今年の健診結果から、血糖の判定の付き方が変わっています。日本人間ドック・予防医療学会の判定区分が2026年4月1日に改定され、これまでどれだけ低くてもA判定にしかならなかった「低い側の血糖」に、C判定・D判定がつくようになりました。去年はA(異常なし)だった空腹時血糖65mg/dLが、今年は同じ数値でC(要再検査・生活改善)になります。数値が悪化したのではなく、線が引き直されたのです。
早見表——2026年4月1日からの血糖の判定区分
健診の血糖判定は、空腹時血糖(FPG)とHbA1cを同じ日に測り、その2つの組み合わせでA・B・C・Dの4段階を決めます。2026年4月1日の改定で、この組み合わせ方と、低い側の扱いが変わりました。
| 判定 | 空腹時血糖とHbA1cの組み合わせ | 次の一歩 |
|---|---|---|
| A 異常なし | FPG 70〜99mg/dL かつ HbA1c 5.5%以下 | 現状維持 |
| B 軽度異常 | ①FPG 100〜109 かつ HbA1c 5.9%以下 ②FPG 70〜99 かつ HbA1c 5.6〜5.9% のいずれか | 食事と体重の見直しを始める。次の健診まで放置しない |
| C 要再検査・生活改善 | ①FPG 110〜125 ②FPG 126以上 かつ HbA1c 6.4%以下 ③FPG 70〜109 かつ HbA1c 6.0%以上 ④FPG 54〜69(今回の新設) のいずれか | 条件をそろえて再検査 |
| D 要精密検査・治療 | ①FPG 126以上 かつ HbA1c 6.5%以上 ②FPG 53以下(今回の新設) のいずれか | 受診して原因を調べる |
判定区分の注記では、空腹時血糖110〜125mg/dLまたはHbA1c6.0〜6.4%のときに75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)が推奨されます。HbA1cという数値そのものの読み方はHbA1cの数値の意味の記事にまとめています。
変わったのは「低い側」だけ——新旧の比較
今回の改定で線が動いたのは、血糖が低い側です。糖尿病の疑いを拾う高い側の線(空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上)は動いていません。
| 空腹時血糖(HbA1cは5.5%以下の場合) | 2025年度までの判定 | 2026年4月からの判定 |
|---|---|---|
| 95mg/dL | A | A(変更なし) |
| 75mg/dL | A | A(変更なし) |
| 65mg/dL | A | C 要再検査・生活改善 |
| 55mg/dL | A | C 要再検査・生活改善 |
| 50mg/dL | A | D 要精密検査・治療 |
2025年度版のA判定は「空腹時血糖99mg/dL以下 かつ HbA1c5.5%以下」で、下限が書かれていませんでした。数値がどれだけ低くても、上限さえ超えていなければA判定だった、ということです。2026年4月からのA判定は「70〜99mg/dL」となり、70という下限が入りました。B判定の条件も同じように、「99mg/dL以下」から「70〜99mg/dL」へ下限が加わっています。
なぜ低い血糖に区分がついたのか
新しく設けられた「空腹時血糖54〜69mg/dL=C判定」「53mg/dL以下=D判定」という線は、米国糖尿病学会(ADA)が定める低血糖のレベル1(70mg/dL未満)とレベル2(54mg/dL未満)に対応しています。
学会が改定の根拠として示したのは、健診施設から集めた実データです。空腹時血糖70mg/dL未満だった人は1,291,025人中1,786人。そのうち糖尿病治療薬を使用していたのは114人にとどまり、1,565人は薬を使っていない人でした(不明107人)。
健診で低い血糖が見つかる人の大半は、「治療の薬で下がりすぎた」人ではない、ということです。糖尿病の治療を受けていない人の低血糖には、内分泌の疾患、肝疾患、腫瘍性の疾患、インスリン自己免疫症候群といった、調べるべき原因があります。頻度としてはまれで、空腹時血糖70mg/dL未満は1,000人に1〜2人ほどです。ただし自覚症状がなければ、健診の採血が唯一の手がかりになります。それが2025年度までは、A判定の紙を受け取って終わっていました。
「会員の皆様からご要望の強かった「低血糖」、「二日ドックの75gブドウ糖負荷試験」に関する判定区分をそれぞれAmerican Diabetes Association(ADA)、日本糖尿病学会からの報告に準拠して作成しました。なお判定区分は基本検査項目(空腹時血糖・HbA1c同時実施)を基に作成しています」——日本人間ドック・予防医療学会「【会告】血糖に関する判定区分の改訂(2026年4月施行)」
HbA1cだけで決まる判定は、なくなった
2025年度版のC判定には「HbA1c6.0〜6.4%」という、空腹時血糖と無関係にHbA1cだけで決まる条件がありました。2026年4月からは、これが「空腹時血糖70〜109mg/dL かつ HbA1c6.0%以上」という、2つの数値の組み合わせに置き換わっています。HbA1c単独で判定が決まる条件は、新しい区分表から消えました。逆方向、つまり空腹時血糖の側には、110〜125mg/dLや54〜69mg/dLのように単独で判定が決まる条件が残っています。
外来でこの変更が効いてくるのは、2つの数値が食い違う方です。私が実際に手を止めるのは、空腹時血糖は90mg/dL台で正常なのにHbA1cだけが6.2%というタイプで、この場合は空腹時の採血をもう一度足しても答えが出ません。食後の血糖が上がっている可能性を先に潰しにいくと決めて、次の検査を組みます。空腹時と食後で何を見ているのかの違いは空腹時血糖と食後血糖の違いの記事に書きました。
見落としやすい落とし穴
この判定区分は、日本人間ドック・予防医療学会が人間ドックのために定めたものです。健診の結果票がすべてこの区分で書かれているわけではありません。
1つ目、特定健診(メタボ健診)は別の物差しです。特定健診で使われるのは厚生労働省の保健指導判定値・受診勧奨判定値で、空腹時血糖は100mg/dL(保健指導)と126mg/dL(受診勧奨)、HbA1cは5.6%と6.5%です。こちらには低い側の線がありません。職場の定期健康診断は、どの判定基準を採用するかが実施機関によって異なります。同じ数値でも、受けた健診の種類で紙に載る言葉が変わる、ということです。ご自身の結果票がどちらに近いかは、低い血糖にも判定が付いているかどうかを見てください。
2つ目、低い=体に良い、ではありませんが、低い=病気でもありません。空腹時血糖が低めであること自体は病気ではなく、体質として低めの方もいます。新設されたC判定は「異常があります」という宣告ではなく、「もう一度測って、続くようなら理由を探しましょう」という区分です。1回の低値で慌てる必要はありません。
3つ目、絶食時間がずれていると、そもそも空腹時血糖として読めません。判定区分は空腹時に測った値であることを前提にしています。前夜に遅い食事をとった、健診の直前に飴をなめた、逆に前日から24時間近く何も食べていない——このいずれも数値を動かします。低い値が出て心当たりのある方は、まずそこを確かめてください。
低い血糖を指摘されたら、外来で私が確かめること
低い側の判定への対応は、症状の有無と判定の重さで分かれます。症状がなくC判定(空腹時血糖54〜69mg/dL)なら、まず条件をそろえた再検査です。症状があるとき、またはD判定(53mg/dL以下)なら、再検査を待たずに受診してください。53mg/dL以下はADAのレベル2に当たる低さで、原因を調べる段階に入っています。
私が外来でまず聞くのは、症状の有無です。空腹時や食後数時間で、冷や汗・動悸・手のふるえ・強い空腹感・頭が働かない感じが出ていないか。ここで進め方が二手に分かれます。症状がなく数値だけが低いのなら、絶食条件をそろえて再検査を組み、続くかどうかを見ます。症状を伴うなら、症状が出ているその瞬間の血糖を捕まえにいく必要があるので、再検査の時間帯そのものを設計し直します。朝一番の採血をもう一度やっても、夕方に症状が出る方の答えは出ないからです。
次に確認するのが、服用中の薬と飲酒です。糖尿病の薬を使っていない方でも、血糖を下げる方向に働く薬はあります。ここで思い当たるものが出てくれば、いきなり精密検査には進みません。その薬や飲み方を調整したうえで測り直し、値が戻るかどうかを先に見ます。思い当たるものが何もなく、低い値が再検査でも動かないときに、初めてホルモンや肝臓の検査へ進みます。
ご自宅でできる準備は3つです。症状が出た日時・そのとき直前に食べたもの・最後の食事からの時間をメモしておいてください。これがあると、再検査の採血を何時に入れるかがその場で決められます。「なんとなく調子が悪い日がある」だけでは、採血のタイミングが決められません。
よくあるご質問
Q1. 去年はA判定だったのに、今年は同じ数値でC判定になりました。悪くなったのですか?
A. 数値が同じであれば、体の状態が悪くなったわけではありません。2026年4月1日に判定区分が改定され、空腹時血糖70mg/dL未満が異常側の判定に入るようになったためです。2025年度までは、どれだけ低くてもA判定にしかなりませんでした。ただし判定が変わっただけだから放置してよい、という意味でもありません。低い値が再検査でも続くかどうかを確かめてください。
Q2. 糖尿病の薬を飲んでいないのに、低血糖の判定が出ました。ありえるのですか?
A. あります。学会が改定の根拠として示したデータでは、空腹時血糖70mg/dL未満だった1,786人のうち、糖尿病治療薬を使用していたのは114人で、1,565人は使用していませんでした。薬以外の原因としては内分泌の疾患、肝疾患、腫瘍性の疾患、インスリン自己免疫症候群などがあります。頻度は高くありませんが、自覚症状がなければ健診の採血が唯一の手がかりになります。
Q3. 空腹時血糖は正常なのに、HbA1cだけが6.2%でC判定でした。なぜですか?
A. 2026年4月からのC判定に「空腹時血糖70〜109mg/dL かつ HbA1c6.0%以上」という組み合わせの条件があるためです。空腹時が正常でも食後に血糖が上がっていると、HbA1cだけが先に上がることがあります。この形は空腹時の採血だけでは見つからないため、食後の血糖を確かめる検査が次の一手になります。
Q4. 職場の健康診断の結果票にはA・B・Cの判定欄がありません。この改定は関係ないのですか?
A. この判定区分は人間ドックのために定められたものです。特定健診は厚生労働省の保健指導判定値・受診勧奨判定値という別の物差しを使い、こちらには低い側の線がありません。職場の定期健康診断は、どの判定基準を採用するかが実施機関によって異なります。いずれの場合も結果票の表記は変わらないことがあります。ただし空腹時血糖が70mg/dL未満だったという事実は変わりません。数値そのものは結果票に載っていますので、判定欄の表記にかかわらずご確認ください。
Q5. 75gブドウ糖負荷試験(OGTT)はどんなときに勧められますか?
A. 判定区分の注記では、空腹時血糖110〜125mg/dLまたはHbA1c6.0〜6.4%のときにOGTTが推奨されています。空腹時とHbA1cのどちらかが境界の範囲にあり、糖尿病かどうかを決めきれない場合に、実際にブドウ糖を飲んで血糖の動き方を見る検査です。2026年4月の改定では、二日ドックで行うOGTTにも判定区分が新設されました。
結果票の血糖に印がついたら、高い側でも低い側でもご相談ください
今年の健診で血糖の判定に印がついた方は、結果票をお持ちのうえ一度ご相談ください。当院では、再検査をどの条件・どの時間帯で行うか、負荷試験まで進めるかを、症状と数値の組み合わせから決めています。治療が必要と判断した場合も、保険・自費どちらの可能性も含めてご案内します。対面のほか、オンライン診療にも対応しています。
この記事は「健診の数値の読み方」シリーズの1本です。同じ結果票の他の項目——中性脂肪やALT・AST・γ-GTP——の読み方もシリーズ一覧にまとめています。手元の結果票をその場で確かめたい方は健診結果インタプリタもお使いください。
参考文献
- 日本人間ドック・予防医療学会「【会告】血糖に関する判定区分の改訂(2026年4月施行)」
- 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」(保健指導判定値・受診勧奨判定値)
- American Diabetes Association「Standards of Care in Diabetes」低血糖のレベル分類(Level 1: 70mg/dL未満かつ54mg/dL以上、Level 2: 54mg/dL未満)——上記会告が新区分の根拠として参照している文献
- 日本糖尿病学会——上記会告が、二日ドックの75g経口ブドウ糖負荷試験の判定区分の準拠先として挙げている学会
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