中性脂肪150・300・500の意味|どこから危ないかを糖尿病専門医が解説

急な症状でお困りの方へ ─ 胸痛・麻痺・激しい頭痛・呼吸困難など緊急性のある症状は 救急受診ガイド(119を呼ぶ目安) をご確認ください。

健診結果の「中性脂肪(トリグリセライド)」に印がついた——同じ「高い」でも、150・300・500のどこを超えたかで、意味も急ぐ度合いもまったく違います。150台は生活を見直す合図、300台は原因を調べる段階、500超は急性膵炎という別のリスクが加わる段階。まず結論の早見表からご覧ください。

目次

早見表——中性脂肪の数値帯が意味すること

中性脂肪の読み方は、空腹時採血の値で5つの数値帯に分けると整理できます(日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』の診断基準に基づく)。

空腹時の値(mg/dL) 意味 次の一歩
150未満基準内現状維持。ただしLDLコレステロールは別項目として確認を
150〜299高トリグリセライド血症生活改善の開始ライン。甘い飲料・お酒・夜食の3点を見直す
300〜499中等度の上昇受診を推奨。糖尿病・甲状腺などの背景を調べ、薬物療法も検討
500〜999高度の上昇早めに受診。急性膵炎のリスクを考慮し治療を急ぐ
1000以上急性膵炎の危険域すぐに受診。激しい腹痛が出たら救急受診を

この表は10時間以上絶食した「空腹時」の値です。食後など随時採血では175mg/dL以上が基準になります(後述)。

中性脂肪の数値帯の図。149以下は基準内、150から299は生活改善の開始ライン、300から499は受診して原因を調べる、500から999は急性膵炎のリスクがあり早めに受診、1000以上はすぐに受診。食後など随時採血では175以上が基準
中性脂肪(mg/dL・空腹時採血)の数値帯と、その帯でやること。境目は150・300・500・1000。食後など随時採血では175以上が「高い」の基準になる。

中性脂肪とは何の数字か

中性脂肪(トリグリセライド、TG)は、食事でとった脂質と、使い切れずに余った糖質・アルコールを材料に肝臓で作られる、体のエネルギー貯蔵用の脂肪です。血液検査では、血液中を流れているその濃度をmg/dL単位で測っています。

中性脂肪は生きるために必須で、ゼロを目指す数字ではありません。問題は余った分の行き先です。使い切れない分は肝臓と内臓脂肪にため込まれ、脂肪肝や内臓脂肪型肥満として蓄積します。そのため中性脂肪が高い方は、同じ健診結果の肝機能(ALT・AST・γ-GTP)も併せて確認してください。さらに血液中の中性脂肪が多い状態は、善玉のHDLコレステロールを減らし、悪玉のLDLを血管の壁に入り込みやすい小型のタイプに変えるため、「脂質全体の質」を悪化させて動脈硬化を進めます

「150」の意味——空腹時と食後で基準が違う

高トリグリセライド血症の診断基準は、空腹時採血で150mg/dL以上、または随時(非空腹時)採血で175mg/dL以上です。随時基準の175は2022年版ガイドラインで新設され、「空腹時でなければ判定できない」時代は終わりました。

「基本的に10時間以上の絶食を『空腹時』とする。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする。空腹時であることが確認できない場合を『随時』とする。」——厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症」(脂質異常症診断基準の注)

中性脂肪は血糖値と同じように食事のたびに上がり、食後4〜6時間ごろに最も高くなります。外来で「朝ごはんを食べてから受けた健診で高かったのですが」と相談されたとき、私は随時基準の175で読み直し、超えていれば空腹時の再検査で普段の値を確かめる、という順番でお話ししています。食後の高値自体も動脈硬化のリスクと関連するため、「食後だからノーカウント」にはしません。

300・500・1000で何が変わるか

目安として、300mg/dL以上は生活習慣だけと決めつけずに背景の病気を調べる段階、500mg/dL以上は動脈硬化に加えて急性膵炎のリスクを考える段階に変わります。

300を超えてくると、飲酒や食事だけでなく、糖尿病(インスリンの働きが落ちると中性脂肪の分解が滞ります)、甲状腺機能低下症、腎臓の病気、ステロイドなど一部の薬、生まれつきの体質——といった原因が関わっていることが増えます。また400mg/dL以上ではLDLコレステロールを計算式で求められなくなるため、総コレステロールからHDLを引いた「non-HDLコレステロール」で評価し直します。

500を超えたら、話は動脈硬化だけではなくなります。血液中に増えすぎた中性脂肪が膵臓の消化酵素で分解されるときに生じる脂肪酸が、膵臓そのものを傷つけ、急性膵炎——みぞおちから背中に抜ける激痛で救急搬送されることもある病気——の引き金になります。リスクは1000を超えるとさらに高まります。私が生活改善と並行して最初から薬物療法(フィブラート系薬など)を考えるのは、この500以上のゾーンです。すでに強い腹痛・背部痛があるなら、外来の予約を待たず救急受診してください(救急受診ガイド)。

なぜ上がるのか——お酒だけが原因ではない

中性脂肪を上げる主な要因は、アルコール、果糖を含む甘い飲料・菓子、夜遅い食事と食べすぎ、内臓脂肪の蓄積、運動不足です。「お酒を飲まないのに高い」という方は珍しくありません。余った糖質は肝臓で中性脂肪に作り替えられるため、ジュースや菓子パンが主因のケースを外来で頻繁にみます。その場合、私はお酒より先に「飲み物をお茶か無糖に置き換える」の一点から始めてもらいます。

私が診察室でまず確認するのは、飲酒量、甘い飲料の習慣、夜食の3つです。この3つのどれかに心当たりがあれば、そこが最初の介入点になります。3つとも当てはまらないのに300を超えているなら、先に挙げた二次性の原因や体質を調べる血液検査を組みます。血糖値との関係が気になる方は、HbA1cの数値の意味の記事も併せてご覧ください。

見落としやすい落とし穴

中性脂肪の判定には、数字の性質からくる落とし穴が3つあります。

1つ目、検査の直前だけ節制すると「普段の値」が見えなくなること。中性脂肪は数日〜数週間の生活をすばやく映す数字で、健診前の1週間だけ禁酒すると、それだけで大きく下がる方がいます。血管が浴びているのは残り51週の値です。私は健診前も普段どおりに過ごして、等身大の数字を持ってきてくださいとお願いしています。

2つ目、中性脂肪ばかり見てLDLコレステロールを見落とすこと。中性脂肪とLDLは別項目です。中性脂肪が下がってもLDLが140mg/dL以上のままなら、動脈硬化対策としては主役が残っています。健診表では両方をセットで確認してください。

3つ目、「基準内だから安心」とは限らないこと。150未満でも、HDLコレステロールが40mg/dL未満の場合や、腹囲・血糖の異常と重なっている場合は、メタボリックシンドロームとしての対応が必要になることがあります(腹囲の読み方は腹囲85cmの意味の記事へ)。

ご自宅でできる下げ方——中性脂肪は反応が速い

中性脂肪には、コレステロールに比べて食事・運動の改善に速く反応するという良い性質があります。数週間単位で動くため、取り組みの手応えを数字で確かめやすい項目です。ご自宅で始める優先順位は次のとおりです。

  • 甘い飲料をやめる——果糖は中性脂肪の直接の材料。まずジュース・加糖コーヒー・エナジードリンクから
  • お酒を減らす——目安は純アルコールで1日25g以下(ビール中びん1本、日本酒1合程度)
  • 体重を3%減らす——内臓脂肪が先に減り、中性脂肪は敏感に下がります。80kgの方なら約2.4kgです
  • 歩く——中強度の有酸素運動を毎日合計30分以上が目標。まとめてでも分割でも構いません
  • 青魚を増やす——EPA・DHAを主成分にした中性脂肪の薬があるほどの脂肪酸。まず週2回、焼き魚か水煮缶で

外来で私が最初に出す宿題も、この1番目と2番目だけに絞ることがほとんどです。効き目の大きい2つを4週間続けて、次の採血で答え合わせをするほうが続きます。内臓脂肪を落とす食事の全体像は内臓脂肪を減らす食事と運動の記事にまとめています。

よくあるご質問

Q1. 中性脂肪300は、すぐに薬を飲むレベルですか?

A. 300mg/dL台でいきなり薬から始めることは多くありません。まず糖尿病・甲状腺機能低下症・飲酒・薬剤など背景の確認と生活の見直しを数か月行い、下がらない場合に薬物療法を検討します。ただし500mg/dLを超えていれば急性膵炎のリスクを考え、薬の開始を早めに判断します。

Q2. 食後の採血で中性脂肪が高く出ました。測り直すべきですか?

A. 食後の採血には175mg/dL以上という専用の基準があります。175を超えていた場合は、10時間以上絶食した空腹時の再検査で普段の値を確かめてください。ただし食後の高値も動脈硬化のリスクと関連するため、「食後だから無効」ではありません。

Q3. お酒を飲まないのに中性脂肪が高いのはなぜですか?

A. 余った糖質も肝臓で中性脂肪に変わるため、果糖を含む甘い飲料・菓子類、夜遅い食事、内臓脂肪の蓄積、運動不足でも上がります。糖尿病や甲状腺機能低下症などの病気、一部の薬、生まれつきの体質も原因になるため、飲酒ゼロで高い場合こそ調べる意味があります。

Q4. 中性脂肪が低すぎるのは問題ですか?

A. 軽く低い程度なら心配ないことがほとんどです。極端な低値(おおよそ30mg/dL未満が続くなど)では食事量の不足・甲状腺機能亢進症・肝臓の病気が隠れていることがあるため、体重減少や動悸を伴うなら受診して相談してください。

Q5. 中性脂肪とコレステロールはどう違うのですか?

A. 中性脂肪はエネルギーの貯蔵用、コレステロールは細胞膜やホルモンの材料で、役割がまったく別です。健診では別項目として判定されるため、中性脂肪が正常でも、LDLコレステロールが高ければ動脈硬化の対策は別に必要です。

中性脂肪は、この数週間の生活を映す鏡です

中性脂肪が300を超えている方、「下げたいのに毎年同じ結果」の方は、一度ご相談ください。当院では、原因を調べる血液検査から、食事・運動の設計、薬物療法、内臓脂肪型の減量治療まで、保険・自費どちらの可能性も含めて、医師がその方に合う方法をご案内します。対面のほか、オンライン診療にも対応しています。

まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院のご案内はこちら

この記事は「健診の数値の読み方」シリーズの1本です。健診結果の各項目を数値帯ごとに読み解く記事をシリーズ一覧にまとめています。気になる項目をその場で確かめたい方は健診結果インタプリタもお使いください。

参考文献

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この記事を書いた人

まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院 代表理事 / 院長。日本糖尿病学会 糖尿病専門医/日本糖尿病協会 糖尿病認定医/日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医/日本内科学会 認定医制度審議会 病歴要約評価委員/日本老年医学会 老年科専門医・指導医/日本抗加齢医学会 抗加齢専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター。医籍登録番号 第486214号。国立国際医療研究センター国府台病院で内科研修を始めた後、糖尿病内科の道に進み、現在は最新の薬物療法(GLP-1作動薬・チルゼパチド等)と、栄養・運動・漢方を組み合わせた包括的な糖尿病・代謝診療を実践しています。

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