや過剰 | 推定値の時点で内臓脂肪型肥満の域。実測はこれより高いことが多い | 体重3パーセント減を目標に。健診の血圧・血糖・脂質を確認 |
| 15.0以上 | 過剰 | 肥満が進むほど実測との差は開く。表示より高いものとして扱う | 健診値に1つでも異常があれば受診を |
この3段階の区分はタニタが公表しているものです。機種によって表示できるレベルの上限は異なりますが、判定の考え方はメーカー間で共通しています。いずれもCTで測る内臓脂肪の面積を推定するために作られた目盛りだからです。理由は次の節にあります。
「レベル10」はどこから来た数字か
日本肥満学会は、腹部CT検査でへその高さの内臓脂肪面積が100平方センチメートル以上であれば内臓脂肪型肥満と診断するとしています。体組成計メーカーも、この100平方センチメートルをCT実測での内臓脂肪型肥満の基準として明示したうえで、自社の推定式によるレベルを表示しています。標準とやや過剰の境目が10に置かれているのも、この診断ラインと同じ位置を指す設計です。
健診の腹囲(男性85センチメートル・女性90センチメートル)も、実は同じ100平方センチメートルを推定するための代替指標です。つまり内臓脂肪レベル10・腹囲85センチメートル・面積100平方センチメートルは、同じ1本の線を3通りの方法で測っていることになります。腹囲の基準がなぜこの数字なのかは腹囲85センチメートルの意味を解説した記事にまとめました。
推定であることは、メーカー自身がはっきり書いています。
「内臓脂肪レベル」は、内臓脂肪の面積の大小を、自社データに基づいてレベル化したもので、当社独自の推定式により算出しています。※内臓脂肪レベルはあくまでも目安です。医学的診断については、医師にご相談ください。——オムロン ヘルスケア「内臓脂肪レベルとは何ですか?」
家庭用の体組成計はどこまで当てになるのか
内臓脂肪レベルの精度は、電極をどこに当てるかで大きく変わります。
102人を対象に、腹部に直接電極を当てるデュアル方式と、手足から全身に電流を流す全身型を、CT実測と突き合わせた研究があります。家庭用の体重計は、この全身型をさらに簡略にして足だけで測るものです。結果は、CTの平均116平方センチメートルに対し、デュアル方式89平方センチメートル、全身型84平方センチメートル。CTとの相関はデュアル方式が0.89、全身型は0.64でした(Park KSら, J Diabetes Complications 2016)。そして両方式とも、内臓脂肪が少なくない人では実測より低く出る傾向がありました。日本人の肥満者を対象とした検討でも、肥満の程度が進むほどCTとの差が開くことが報告されています(Hamasaki Hら, Curr Diabetes Rev 2020)。
外来で「体重計では9.5だから大丈夫と言われました」と話される方がいます。そのとき私が見るのは、レベルではなく腹囲と血液データです。腹囲が基準を超えているのにレベルが標準なら、私は腹囲の方を採ります。ずれる方向が「低く出る」と分かっている以上、安心する材料には使えないからです。
見落としやすい落とし穴
内臓脂肪レベルの読み方で、判断を誤りやすい場面が3つあります。
1つ目、「標準」という表示を健康の証明として受け取ってしまうこと。推定値が実測より低く出る報告が続いている以上、レベル9.5は「面積100平方センチメートル未満が確定した」という意味ではありません。腹囲が基準以上、あるいは健診の血糖・中性脂肪・ALTのどれかが動いているなら、レベルの表示より血液データを優先してください。
2つ目、測定条件による上下を変化と取り違えること。電気抵抗値は体内の水分量に左右されるため、入浴後・運動後・飲酒後・食後は数字がずれます。入浴後と起床直後では表示が変わります。条件をそろえていない測定どうしの差は、生活を変えた成果でも失敗でもありません。判断に使えるのは、条件をそろえた測定を月単位で並べたときの傾向だけです。
3つ目、レベルが動かないことを「効いていない」と読むこと。0.5刻みという粗い目盛りのため、腹囲が2〜3センチメートル減っても表示が変わらないことがあります。体重が2キログラム落ちてもレベルは10.0のまま動かず、意味がないと感じてやめてしまう方がいます。私が外来でお願いしているのは、レベルではなく体重と腹囲を主指標にして、レベルは月1回の確認に回すという使い分けです。
レベルを下げるには——内臓脂肪は減量に反応しやすい
内臓脂肪には、皮下脂肪より先に減りやすいという性質があります。特定保健指導で最初に置かれる目標も体重の3パーセント減で、80キログラムの方なら約2.4キログラム。この幅でも血圧・血糖・脂質の改善が確認されています。
レベルが10を超えていても、健診の血圧・血糖・脂質・肝機能がすべて基準内であれば、私はその場で薬の話はしません。まず3か月、体重と腹囲を記録していただき、それでも動かないときに次の手を考えます。逆に、レベルが標準でも空腹時血糖とALTの両方が動いていれば、表示の数字がどうであれ、減量を軸にした治療の設計に入ります。表示レベルは脂肪の付き方を確定する検査ではないので、そこで足を止めません。
ご自宅での測り方は、週1回、朝起きてトイレを済ませた後・朝食前・入浴前という条件をそろえるだけで十分です。同じ日に腹囲もへその高さで測り、体重・腹囲・内臓脂肪レベルの3つを1行に並べて記録してください。判断の主役は体重と腹囲です。レベルは遅れて動くので、3か月ぶんを並べたときに同じ向きへ動いているかだけを見てください。ご自分の適正カロリーと減量ペースは減量カロリー計算ツールで確認できます。内臓脂肪を落とす食事と運動の具体策は内臓脂肪を減らす食事と運動の記事に、体重は標準なのに内臓脂肪が多いタイプの見分け方は肥満の3つのタイプの記事にまとめています。
なお、内臓脂肪が蓄積するとインスリンが効きにくくなり、血糖が上がりやすい体質に傾きます。その効きにくさを数字にしたのがHOMA-IRで、読み方はHOMA-IRの数値の意味の記事で扱っています。
内臓脂肪レベルが増える原因は何か
内臓脂肪レベルが増える主な原因は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、脂肪が蓄積することです。間食や飲酒の量、食事のリズム、身体活動量を振り返ってください。食事と運動の見直し方は、上の「レベルを下げるには」の節で扱っています。ただし、表示が上がった日だけで脂肪が増えたとは判断できず、測定条件によるずれも上の「見落としやすい落とし穴」で説明したとおりです。
女性と男性、年齢で内臓脂肪レベルの読み方は変わるのか
性別と年齢は、内臓脂肪のつき方と体組成計の推定値に関わる条件です。内臓脂肪は女性より男性に、若年者より中高年につきやすい傾向があります。タニタのレベル表示も、電気抵抗値に性別や年齢などを加えて推定しています。
女性は皮下脂肪がつきやすく、女性の腹囲基準が男性より大きいのもそのためです。女性のレベル4では腹囲を内臓脂肪だけの目安とせず、男性のレベル5では低い表示だけで安心せず、腹囲と健診の血液データを合わせて確認します。脂肪のつき方による違いは肥満の3つのタイプの記事でも説明しています。
内臓脂肪レベルが低すぎることはあるのか——レベル1〜3の読み方
「低すぎる内臓脂肪レベル」は、タニタの判定区分にはありません。表示はレベル1〜59で、「標準」「やや過剰」「過剰」に分かれます。レベル1〜3でも、低い表示は健康の証明にも、やせすぎの判定にもなりません。
私は外来で、BMIが18.5 kg/m²未満の方や、体重が意図せず減った方には、食事量と体重減少の理由を確認します。低い表示を喜ぶ前に、体の変化を確かめる必要があるからです。
どれくらいの期間で落ちるのか——「最速」を狙わない理由
内臓脂肪は、皮下脂肪より短期間で変化しやすい脂肪です。ただし、レベルが下がるまでの期間を一律には決められません。体組成計の表示には粗さがあり、変化がすぐ数字に表れるとは限らないためです。
速さを競うより、上の「レベルを下げるには」の節で触れた体重の3パーセント減を目標に、体重と腹囲の傾向を追ってください。体重の3〜4パーセントの緩やかな減量でも検査値の改善が見込まれます。極端に食事を減らさず、主食・主菜・副菜をそろえ、菓子や飲酒の量を見直します。
内臓脂肪が落ちてきたサインは何か
内臓脂肪が落ちてきたサインの目安は、同じ条件で測った腹囲や体重が下がる傾向です。ただし、腹囲には皮下脂肪、体重には水分や筋肉の変化も含まれるため、その低下だけで内臓脂肪が減ったとは特定できません。レベルの表示が変わらなくても、腹囲の変化を先に見ます。健診の中性脂肪・ALT・空腹時血糖も前回値と比べ、同じ向きに改善しているかで目安を裏づけます。
私は外来で「レベルが下がらない」と相談されたら、腹囲とこれらの健診値を並べます。健診値も改善していれば、表示だけを理由に方針を変えず、同じ方針を続けます。
内臓脂肪を減らすサプリで落ちるのか
「内臓脂肪を減らす」とうたう市販品には、食品(保健機能食品など)と市販の医薬品(漢方薬など)があります。保健機能食品は、病気の治療や予防のために摂取するものではありません。1日当たりの摂取目安量を超えても、より高い効果が得られるものではありません。医薬品については、持病や服用中の薬がある方は薬剤師・医師に相談してください。
サプリを選ぶ前に、夕食の主食量や飲酒量を具体的に見直してください。内臓脂肪レベルだけで効果を判定せず、上の節で示した腹囲と健診値の変化を確かめます。
よくあるご質問
Q1. 内臓脂肪レベルが日によって1くらい上下します。体組成計の故障ですか?
A. 故障ではありません。内臓脂肪レベルは体に流した電流の抵抗値から推定するため、体内の水分量に影響されます。起床直後・入浴後・食後・飲酒後・運動後は表示がずれやすく、条件をそろえていない測定どうしを比べても意味がありません。週1回、朝起きてトイレを済ませた後の同じ条件で測り、月単位の傾向で判断してください。
Q2. BMIも体脂肪率も標準なのに、内臓脂肪レベルだけ10を超えました。どう考えればよいですか?
A. 体重は普通でも内臓脂肪が主体になっているタイプがあり、日本人には珍しくありません。この場合いちばん大事なのは体組成計の数字ではなく健診の血液データです。空腹時血糖・中性脂肪・HDLコレステロール・ALTの4つを確認し、どれかが基準を外れていれば、体格や表示レベルに関係なく代謝の異常として対応を始めます。脂肪の付き方を確定するのはCTでの面積測定で、体組成計の表示ではありません。
Q3. 内臓脂肪レベルは健康診断でも測ってもらえますか?
A. 一般的な特定健診の必須項目ではありません。人間ドックや職域健診のオプションで体組成測定が付いている場合に測られます。健診の必須項目は腹囲で、こちらは男性85センチメートル・女性90センチメートルという基準が定められています。オプションが無い場合、腹囲とご自宅の体組成計の数値を並べて見るのが実用的です。
Q4. 筋トレをすれば内臓脂肪レベルは下がりますか?
A. 筋トレだけでは下がりにくく、内臓脂肪を直接減らす効果がはっきりしているのは有酸素運動と食事の見直しです。ただし筋トレには、減量中に筋肉量が落ちるのを防ぐという別の役割があります。順番としては、食事の削減と歩行などの有酸素運動を土台に置き、筋トレを添える組み立てが現実的です。
Q5. レベルは10.0のまま変わらないのに、腹囲は3センチメートル減りました。どちらを信じればよいですか?
A. 腹囲です。内臓脂肪レベルは0.5刻みの粗い目盛りで、わずかな変化では数字が動きません。一方で腹囲は1センチメートル単位で変化を拾えます。腹囲には皮下脂肪も含まれますが、減量では内臓脂肪のほうが先に減るため、同じ条件で測った腹囲が3センチメートル減っているなら内臓脂肪も減っていると考えて差し支えありません。レベルは遅れて動く指標です。
数字を疑うところから、内臓脂肪の話は始まります
内臓脂肪レベルが10を超えている方、レベルは標準なのに腹囲や健診値が引っかかっている方、自己流の減量でどの数字も動かない方は、一度ご相談ください。当院では、体組成計の数値と健診データを突き合わせて実態を見極めたうえで、食事・運動の設計から、GLP-1受容体作動薬(食欲と血糖を調える消化管ホルモンの薬)を含む薬物療法まで、保険・自費どちらの可能性も含めてご案内します。対面のほか、オンライン診療にも対応しています。GLP-1治療の全体像はGLP-1ダイエット完全ガイドをご覧ください。
この記事は「健診の数値の読み方」シリーズの1本です。健診結果の各項目を数値帯ごとに読み解く記事をシリーズ一覧にまとめています。気になる項目をその場で確かめたい方は健診結果インタプリタもお使いください。
参考文献
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「内臓脂肪型肥満」
- 日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』
- オムロン ヘルスケア「内臓脂肪レベルとは何ですか?」
- タニタ「内臓脂肪レベル——からだの情報と改善アドバイス」
- Park KS, et al. Comparison between two methods of bioelectrical impedance analyses for accuracy in measuring abdominal visceral fat area. J Diabetes Complications 2016;30(2):343-9.(PMID 26620129)
- Hamasaki H, et al. Validity of Visceral Fat Area Measurement by Bioelectrical Impedance Analysis in Japanese Obese Individuals. Curr Diabetes Rev 2020;16(5):515-9.(PMID 30686247)
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満・メタボリックシンドローム予防の食事」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「皮下脂肪型肥満」
- 消費者庁「保健機能食品について」
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