結果票に「要再検査」と印字されていた——まず知っておいていただきたいのは、この言葉の強さで緊急度は決まらないということです。判定の言葉は健診機関ごとに割り当てが違います。緊急度を決めているのは、その隣に印字された実数値のほうです。しかも国が定めた文例集は、同じ「異常」の中に「すぐに受診」と「生活を改善したうえで受診」を数値ではっきり分けています。まず、その線から始めます。
早見表——この数値なら、いつ動くか
健診の数値には、厚生労働省が定めた2本の線があります。生活習慣の改善が必要になる保健指導判定値と、医療機関での管理が必要になりうる受診勧奨判定値です。さらに一部の項目には、その先に「すぐに受診」とされる3本目の線があります。
| 項目(単位) | 保健指導判定値 (生活を見直す線) |
受診勧奨判定値 (受診を勧められる線) |
「すぐに/早期に受診」 とされる数値 |
|---|---|---|---|
| 収縮期血圧(mmHg) | 130以上 | 140以上 | 160以上 |
| 拡張期血圧(mmHg) | 85以上 | 90以上 | 100以上 |
| 空腹時血糖(mg/dL) | 100以上 | 126以上 | 126以上で未治療なら受診 |
| HbA1c(パーセント) | 5.6以上 | 6.5以上 | 6.5以上で未治療なら受診 |
| LDLコレステロール(mg/dL) | 120以上 | 140以上 | 180以上 |
| 空腹時中性脂肪(mg/dL) | 150以上 | 300以上 | 500以上 |
| AST・ALT(U/L) | 31以上 | 51以上 | — |
| γ-GT(γ-GTP)(U/L) | 51以上 | 101以上 | — |
| eGFR(mL/分/1.73m2) | 60未満 | 45未満 | — |
左の2列は厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」の別紙5、右端は同じプログラムのフィードバック文例集に基づく数値です。血圧の160/100mmHg以上、LDLコレステロールの180mg/dL以上、中性脂肪の500mg/dL以上は、生活改善の結果を待たずに受診する数値として区別されています。この3つに当てはまる方は、この先を読むより先に予約を取ってください。
なお、腎機能のeGFRだけは1回の値で確定しません。腎臓の障害は3か月以上続いているかどうかで評価するため、初回の低値は再検査で確かめる項目です。
「要再検査」「要精密検査」「要医療」は何が違うのか
判定の言葉は、おおまかには段階を表しています。要再検査は同じ項目をもう一度測って本当に異常かを確かめる段階、要精密検査は原因を特定するために別の検査を足す段階、要医療は治療の開始を検討する段階です。
問題は、この言葉の割り当てが健診機関ごとに違うことです。人間ドックでは日本人間ドック・予防医療学会の判定区分(A=異常なし、B=軽度異常、C=要再検査・生活改善、D=要精密検査・治療、E=治療中)がよく使われます。一方、特定健診が使うのは先ほどの保健指導判定値・受診勧奨判定値という別の物差しです。職場の定期健康診断は、どちらを採用するかが実施機関によって異なります。つまり、まったく同じ数値でも、受けた場所によって印字される言葉が変わります。
外来で私が最初に見るのは判定欄ではなく、その左に並んだ数値の列です。言葉は施設の方針、数値はあなたの体だからです。判定区分そのものも動きます。血糖の判定区分は2026年4月1日に改定され、低い側にも異常の判定がつくようになりました。詳しくは健診の血糖判定の改定を解説した記事にまとめています。
どこで受けるか——3つの選択肢の実務上の差
再検査の受診先は、健診を受けた施設・かかりつけの医療機関・その項目を専門とする外来の3つです。どれが正解かは、引っかかった項目の数で決まります。
- 引っかかった項目が1つで、測り直すだけでよい場合:健診を受けた施設が手間は最小です。前回のデータが手元にあり、紹介状も要りません
- 複数の項目が同時に引っかかっている場合:血圧・血糖・脂質・肝機能は互いに関係し合うため、まとめて見られる内科で。1項目ずつ別々に確かめると、組み合わせで初めて見える形を取り逃がします
- すでに治療中の病気がある場合:かかりつけへ。飲んでいる薬そのものが数値を動かしていることがあります
私が外来でお願いしているのは1つだけで、結果票の原本を持ってきていただくことです。数値だけを口頭で聞いても、その日の採血が空腹時だったのか随時だったのか、前回はいくつだったのかが分かりません。原本があれば、その場で「今日もう一度測る項目」と「今日は測らずに3か月後に見る項目」を分けられます。私はこの仕分けを初診の10分でやってしまいます。ここが決まらないまま「とりあえず全部再検査」にすると、費用も時間も余計にかかります。
費用——保険が効く場合と、効かない場合
再検査の費用は、その検査が病気の診断や治療のために必要と医師が判断したものかどうかで決まります。健康診断や人間ドックそのものは病気を診断する行為ではないため保険の対象外ですが、その結果として異常値を指摘され、医師が診察のうえ必要と判断した検査は保険診療として行えるのが一般的です。
自費になりやすいのは次の2つです。1つは、指摘された項目と関係のない検査を希望だけで追加する場合。もう1つは、健診と同じ項目一式をもう一度そのまま受け直したい場合です。受付では「健診の再検査で来ました」と伝え、結果票を出してください。それだけで扱いが変わります。
いつまでに行くか——「3か月後」が当てはまらない数値
受診時期の目安としてよく案内されるのは3か月から6か月後ですが、これは受診勧奨判定値をわずかに超えた範囲の話です。国のプログラムは、受診勧奨判定値そのものを次のように定義しています。
「受診勧奨判定値(注)(判定値を超えるレベルの場合、再検査や生活習慣改善指導等を含め医療機関での管理が必要な場合がある。)」——厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」別紙5
そして同じプログラムのフィードバック文例集は、この線を超えた人をさらに2つに分けています。血圧で言えば、収縮期160mmHg以上または拡張期100mmHg以上は「すぐに医療機関の受診を」、収縮期140から159mmHgまたは拡張期90から99mmHgは「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」です。文例集は前者について、望ましい血圧(120/80mmHg未満)の人と比べて脳卒中や心臓病にかかりやすさが約5倍、後者について約3倍と説明しています。脂質も同じ構造で、LDLコレステロール180mg/dL以上または中性脂肪500mg/dL以上が「早期に医療機関の受診を」、LDLコレステロール140から179mg/dLまたは中性脂肪300から499mg/dLが「生活習慣を改善する努力をした上で、医療機関の受診を」です。
血糖には、この「生活を改善してから」の枠がありません。空腹時血糖126mg/dL以上またはHbA1c6.5パーセント以上で治療中でない方は、文例集でも受診そのものを促す扱いになります。糖尿病は自覚症状がないまま網膜と腎臓が進むため、私は電話で結果を伝える段階から予約日を決めてしまいます。
見落としやすい落とし穴
再検査で判断を誤りやすいのは、次の3つの場面です。
1つ目、判定語の強さで緊急度を決めてしまうこと。「要再検査」より「要精密検査」のほうが重いと読むのは自然ですが、先に述べたとおり割り当ては施設ごとに違います。中性脂肪520mg/dLに「要再検査」と印字されることも、中性脂肪310mg/dLに「要精密検査」と印字されることも、どちらもあり得ます。数値を見てください。中性脂肪の数値帯ごとの意味は中性脂肪の数値の意味の記事にまとめました。
2つ目、再検査の前日だけ生活を変えてしまうこと。お酒を抜く、前日から食事を減らす、当日の朝に走る——気持ちは分かりますが、再検査は「いつもの自分」を測る検査です。とくに中性脂肪とγ-GTは数日の変化で素直に動くので、前日だけ整えると数値は下がり、必要な治療の判断が遅れます。指示された絶食時間は守り、それ以外はふだん通りで来てください。肝機能の数値がどこまで生活で動くかはALT・AST・γ-GTPの意味の記事で解説しています。
3つ目、1項目だけを見て安心すること。健診の項目は独立していません。空腹時血糖が110mg/dLで「まだ大丈夫」と思っていた方に、中性脂肪180mg/dLとALT45U/Lが同時に並んでいれば、私は脂肪肝を伴うインスリン抵抗性の形と読み、体重の話から始めます。1つずつなら軽度でも、重なりには意味があります。腎機能のようにeGFRが下がると使える薬が変わる項目もあるため、全項目をそろえて見る価値があります。
ご自宅でできる、受診前の準備
再検査の精度は、受診日までにご自身が用意したもので変わります。いちばん効くのは結果票を過去2、3年分そろえることです。並べると、動いている項目と止まっている項目がはっきり分かれます。私が初診で最も知りたいのは今年の数値ではなく、この2、3年の傾き方だからです。
あわせて、飲んでいる薬とサプリメントをすべて書き出してきてください。健康食品や筋トレ用のプロテインが肝機能の数値を動かしていることは珍しくありません。血圧で引っかかった方は、家庭血圧の記録があると話が早く進みます。朝と晩、座って1、2分休んでから測った値を1週間分。健診での1回の測定より、こちらのほうが治療方針を決める材料になります。
ご自分の数値がどの帯にあるかをその場で確かめたい方は健診結果インタプリタを、HbA1cの読み方はHbA1cの数値の意味の記事をお使いください。体重が関わる項目が複数並んでいた方は、医師によるダイエット完全ガイドが最初の設計図になります。
よくあるご質問
Q1. 健診を受けた施設と、家の近くのクリニック。再検査はどちらで受けるべきですか?
A. 引っかかった項目が1つで、その場で測り直せばよいだけなら、健診を受けた施設が手間は少ないです。一方、複数の項目が同時に引っかかっている場合や、今後も数値を追っていく必要がある場合は、通い続けられる場所を選んだほうが結果的に早く片づきます。どちらを選ぶ場合も、結果票の原本を持参してください。過去の数値と並べられるかどうかで、再検査で測る項目が変わります。
Q2. 再検査は保険が効きますか。自費になることはありますか?
A. 健康診断や人間ドックそのものは病気の診断ではないため保険の対象外ですが、その結果として異常値を指摘され、医師が診察のうえ必要と判断した検査は保険診療で行えるのが一般的です。一方、指摘された項目と関係のない検査を本人の希望だけで追加する場合や、健診と同じ項目一式をもう一度そのまま受け直したい場合は、自費の扱いになることがあります。受付で「健診の再検査で来ました」と伝え、結果票を出すのが確実です。
Q3. 「要再検査」と「要精密検査」と「要医療」は何が違いますか?
A. おおまかには、要再検査は同じ項目をもう一度測って本当に異常かを確かめる段階、要精密検査は原因を特定するために別の検査を追加する段階、要医療は治療の開始を検討する段階です。ただしこの言葉の割り当ては健診機関が採用している判定区分によって異なり、同じ数値でも表記が変わることがあります。言葉の強さではなく、結果票に印字された実数値で判断してください。
Q4. 再検査の前日は、お酒を抜いたり食事を減らしたりしたほうがいいですか?
A. 検査前の絶食時間の指示は守っていただく必要がありますが、それ以外はふだん通りで来てください。再検査は「いつもの自分の数値」を確かめる検査です。前日だけ節酒や絶食をすると数値が一時的に下がり、本来必要な治療の判断が遅れます。とくに中性脂肪とγ-GTは数日の生活の変化で動きます。ふだんの状態のまま測るほうが、あなたにとって得です。
Q5. 去年も同じ項目で再検査と言われましたが、受けずに今年も同じ結果でした。急ぐ必要はありますか?
A. 同じ数値が2年続いているという事実は、むしろ受診を急ぐ理由になります。一度きりの異常値は測定条件のぶれで説明できることがありますが、繰り返す異常値は体の状態がそうであることを示しています。血糖・血圧・脂質・肝機能はいずれも自覚症状がないまま進むため、本人の感覚は判断材料になりません。結果票を2年分そろえて受診してください。並べて見ると、動いている項目と止まっている項目がはっきり分かれます。
結果票を持ってきていただければ、その日に次の一手が決まります
再検査を先延ばしにしている方、どこへ行けばよいか決められないまま結果票を引き出しにしまっている方は、一度ご相談ください。当院では結果票を拝見したうえで、その日に測り直す項目と、生活を変えて3か月後に見る項目を分けてお伝えします。血糖や体重が関わる項目が並んでいる場合は、食事・運動の設計から、必要に応じてGLP-1受容体作動薬(食欲と血糖を調える消化管ホルモンの薬)を含む治療まで、保険・自費どちらの可能性も含めてご案内します。対面のほか、オンライン診療にも対応しています。
結果票の項目ごとの読み方は「健診の数値の読み方」シリーズにまとめています。気になる項目からシリーズ一覧をご覧ください。
参考文献
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」別紙5「健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値」、および血圧高値・脂質異常・血糖高値に関するフィードバック文例集
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」掲載ページ
- 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分」
- 日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン』、日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』、日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイド』(上記別紙5が各判定値の根拠として挙げる各学会指針)
コメント