ALT・AST・γ-GTPが高い|健診の肝機能はお酒か脂肪肝か、数値の組み合わせで見分ける

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健診結果の肝機能欄に印がついた——ALT・AST・γ-GTPは、どれか1つの数字だけを見ても意味が決まりません。3つのうちどれが高いかという「組み合わせ」で、原因がお酒寄りなのか脂肪肝寄りなのかが絞れます。しかも判定のラインは、多くの方が思っているより厳しいところに引かれています。結論の早見表から始めます。

目次

早見表——ALT・AST・γ-GTPの数値帯が意味すること

肝機能の判定区分は、日本人間ドック・予防医療学会が項目ごとに数値帯で定めています。以下は同学会の判定区分(2026年4月1日改定)による区分です。

項目(U/L) A 異常なし B 軽度異常 C 要再検査・生活改善 D 要精密検査・治療
AST(GOT)30以下31〜3536〜5051以上
ALT(GPT)30以下31〜4041〜5051以上
γ-GT(γ-GTP)50以下51〜8081〜100101以上

注意していただきたいのは、健診の紙に「基準値内」と印字されていても安心とは限らないことです。基準範囲の上限は施設によってALTで40〜50前後まで幅があり、上の表でBやCに当たる数値が「範囲内」と表示されることがあります。判定記号ではなく、実際の数値をこの表に当てはめてください。

ALT30という、もう一段厳しいライン——奈良宣言2023

肝臓の専門学会は、健診の基準範囲とは別に、ALTが30U/Lを超えたらかかりつけ医を受診するという、より早い段階での行動ラインを示しています。日本肝臓学会が2023年に出した「奈良宣言2023」です。

「本宣言は、特に一般的な健康診断でも肝機能検査として血液検査で広く測定されているALT値を指標として、健康診断等でALT>30であった場合、まずかかりつけ医等を受診し、かかりつけ医によって、その原因が検索され、必要があれば、消化器内科等の専門診療科で精密検査を受け、かかりつけ医と専門医の診療連携による肝疾患の早期発見・早期治療に繋げることを目的とします。」——日本肝臓学会「奈良宣言2023」

同学会は根拠として、特定健診と人間ドック学会の基準値がALT30以下であること、そしてALTが30を超える症例では肝生検をするとほとんどの場合に肝組織へ炎症細胞の浸潤が認められることを挙げています。あわせて、健康成人の約15パーセントがALT30超えに該当するとの報告にも触れています。つまりALT31〜40という、多くの健診で「軽度」としか書かれない帯域に、すでに肝臓の炎症が始まっている方が相当数含まれているということです。

人間ドックの結果説明で、私がALT35という数字を見たときに「基準値内ですね」で終わらせないのはこのためです。飲酒量、体重の推移、服用中の薬、そして同じ結果用紙の腹囲と血糖と中性脂肪——ここまで一緒に見て、初めてその35が経過観察でよい35なのか、動き始めた35なのかが決まります。

3つの数値の組み合わせで原因を絞る

ALT・AST・γ-GTPは、それぞれ体内での分布が違います。ALTは肝臓にほぼ限局し、ASTは肝臓に加えて心筋・骨格筋・赤血球にも含まれ、γ-GTPは肝臓と胆道系でアルコールや薬物の影響を強く受けます。どれが高いかで、原因の当たりが変わります。

ALTがASTより高い(ALT優位)。日本の健診で最も多いパターンで、脂肪肝が背景にあることが大半です。体重が増えた時期と数値が上がった時期が一致していれば、まずこれを疑います。

γ-GTPだけが突出して高い。飲酒が最も多い原因ですが、胆汁の流れが滞る胆石や胆道の病気、そして薬の影響でも上がります。お酒を飲まない方のγ-GTP高値を飲酒のせいにしてしまうと、胆道の病気を見落とします。

ASTがALTより高い(AST優位)。アルコール性の肝障害でよくみられる形です。ただし脂肪肝でも線維化が進むとAST優位に転じるため、「AST優位=お酒」と短絡はできません。加えて、激しい運動の直後は筋肉由来でASTだけ上がります。

ALT・AST・γ-GTPの3つの数値の組み合わせから原因を絞る図。ALTがASTより高いALT優位は脂肪肝(MASLD)が最も多い、γ-GTPだけ突出は飲酒・胆道の病気・薬剤、ASTがALTより高いAST優位はアルコール性肝障害や線維化の進行と激しい運動の影響。どのパターンでもALTが30U/Lを超えていれば受診の対象
3つの数値のどれが高いかで原因の当たりがつく。ただしどのパターンでも、ALTが30U/Lを超えていれば受診の対象になる。

脂肪肝は「肝臓の病気」から「全身の病気」へ——MASLDという呼び方

飲酒と関係なく起こる脂肪肝の呼び名が、近年変わりました。MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)です。日本消化器病学会と日本肝臓学会は2023年に国際的な名称変更へ賛同を表明し、2024年に日本語病名を公表しました。従来のNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)が「お酒を飲まないこと」を条件にしていたのに対し、MASLDは代謝の異常があることを条件に置き換えたのが最大の違いです。

その代謝の異常は、心代謝系基準として次の5項目で定義されています。両学会が公表した診断基準では、以下のいずれか1つ以上を満たすことが条件です。

  • 肥満:BMI 23kg/m2以上、または腹囲 男性94cm超・女性80cm超
  • 血糖:空腹時100mg/dL以上、食後2時間140mg/dL以上、HbA1c 5.7%以上、または2型糖尿病かその治療中
  • 血圧:収縮期130mmHg以上、拡張期85mmHg以上、または降圧薬内服
  • 中性脂肪:150mg/dL以上、または脂質異常症治療薬内服
  • HDLコレステロール:男性40mg/dL以下・女性50mg/dL以下、または脂質異常症治療薬内服

この5項目は、肝機能と同じ1枚の健診結果にすべて載っています。追加の検査を受けなくても、手元の紙の腹囲・血糖・血圧・中性脂肪・HDLの欄と、いま飲んでいる薬(血圧・脂質・糖尿病の薬)を突き合わせるだけで、肝機能の異常に代謝の背景があるかどうかをその場で見当づけられます。もちろんこれは診断そのものではなく、受診して確かめるべきかどうかの目安です。読み方はそれぞれ腹囲85cmの意味の記事HbA1cの数値の意味の記事中性脂肪150・300・500の意味の記事にまとめています。

なお、代謝の異常があり、かつ飲酒量が男性で1日30〜60g、女性で1日20〜50g(純アルコール換算)にあたる方は、MetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)という中間の区分に入ります。「代謝か、お酒か」の二択ではないということです。

見落としやすい落とし穴

外来で実際によく起きている取り違えが3つあります。

1つ目、「お酒を飲まないから脂肪肝ではない」。MASLDは飲酒の有無で除外できません。むしろ日本の健診で見つかる脂肪肝の多くが、飲酒とは無関係の代謝性です。下戸の方ほど「肝臓の数値は自分には関係ない」と思い込みやすく、指摘されても放置されやすいのが実情です。

2つ目、「γ-GTPが下がったから治った」。γ-GTPは飲酒をやめれば比較的すぐ反応しますが、それは飲酒の影響が消えただけで、肝臓に溜まった脂肪や、その先の線維化まで消えたわけではありません。私が休肝後の再検査で見るのは、γ-GTPが下がったかどうかよりも、ALTが30以下まで戻りきったかどうかです。γ-GTPだけ下がってALTが残るなら、お酒だけでは説明がつかないということ。そこから代謝性の脂肪肝、薬やサプリメント、肝炎ウイルスへと鑑別を広げます。

3つ目、「数値が正常に近いから線維化は進んでいない」。線維化がある程度進んだ段階では、ALTがむしろ落ち着いて見えることがあります。日本肝臓学会も、紹介基準に当てはまらないからといってフォローが不要とは限らず、とくに肥満・糖尿病・脂肪肝を合併する例では線維化を伴う進行例を見落とさないよう注意を促しています。数値の高さではなく持続している期間と背景疾患で危険度を見るのが正しい読み方です。

ご自身でできること——FIB-4を計算し、2〜4週間で答え合わせをする

肝臓の線維化のリスクは、追加の採血をしなくても年齢・AST・ALT・血小板数の4つから概算できます。FIB-4 indexという指標で、計算式は「年齢 × AST ÷(血小板数 × ALTの平方根)」。血小板数は人間ドックなら血液一般の欄に載っています。会社の定期健診では貧血検査だけで血小板数がないこともあり、その場合は受診時の採血で確認します。1.3未満なら進行した線維化の可能性は低く、2.67を超えると消化器内科での精密検査が必要になります。ご高齢の方は実際より高く出やすいため、65歳以上では少し余裕をもって解釈します。

もうひとつ、ご自宅でできる切り分けが「休肝の答え合わせ」です。厚生労働省e-ヘルスネットは、飲酒が原因の脂肪肝について次のように述べています。

「飲酒が原因の脂肪肝は、飲酒をやめれば短期間で改善するのが特徴です。」——厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと肝臓病」

この性質を利用して、私は飲酒習慣のある方に2〜4週間の完全休肝をお願いし、その後に採血を組みます。正常化すれば飲酒の関与が第一と考えてよく、残れば代謝側の精査に進む——検査を増やさずに、原因の候補を1つ確かめられる方法です。体重が背景にある方にとって、脂肪肝に対して現時点で最も確実な治療は減量です。食事の具体策は脂肪肝を改善する食事の記事、全体の組み立ては医師によるダイエット完全ガイドをご覧ください。

よくあるご質問

Q1. γ-GTPだけが高く、ALT・ASTは正常でした。お酒のせいですか?

A. 飲酒が最も多い原因ですが、それだけではありません。γ-GTPは胆汁の流れが滞ったとき(胆石・胆道の病気)や、一部の薬(抗てんかん薬・睡眠薬・一部の抗菌薬など)でも上がります。お酒をほとんど飲まないのにγ-GTPだけ高い方は、飲酒のせいと決めつけず、腹部超音波検査と服用中の薬の確認を受けてください。

Q2. 禁酒すると、γ-GTPはどのくらいの期間で下がりますか?

A. 飲酒が主な原因であれば、やめてから数週間で目に見えて下がります。厚生労働省e-ヘルスネットも、飲酒が原因の脂肪肝は飲酒をやめれば短期間で改善するのが特徴だとしています。外来では2〜4週間しっかり休肝してから再検査し、下がりきらない場合は飲酒以外の原因を探す、という順番で確かめます。

Q3. 激しい運動や筋トレの翌日に採血すると、ASTやALTは高く出ますか?

A. ASTは高く出ることがあります。ASTは肝臓だけでなく心筋や骨格筋にも含まれるため、強い筋トレやマラソンの直後は筋肉由来で上昇します。一方ALTは肝臓により特異的で、運動の影響は比較的小さめです。健診前日の激しい運動は避け、AST優位の上昇を指摘されたときは直前の運動歴も医師に伝えてください。

Q4. プロテインやサプリメントでALTは上がりますか?

A. 上がることがあります。とくに減量目的や筋トレ目的で複数の健康食品を併用している方では、薬剤性肝障害と同じ機序で肝機能が動くことが知られています。市販薬・漢方・サプリメントは「薬ではない」と考えて申告されないことが多いため、外来では商品名まで見せていただきます。心当たりがあれば、まず2〜4週間中止して再検査するのが最も早い確認方法です。

Q5. 健診で「脂肪肝の疑い」と書かれました。次はどの検査を受ければよいですか?

A. 順番としては、かかりつけ医での採血(肝炎ウイルス検査を含む)と腹部超音波検査が最初です。そのうえで、年齢・AST・ALT・血小板数から計算するFIB-4 indexで線維化のリスクを見積もり、高ければ肝臓の硬さを測る検査や消化器内科での精密検査に進みます。脂肪肝そのものより、線維化がどこまで進んでいるかが予後を決めます。

ALT30超えを何年も持ち越さないために

ALTが30を超えている方、γ-GTPが3桁に乗った方、そして同じ健診結果で腹囲・血糖・中性脂肪のどれかにも印がついている方は、一度ご相談ください。原因の切り分けに必要な採血と腹部超音波検査、そして背景にある体重・血糖・脂質への対応まで、保険・自費どちらの可能性も含めて、医師がその方に合う進め方をご案内します。対面のほか、オンライン診療にも対応しています。

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この記事は「健診の数値の読み方」シリーズの1本です。健診結果の各項目を数値帯ごとに読み解く記事をシリーズ一覧にまとめています。気になる項目をその場で確かめたい方は健診結果インタプリタもお使いください。

参考文献

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この記事を書いた人

まさぼ内科 消化器内科。日本内科学会 認定内科医/日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医/日本人間ドック学会 専門医/日本抗加齢医学会 専門医/全米ヨガアライアンス RYT200 修了。埼玉医科大学医学部を卒業後、河北総合病院での内科研修を経て東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科に入局。慈恵医大柏病院、葛飾医療センター内視鏡部、附属病院新橋健診センターなどで研鑽を積み、年間1,500件以上の上下部内視鏡を行いながら人間ドックで予防医学に携わっています。「腸活」と「ヨガ」の両面から、腸内環境とダイエット・自律神経の整え方を発信しています。

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