肥満症3類型徹底ガイド|内臓脂肪型・皮下脂肪型・サルコペニア肥満を糖尿病専門医が解説

obesity 3 types guide
急な症状でお困りの方へ ─ 胸痛・麻痺・激しい頭痛・呼吸困難など緊急性のある症状は 救急受診ガイド(119を呼ぶ目安) をご確認ください。

「BMIは普通なのに健康診断で脂肪肝・高血糖を指摘された」「BMIは高いけれど採血値は全部正常」「ダイエットに成功したのに以前より疲れやすくなった」——肥満外来でこのような訴えに出会うたびに、私たち糖尿病専門医はBMI(体格指数)だけで肥満を語ることの臨床的危うさを痛感します。同じ体重・同じBMIの2人でも、内臓脂肪が突出して多い人・皮下脂肪に偏る人・筋肉が乏しく脂肪に置き換わった人では、合併症リスクも治療戦略もまったく異なります。本ガイドでは、糖尿病・メタボ・高齢者診療を日常的に行う立場から、肥満症の3類型(内臓脂肪型肥満・皮下脂肪型肥満・サルコペニア肥満)を判定方法・特徴・対策・薬物治療・漢方処方まで体系的に解説します。BMIの数字だけでは見えない「あなたの肥満の正体」を見極め、最短距離で健康改善へと進むための地図としてご活用ください。

監修:小林 正敬 医師
日本糖尿病学会 糖尿病専門医 / 日本内科学会 総合内科専門医 / 日本老年医学会 老年科専門医・指導医
医籍登録番号:第486214号
公開日:2026-05-10 / 最終更新日:2026-05-10
目次

肥満と肥満症の違い — 日本肥満学会の基準を正しく理解する

まず最も誤解されているのは、「肥満(obesity)」と「肥満症(obesity disease)」は医学的に別物であるという点です。日本肥満学会の『肥満症診療ガイドライン2022』では、両者を以下のように厳密に区別しています。

用語定義医学的位置づけ
肥満BMI 25 kg/m²以上単なる体格区分。疾患ではない
肥満症BMI 25以上+健康障害合併、または内臓脂肪型肥満(腹部CT 内臓脂肪面積100 cm²以上)治療対象となる疾患。保険診療の対象
高度肥満症BMI 35以上+健康障害合併または内臓脂肪型外科治療(減量手術)も検討対象

つまり、BMIが25を超えていても合併症がなく内臓脂肪も少なければ「肥満」止まりであり、医療介入の必須対象ではありません。逆に、BMIが25未満(一見「普通体重」)でも、内臓脂肪面積が100 cm²を超えれば「肥満症」と診断されうるのです。これがいわゆる「かくれ肥満(normal-weight obesity)」であり、近年とくに日本人で問題視されています。

「健康障害」として認められる11項目

肥満症診療ガイドライン2022では、以下の11の健康障害のうちひとつでも合併していれば、肥満症と診断されます。

  1. 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常)
  2. 脂質異常症
  3. 高血圧
  4. 高尿酸血症・痛風
  5. 冠動脈疾患
  6. 脳梗塞・一過性脳虚血発作
  7. 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/MASLD)
  8. 月経異常・女性不妊
  9. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)・肥満低換気症候群
  10. 運動器疾患(変形性関節症・腰痛症)
  11. 肥満関連腎臓病

これらは「肥満が原因で発症・悪化しうる、減量で改善が期待できる疾患」と位置づけられており、健康診断で1項目でも引っかかれば、BMIに関わらず肥満症の評価を受ける価値があります。

3類型の判定方法 — CT・腹囲・BIA・DXA・SARC-F

「自分はどの肥満タイプか」を知るには、複数の検査を組み合わせる必要があります。BMIと体重計の数字だけでは類型判定はできません。

(1) 腹囲(メジャーで自宅でもチェック可)

立位・呼気の終わりに、へその高さでメジャーを水平に巻きます。日本のメタボ診断基準では男性85 cm以上・女性90 cm以上が内臓脂肪型肥満を疑う閾値です。世界基準より男女差の方向が逆転しているのは、日本人男性に内臓脂肪型が多いという疫学データに基づくためです。ただし腹囲は皮下脂肪も含めて測定するため、腹囲だけで内臓脂肪型を確定はできません。あくまでスクリーニングです。

(2) 腹部CT(ゴールドスタンダード)

へそ位置のスライス画像で内臓脂肪面積(VFA)皮下脂肪面積(SFA)を分離計測します。日本肥満学会基準ではVFA 100 cm²以上で内臓脂肪型肥満と判定します。VFA/SFA比が大きければ内臓脂肪優位、小さければ皮下脂肪優位です。1回の被ばく量は限定的(約2 mSv程度)ですが、被ばくを伴うため毎月の追跡には不向きです。

(3) BIA(生体インピーダンス法)— 体組成計

家庭用・医療用ともに広く普及した手法で、体脂肪率・内臓脂肪レベル・骨格筋量・四肢筋量を測定できます。InBody・タニタ業務用・オムロンHBF-256Tなど機種により精度はまちまちですが、経時変化のモニタリングには十分実用的です。サルコペニア肥満の判定には四肢骨格筋量指数(SMI、kg/m²)が重要で、男性7.0未満・女性5.7未満(BIA)で筋肉量低下と判定します。

(4) DXA法(二重エネルギーX線吸収法)

本来は骨密度測定機器ですが、全身の脂肪量・除脂肪量・骨量を高精度で計測できます。サルコペニアの研究ではSMI 男性7.0・女性5.4 kg/m²未満がDXA基準のカットオフです。被ばくは胸部レントゲンの数分の1程度と低く、骨粗鬆症外来を持つ施設で同時測定可能です。

(5) SARC-F質問票(サルコペニアの簡易スクリーニング)

診察室で2分で実施できる5項目質問票で、4点以上でサルコペニア疑いとします。

項目質問内容0点1点2点
S – Strength4-5kgのものを持ち上げて運ぶことが困難ですか困難なしいくらか困難非常に困難・不可能
A – Assistance部屋の中の歩行が困難ですか困難なしいくらか困難非常に困難・補助具・不可能
R – Rise椅子からの立ち上がりが困難ですか困難なしいくらか困難不可能
C – Climb10段の階段を上ることが困難ですか困難なしいくらか困難非常に困難・不可能
F – Falls過去1年間の転倒回数0回1-3回4回以上

SARC-Fは特異度は高いものの感度がやや低いため、4点未満でも臨床的に疑わしければ握力測定(男性28 kg未満・女性18 kg未満で低下)や歩行速度測定(1.0 m/s未満で低下)を併用します。

内臓脂肪型肥満の特徴と対策 — 「リンゴ型」の代謝爆弾

内臓脂肪型肥満は「リンゴ型肥満」とも呼ばれ、お腹がぽっこりと前に突き出した体型が特徴です。腸管周囲・大網・腸間膜に脂肪が蓄積し、見た目は太鼓腹・四肢は比較的細い、というシルエットになります。

臨床像と疫学

  • 男性に圧倒的に多い(女性の約3-4倍)。男性ホルモン(テストステロン)が脂肪を内臓へ振り分ける作用が一因
  • 40-60代で急増。基礎代謝低下と運動量減少、飲酒習慣が複合
  • BMIが正常範囲(22-24)でも内臓脂肪型は珍しくない(いわゆる「サラリーマン型かくれ肥満」)
  • 飲酒・甘味飲料・夜遅い食事・運動不足が典型的な生活背景

代謝への影響 — なぜ「悪玉」と呼ばれるのか

内臓脂肪細胞は単なるエネルギー貯蔵庫ではなく、強力な内分泌器官として振る舞います。肥大化した内臓脂肪細胞からは以下の悪玉アディポカインが過剰分泌されます。

  • TNF-α・IL-6:慢性低度炎症を惹起し、インスリン抵抗性を増大
  • PAI-1:血栓溶解を阻害、心筋梗塞・脳梗塞リスク
  • レジスチン:糖代謝悪化
  • 逆にアディポネクチン(善玉)は減少 — 抗動脈硬化作用が低下

さらに、内臓脂肪は門脈系を通じて直接肝臓へ遊離脂肪酸を流入させるため、脂肪肝(MASLD/NAFLD)・インスリン抵抗性・脂質異常症を一気に悪化させます。これが内臓脂肪型肥満が「糖尿病・心血管疾患の母床」と呼ばれる所以です。

対策の基本戦略

幸いにして、内臓脂肪は皮下脂肪より落ちやすいという性質があります。一般に体重5%減で内臓脂肪面積は20-30%減ると報告されており、生活習慣介入の効果が出やすい類型です。

  • 有酸素運動を週150分以上(ウォーキング・自転車・水中ウォーキング)
  • 糖質と中性脂肪の同時制限(精製糖・甘味飲料・過剰飲酒のカット)
  • 食物繊維・タンパク質の優先(満腹感増強と血糖上昇抑制)
  • 禁煙・節酒(特に純アルコール換算20g/日以下)
  • 合併する2型糖尿病があればSGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬が内臓脂肪に強い選択肢

皮下脂肪型肥満の特徴と対策 — 「洋ナシ型」の長期戦

皮下脂肪型肥満は「洋ナシ型肥満」と呼ばれ、お尻・太もも・二の腕など下半身・末梢に脂肪が蓄積するタイプです。お腹はそれほど突出せず、ヒップが大きく見えるのが典型像です。

臨床像と疫学

  • 女性に圧倒的に多い。エストロゲンが脂肪を皮下・下半身へ振り分ける作用
  • 若年から中年女性に多く、出産・授乳期を経て蓄積
  • 更年期以降はホルモン変化で内臓脂肪型へシフトしやすい
  • 見た目のインパクトは強いが、代謝合併症は内臓脂肪型より少ない

代謝への影響 — 意外と「無害」な脂肪

皮下脂肪細胞は内臓脂肪細胞より分化が穏やかで、悪玉アディポカイン分泌が少ないことが知られています。むしろアディポネクチン(善玉)は皮下脂肪由来が主で、適度な皮下脂肪はインスリン感受性を保つ役割を持ちます。これは「皮下脂肪パラドックス」と呼ばれ、健常者では下半身の皮下脂肪が多い人ほど糖尿病・心血管疾患リスクが低いという疫学報告すらあります。

ただし、過剰になれば膝関節・腰椎への機械的負担、月経異常、深部静脈血栓症、外見上のQOL低下など別系統の問題を招くため、放置してよいわけではありません。

対策の基本戦略

皮下脂肪は内臓脂肪より落ちにくく、長期戦になりやすいのが特徴です。短期間で結果を求めず、半年〜1年単位で取り組むことが推奨されます。

  • 有酸素運動+下半身レジスタンストレーニング(スクワット・ヒップリフト・ランジ)
  • 軽度のカロリー赤字を長期維持(1日200-300 kcal赤字を6-12ヶ月)
  • むくみ対策:塩分制限・足のマッサージ・着圧ストッキング
  • 整形外科的負荷(膝痛・腰痛)が出ていれば水中運動・自転車へ切り替え
  • 更年期女性は骨密度測定を併用し、過度のダイエットによる骨粗鬆症を防ぐ

サルコペニア肥満の特徴と対策 — 高齢者・ダイエット失敗の元凶

サルコペニア肥満(sarcopenic obesity)は、骨格筋量が減少した状態に肥満が重なった「最も予後不良な肥満タイプ」です。「サルコペニア(sarx=肉、penia=喪失)」という言葉自体は1989年に提唱された比較的新しい概念で、日本では2017年に日本サルコペニア・フレイル学会から『サルコペニア診療ガイドライン』が発行され、2020年に改訂版が出ています。

臨床像と疫学

  • 高齢者で急増:65歳以上の有病率10-20%、80歳以上では30%超との報告
  • 体重・BMIは普通から肥満範囲だが、筋肉が脂肪に置き換わっている状態
  • 細マッチョの逆=太ガリ」と表現することも
  • 若年者でも過度なダイエット失敗の終着駅として発生 — 食事制限のみで運動を伴わない減量を繰り返した結果、筋肉だけが落ちて脂肪が残る
  • 肥満外科手術(バリアトリック手術)後の不適切なリハビリでも発生

なぜ「最も予後が悪い」のか

サルコペニア肥満は単独の肥満や単独のサルコペニアより、以下のリスクが相乗的に上昇します。

  • 糖尿病・耐糖能異常(筋肉が糖の最大の取り込み臓器のため)
  • 転倒・骨折(筋力低下+体重負荷)
  • 心不全・呼吸不全(呼吸筋・心筋関連の筋減少)
  • 要介護・寝たきり(歩行能力低下)
  • 全死亡率上昇(複数のメタ解析で確認)

つまり、見た目はそれほど太っていなくても、健康寿命の観点ではもっとも警戒すべき肥満タイプなのです。

対策の基本戦略 — 「減量」より「筋量維持」が最優先

サルコペニア肥満では従来のダイエット(食事制限中心)は禁忌に近いことを強調しておきます。安易な体重減少は筋量をさらに削り、状況を悪化させます。

  • レジスタンストレーニングを最優先(週2-3回・大筋群中心・8-12RM)
  • タンパク質摂取量を増やす:体重1 kgあたり1.2-1.5 g/日(腎機能正常の場合)
  • ロイシン豊富な食品(卵・乳製品・大豆・赤身肉)とビタミンDの併用
  • カロリー赤字は最小限(300 kcal/日以下、減量速度は月0.5-1 kgまで)
  • HMB・クレアチンサプリは高齢者で筋量・筋力維持に有効性のエビデンスあり
  • 運動器疾患があれば整形外科専門医との連携(小林高之医師の領域)

類型別ダイエット戦略 — 食事・運動・薬物の使い分け

3類型の特性を踏まえると、ダイエットの設計は「全員同じ方法」ではうまくいきません。次表は当院が肥満外来で用いる類型別介入のサマリーです。

項目内臓脂肪型皮下脂肪型サルコペニア肥満
食事糖質・脂質同時制限
夜遅い食事禁止
節酒
緩やかなカロリー赤字
長期継続重視
塩分制限
タンパク質増量
カロリー赤字最小限
ロイシン強化
運動有酸素優位
週150-300分
有酸素+下半身筋トレレジスタンス優位
大筋群・週2-3回
減量目標3-6ヶ月で5-10%減6-12ヶ月で5-10%減必要時のみ
月0.5-1 kg以内
薬物(糖尿病あり)SGLT2阻害薬
GLP-1受容体作動薬
メトホルミン
必要時GLP-1
メトホルミン中心
GLP-1は慎重に
注意点禁煙・節酒最優先関節負担に注意急速減量は厳禁
類型別漢方大柴胡湯
防風通聖散
防已黄耆湯
当帰芍薬散
補中益気湯
八味地黄丸

共通の原則 — 「リバウンドしない」最大公約数

類型を問わず、リバウンドを防ぐために守るべき原則は以下です。

  • 急速減量を避ける:月の減量幅は体重の3-5%以内が安全帯
  • 記録を続ける:体重・腹囲・体脂肪率を週1回以上、可能なら毎日
  • 停滞期を恐れない:減量3-6ヶ月で代謝適応が起きるため、停滞は正常反応
  • 睡眠を優先:睡眠不足はグレリン上昇・レプチン低下で食欲を狂わせる
  • 体組成計で「中身」を追う:体重ではなく筋量・体脂肪率の推移を見る

類型別漢方処方 — 防風通聖散・防已黄耆湯・大柴胡湯の使い分け

漢方医学では、肥満は単一の病気ではなく「気・血・水」のバランス異常と捉えます。同じ「太っている」という現象でも、体質(証)が異なれば処方は全く違います。当院では古方派の体系を基本に、現代の保険適用エキス製剤で運用しています。

(1) 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん/ツムラ62番)— 内臓脂肪型・実証

18種の生薬を組み合わせた「清熱・発汗・利水・瀉下」を全網羅する強力処方。CMでも有名な「お腹の脂肪に」の代表格ですが、適応はあくまで体力充実・腹部肥満・便秘・のぼせ・赤ら顔の実証タイプに限定されます。中年男性のメタボ・内臓脂肪型に合致しやすい一方、虚証や高齢者・痩せ型に投与すれば下痢・脱水・偽アルドステロン症を招きます。詳細は防風通聖散完全ガイドをご参照ください。

(2) 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう/ツムラ20番)— 皮下脂肪型・水毒・虚証

色白・水太り・汗かき・むくみやすい・疲れやすい」という、いわゆる「気虚・水毒タイプ」の肥満に第一選択。古典の主治は「風湿、脈浮、身重、汗出、悪風」で、水分代謝異常を伴う皮下脂肪型に合致します。中年女性の下半身肥満・関節水腫・変形性膝関節症に頻用され、エキス7.5 g/日分2-3で投与します。防風通聖散とは正反対の「補気・利水」処方で、両者を体質で使い分けるのが鍵です。

(3) 大柴胡湯(だいさいことう/ツムラ8番)— 内臓脂肪型・ストレス太り

がっちりした体格・季肋部の張り・イライラ・便秘・ストレス太り」のタイプ。柴胡・黄芩・大黄・芍薬を中心とする「和解攻下」処方で、肝機能異常・脂肪肝を伴うメタボ男性に好適です。中医学的には「肝胆湿熱」「気滞」を疏散する位置づけで、防風通聖散より「ストレス・自律神経・肝臓」軸に強く、防風通聖散より「便秘・皮膚熱」軸に弱い、という棲み分けで覚えると臨床判断がスムーズです。

(4) その他の選択肢

  • 当帰芍薬散(ツムラ23番):女性の皮下脂肪型+冷え・月経異常・貧血傾向
  • 桂枝茯苓丸(ツムラ25番):瘀血を伴う中肉中背〜やや実証の女性
  • 補中益気湯(ツムラ41番):サルコペニア肥満の気虚優位タイプ — 倦怠感・食欲不振
  • 八味地黄丸(ツムラ7番):高齢者のサルコペニア+下半身衰え・夜間頻尿

当院オリジナルの漢方体質診断アプリでも、これら肥満関連処方の自動鑑別を実装しています。

GLP-1治療の類型別位置づけ — 「最強の武器」の使いどころ

GLP-1受容体作動薬(セマグルチド・チルゼパチドなど)は、過去10年で肥満治療の景色を一変させました。日本でもセマグルチド(オゼンピック皮下注/リベルサス内服/ウゴービ皮下注)チルゼパチド(マンジャロ/ゼップバウンド)が登場し、減量効果は体重の10-20%に達します。しかし「全員に万能」ではなく、類型別に位置づけを整理しておく必要があります。

内臓脂肪型 — 第一選択級の位置づけ

SUSTAIN・STEP・SURMOUNTシリーズの大規模試験で、内臓脂肪面積の減少率は皮下脂肪面積より大きいことが繰り返し報告されています。糖尿病合併者ではHbA1c低下・心血管イベント抑制(LEADER・SUSTAIN-6試験)のエビデンスもあり、内臓脂肪型肥満症+2型糖尿病の組み合わせには現代医療の最強カードです。

皮下脂肪型 — 有効だが効果は緩やか

皮下脂肪も減りますが減少率は内臓脂肪より小さく、また女性の下半身脂肪は変動しにくい傾向があります。投与価値はありますが、「皮下脂肪型に対するGLP-1」は内臓脂肪型ほど劇的ではないことを、患者さんに事前にお伝えする必要があります。

サルコペニア肥満 — 慎重投与・筋量モニタリング必須

ここが最も注意を要するポイントです。GLP-1の急速な減量効果は、脂肪だけでなく筋肉も同時に削ることが複数の研究で示されています。サルコペニア肥満の高齢者にGLP-1を漫然と投与すると、筋量がさらに減って転倒・骨折・要介護リスクを高めかねません。

当院ではサルコペニア肥満が疑われる症例には、以下のプロトコルで対応しています。

  • 導入前にBIAまたはDXAで四肢骨格筋量・体脂肪率を必ず計測
  • 投与開始後はレジスタンストレーニングを必須セット(運動指導同時導入)
  • タンパク質1.2-1.5 g/kg/日を確保する栄養指導
  • 1-3ヶ月ごとに体組成を再評価し、筋量低下があれば減量を中断
  • 高齢者では低用量からの慎重漸増を徹底

GLP-1の詳細な使い方・撤退戦略はGLP-1×漢方併用ガイドもあわせてご参照ください。

当院兄妹医師の経験 — 小林高之・小林早紀子のベストボディ実体験

当院の特色のひとつは、「実際に減量を成功させ、ボディコンテストで入賞した医師」が在籍していることです。理論だけでなく、自身の身体で試行錯誤した結果が運営に反映されています。

小林 高之 医師(整形外科専門医)
ベストボディ・ジャパン2024・2025 ミスター・ドクター&医療従事者部門 西日本大会 グランプリ(2連覇)
減量過程で経験したのは、「皮下脂肪は最後まで残る」「運動を伴わない減量は筋量を削る」という臨床医にとって当たり前の事実が、自分自身の身体でも例外なく起きるという現実でした。

整形外科専門医として運動器疾患を診ながら、自身もウェイトトレーニング・有酸素運動・食事管理を組み合わせて減量に取り組んだ経験は、運動指導の説得力と精度を大きく高めています。とくにサルコペニア肥満予備軍の中高年男性に対しては、「整形外科専門医として関節・腰を守りながら、ベストボディ受賞者として正しい筋トレフォームを指導できる」という二重資格の強みを活かせます。

小林 早紀子 医師(歯科医師・口腔外科認定医)
ベストボディ・ジャパン2025 ミス・ドクター&医療従事者部門 西日本大会 グランプリ
モデルジャパン日本大会2025 日本TOP10
アスリートフードマイスター資格保有

女性の皮下脂肪型ダイエットの難しさ——「頑張っても下半身が落ちない」「食事を減らすと顔と胸から痩せる」「生理周期で体重が乱高下する」——を当事者として経験し、グランプリ獲得まで到達した医師による実体験談は、女性患者さんの強い共感を集めています。アスリートフードマイスターの知識を併せ、「タンパク質・糖質・脂質をどの局面でどう配分するか」のミクロな食事指導まで踏み込めるのが特徴です。

このように、当院は「経験(Experience)」「専門性(Expertise)」の両輪を兄妹医師の実体験で担保しており、GoogleのE-E-A-T評価軸においても他院と異なる位置を取れていると自負しています。

FAQ — よくあるご質問

Q1. BMIが22で「標準」と言われましたが、お腹だけ出ています。これも肥満症ですか?

典型的な「かくれ肥満(normal-weight obesity)」の可能性が高いです。腹囲を測り、男性85 cm・女性90 cmを超えていれば内臓脂肪型肥満を疑います。健康診断で脂肪肝・耐糖能異常・脂質異常を1つでも指摘されている場合は、BMI 22でも「肥満症」と診断され、医療介入の対象となります。日本人は欧米人より低BMIで内臓脂肪型を発症しやすいため、BMIを過信しないことが重要です。

Q2. ダイエットしたら体重は減ったのに、以前より疲れやすくなりました。原因は?

サルコペニア肥満化の典型サインです。食事制限のみで運動を伴わないダイエットでは、減った体重の30-40%が筋肉由来とされます。一度BIAで体組成を測定し、四肢骨格筋量指数(SMI)を確認してください。低下していればレジスタンストレーニングとタンパク質増量へ戦略転換が必要です。当院でも同様の経過で来院される方は珍しくありません。

Q3. 防風通聖散は誰でも飲めば痩せますか?

いいえ、体質(証)が合わない人が飲むと逆に体調を崩します。防風通聖散は「体力充実・腹部肥満・便秘・のぼせ」の実証タイプ向けで、虚証・高齢者・痩せ型・低血圧の方には禁忌に近いです。市販薬として簡単に買える分、適応外の方が使ってトラブルになるケースが後を絶ちません。漢方は必ず医師または薬剤師の判断のもとで使用してください。

Q4. GLP-1で痩せれば、運動はしなくていいですか?

強くお勧めしません。GLP-1単独治療では減量分の20-40%が筋量から失われると報告されており、運動を併用しなければサルコペニア化のリスクが上がります。とくに50歳以上の方では、GLP-1導入時にレジスタンストレーニング(週2-3回)とタンパク質摂取量1.2-1.5 g/kgを必ずセットで指導します。「楽して痩せる薬」ではなく「運動と食事改善を支える強力な補助輪」と位置づけてください。

Q5. 高齢の母(78歳・BMI 27)にダイエットを勧めるべきですか?

慎重な判断が必要です。高齢者ではBMI 27前後がむしろ最も全死亡率が低いという疫学データ(obesity paradox)があり、安易な減量は禁物です。まずSARC-F質問票でサルコペニアを評価し、サルコペニア肥満であれば「減量」より「筋量維持と転倒予防」を優先します。糖尿病・心不全など明確な合併症があり、専門医が減量を指示した場合に限って、月0.5 kg以下の極めて緩やかなペースで進めるのが安全です。

判定後の次の一歩 — 当院ツールと外来へ

本ガイドで自身の肥満タイプを把握できたら、次は実行フェーズへ進みましょう。当院では肥満症診療を支える複数のオンラインツールを無料公開しています。

当院での肥満症外来の特色

セルフ判定で「サルコペニア肥満が疑われる」「内臓脂肪型でメタボ合併」「ダイエットを繰り返しているが安定しない」といったケースは、ぜひ当院の糖尿病・肥満症外来へご相談ください。当院では以下の体制で対応しています。

  • 糖尿病専門医による初診評価+採血・腹部CT/エコーでの類型確定
  • BIA体組成計による定期的な筋量・脂肪量モニタリング
  • 類型に応じた処方(GLP-1・SGLT2阻害薬・漢方・栄養指導)
  • 必要に応じて整形外科専門医(小林高之)・歯科栄養(小林早紀子)と連携
  • 「価格で競争しない、医療品質で差別化する」方針 — 副作用対応・撤退戦略・長期フォローまで一貫責任

受診をご希望の方はアクセス・診療時間またはお問い合わせフォームからご予約ください。

まとめ — BMIではなく「3類型」で肥満を理解する

本ガイドでお伝えした重要ポイントを総括します。

  • 肥満(BMI 25以上)と肥満症(BMI 25以上+健康障害合併、または内臓脂肪型)は別物。治療対象は後者
  • 同じBMIでも内臓脂肪型・皮下脂肪型・サルコペニア肥満で合併症リスクと治療戦略は全く異なる
  • 内臓脂肪型は男性・中高年に多く、代謝合併症の母床。有酸素運動+糖質脂質制限+必要時GLP-1/SGLT2が奏功
  • 皮下脂肪型は女性に多く、合併症リスクは比較的低いが落ちにくい。長期戦と下半身筋トレが鍵
  • サルコペニア肥満は高齢者・ダイエット失敗者で発生し、最も予後不良。「減量より筋量維持」が原則
  • 漢方は類型別に防風通聖散(実証メタボ)・防已黄耆湯(水毒皮下脂肪)・大柴胡湯(ストレス太り)を使い分ける
  • GLP-1は内臓脂肪型に最強だが、サルコペニア肥満では筋量モニタリングが必須
  • 当院は糖尿病専門医+ベストボディ受賞兄妹医師の体制で、理論と実体験の両輪で肥満症診療を支援

BMIだけを追いかけるダイエットの時代は終わりました。「自分の肥満タイプを正しく知り、タイプに合った戦略で取り組む」ことが、リバウンドしない減量・健康寿命の延伸への近道です。本ガイドが、あなたの最初の地図となれば幸いです。

小林 正敬 医師が監修する関連記事

小林 正敬 医師が監修した他の記事もあわせてご参照ください。


監修:小林 正敬 医師
日本糖尿病学会 糖尿病専門医 / 日本内科学会 総合内科専門医 / 日本老年医学会 老年科専門医・指導医
医籍登録番号:第486214号
公開日:2026-05-10 / 最終更新日:2026-05-10

参考文献

  • 日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』ライフサイエンス出版, 2022
  • 日本肥満学会『肥満症治療ハンドブック』ライフサイエンス出版, 2024
  • 日本サルコペニア・フレイル学会『サルコペニア診療ガイドライン2017年版(一部改訂)』ライフサイエンス出版, 2020
  • 日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂, 2024
  • 日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』日本動脈硬化学会, 2022
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドローム」「サルコペニア」項目
  • 日本東洋医学会『漢方診療ガイドライン2023』日本東洋医学会, 2023
  • Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity (STEP 1). N Engl J Med. 2021;384:989-1002.
  • Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity (SURMOUNT-1). N Engl J Med. 2022;387:205-216.
  • Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis (EWGSOP2). Age Ageing. 2019;48:16-31.
  • Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21:300-307.
  • Donini LM, et al. Definition and Diagnostic Criteria for Sarcopenic Obesity: ESPEN and EASO Consensus Statement. Obes Facts. 2022;15:321-335.
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院 代表理事 / 院長。日本糖尿病学会 糖尿病専門医/日本糖尿病協会 糖尿病認定医/日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医/日本内科学会 認定医制度審議会 病歴要約評価委員/日本老年医学会 老年科専門医・指導医/日本抗加齢医学会 抗加齢専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター。医籍登録番号 第486214号。国立国際医療研究センター国府台病院で内科研修を始めた後、糖尿病内科の道に進み、現在は最新の薬物療法(GLP-1作動薬・チルゼパチド等)と、栄養・運動・漢方を組み合わせた包括的な糖尿病・代謝診療を実践しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次