健診でHbA1cを指摘され、「これを食べれば下がる」という食品を探してこのページに来た方へ。先に結論を書きます。単体でHbA1cを大きく下げる食べ物・飲み物・サプリメントはありません。HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を映す数値なので、動かせるのは「1〜2か月続く食事の形」だけです。ただし、変えるべきことには効く順番があり、上から手をつけたほうが同じ努力で数値が動きます。その順番から書きます。
早見表——「HbA1cに効く」と言われるものを、効き方で並べ替える
HbA1cへの打ち手は、「1食ごとの山を削るもの」と「毎日の血糖の底そのものを下げるもの」に分かれます。前者も毎食欠かさず続ければ平均に効きますが、そのぶん毎回の手間が要り、1食でも抜ければその日は効きません。検索でよく出てくる食品やサプリメントは、ほぼすべて前者です。
| 打ち手 | 何に効くか | HbA1cへの届き方 |
|---|---|---|
| 加糖飲料をやめる | 1日の血糖の山と総量 | 大きい |
| 主食の量をそろえて調整する | 1日の糖質の総量 | 大きい |
| 体重を3%減らす | インスリンの効きやすさ | 大きい(数か月かかる) |
| 食物繊維を1日あと数g | 食後血糖の立ち上がり | 中くらい |
| 食後に20分歩く | その1食の食後血糖 | 中くらい |
| 酢・お茶・単品の食材 | その1食の食後血糖 | 小さい |
| トクホ・機能性表示食品 | 一緒にとった糖質の食後血糖 | 表示が認められた範囲は食後血糖まで |
この表の並びが、そのまま手をつける順番です。上の3つは一度決めてしまえば効き続ける打ち手で、下の3つは毎食その都度やらないと効かない打ち手です。「HbA1cを下げる食べ物」として紹介されるものの多くは、下半分に属します。
なぜ「今日の食べ物」では数値が動かないのか
HbA1cは、赤血球の中のヘモグロビンにブドウ糖が結びついた割合を示す数値で、過去1〜2か月の平均血糖を反映します。採血の直前に何を食べたかではほとんど動かない、という長所の裏返しとして、今日の食事を変えても明日の数値は変わりません。「1週間でHbA1cを下げる食べ物」という探し方は、この検査の性質と噛み合っていないのです。
しかも、反映のされ方は均等ではありません。採血の日に近いほど重みが大きく、さかのぼるほど薄くなります。入院で血糖が急に正常化した2型糖尿病の方を追ってHbA1cの下がる速さを実測した研究では、下がり幅が半分に達するまでに平均34.6日かかり、影響がさかのぼる範囲はおよそ100日に及んでいました(Tahara Y, Shima K. Diabetes Care 1995;18:440-447. PMID 7497851)。これは入院で血糖が急に下がった場合の実測なので、食事を少しずつ変えていく場合は、これよりさらに遅く現れます。裏を返せば、食事を変えて1か月後に測るのは、変化が半分も乗っていない数値を見に行くということです。
ですから外来で私は、食事を変えると決めたその日に、次の採血を2〜3か月後の日付で一緒に入れます。1か月後に測ると、「これだけやったのに下がらなかった」と受け取って、そこで食事を元に戻してしまう方が出るからです。どうしても途中経過を見たいという方には、HbA1cではなくグリコアルブミンを提案します。こちらは反映される期間が約2週間と短く、1か月の時点でも変化が出ているからです。せっかく変えた食事を、数値が追いつく前にやめてしまうのがいちばんもったいない。数値そのものの読み方はHbA1cの数値帯ごとの意味をまとめた記事に譲ります。
「血糖値のサプリ」に表示できること、できないこと
トクホ(特定保健用食品)や機能性表示食品は、制度の上では食品であって医薬品ではありません。そのため表示できるのは血糖値についての機能までで、「HbA1cを下げる」「糖尿病を治す」という表示は、制度上そもそも出せません。実際に多いのは「食後の血糖値の上昇をおだやかにする」という、食事1回ぶんに関する表示です。
「保健機能食品は医薬品とは異なり、疾病の治療や予防のために摂取するものではありません。1日当たりの摂取目安量よりも多く摂取することで、より高い効果が得られるものではありません。」——消費者庁「保健機能食品について」
効果を確かめた試験の対象も限定されています。この種の製品は、空腹時血糖や75g経口ブドウ糖負荷試験の値が境界型の方、あるいは食後血糖が高めの方を対象にした試験をもとに作られています。そこからさらに数値が上がって糖尿病型を指摘された方は、もともと試験の対象に入っていません。関与成分として使われる難消化性デキストリンなども、糖質を含む食事と一緒にとって初めて働くもので、単独で飲んでも効きません。
外来でサプリメントの箱を持って来られる方に、私は「やめてください」とは言いません。飲んでいて安心できるなら、それ自体に価値があります。ただ、そこに毎月かけているお金と気力が、本来いちばん効く打ち手——次の節の1番目と2番目——に回っていないことのほうが多いので、そこだけは順番を入れ替えませんか、とお話しします。
実際に効く順番——上から手をつけるほど、少ない手間で数値が動く
HbA1cを下げる打ち手は、効く幅の大きい順に「液体の糖 → 主食の量 → 体重 → 食物繊維 → 食後の運動」と並べられます。上ほど効果が大きく、しかも手間が少ないという、めずらしく都合のよい並びです。
液体の糖をやめる。ジュース、加糖のコーヒー、スポーツドリンク、乳酸菌飲料。液体の糖は噛む工程がないまま短時間で吸収されるため、同じ量の糖質でも血糖の山が高く鋭くなります。ここだけを水・お茶・無糖の炭酸に替えて、次の採血で数値が動く方が実際にいます。ご自身で今日から着手できて、費用もかからない打ち手はここです。
次が主食ですが、ここは「減らす」より先に「毎回そろえる」です。ご飯茶碗1杯の量は、日によって驚くほどぶれます。まず一度だけ、ご自宅の茶碗に普段どおり盛ったご飯を計量してください。その重さを自分の基準として、以後は毎食それに合わせます。量が一定になると、数値が動いたときに原因がどこにあるかが分かるようになります。減らすかどうかを決めるのは、その次の段階です。
体重の目標は、いきなり標準体重ではなく3%です。80kgの方なら約2.4kg。この程度の減量でも、インスリンの効きやすさが改善して血糖・血圧・脂質が一緒に動くことが、厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」の考え方の土台になっています。ご自身の適正な摂取カロリーと現実的な減量ペースは減量カロリー計算ツールで確かめられます。
食物繊維については、足りていないのが「数gだけ」という点を先に知っておいてください。厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、日本人成人の食物繊維摂取量の平均は1日18.1g(令和6年国民健康・栄養調査・男女合算)です。日本人の食事摂取基準(2025年版)の目標量は男性20g以上・女性18g以上なので、男性の目標には届いておらず、女性はようやく届いたところという水準です。理想とされる1日25g以上(世界保健機関のガイドラインも同量)とは、数gの差があります。つまり必要なのは「特別な食材を足すこと」ではなく、数gを埋めることです。最短の方法は主食で、1日のうち1食を麦ごはん・胚芽米ごはん・全粒粉パン・そばに替えるだけで、精白米やふつうの食パンより効率よく増やせます。
「食物繊維とは、小腸で消化されず、そのまま大腸まで届く食品成分のことです。(中略)現在の日本人の食物繊維の摂取量は目標量よりも少なく、積極的に摂ることが望まれます。」——厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
最後が運動です。食後20分ほど歩く。血糖が上がってくる時間帯に筋肉を動かすと、その1食の山が削れます。同じ20分なら、血糖に対しては食前より食後のほうが効率的です。食べる順番やGIの考え方まで含めた食事の設計は低GI食の完全ガイドで扱っています。
見落としやすい落とし穴
ここまでを実行しても数値が動かない方には、たいてい共通する理由があります。
よくあるのは、「効く食材」を足し算にしてしまうことです。玄米、ナッツ、高カカオチョコレート、オリーブオイル、果物。いずれも悪い食品ではありませんが、これらは置き換えであって追加ではありません。今の食事に上乗せすれば、食物繊維や良質な脂質で得た分を、増えた総量が打ち消します。「良い食品を増やす」より先に「何をやめるか」を決めるほうが、HbA1cは素直に動きます。
次に気をつけたいのが、下がり方の質です。極端な糖質制限でHbA1cは確かに下がりますが、同時に筋肉量と体重が落ちすぎて、翌年にまとめて戻る方をよく見ます。とくに高齢の方では、数値が良くなったのに歩く速さが落ちている、という事態が起こり得ます。数値だけを見て「成功」と判断しないでください。
そして、食事だけでは届かない型があることです。日本人はもともとインスリンを出す力が欧米人より控えめな方が多く、体重が標準でもHbA1cが上がっていく方がいます。この型では食事量を削っても得られる幅が小さく、努力に対して数値が返ってきません。外来で私がこの見分けに使うのは、空腹時のインスリンとCペプチドです。「効きにくくなっているのか」「出す力が落ちているのか」で打つ手が変わるので、順番を守って3か月やっても動かない方には、この採血を先に提案します。インスリンの効きにくさをこの採血からどう読むかは、HOMA-IRの記事で解説しています。
よくあるご質問
Q1. HbA1cを1か月で下げることはできますか?
A. 1か月では、変えた食事の効果がおよそ半分しか数値に乗りません。入院で血糖が急に正常化した方でHbA1cの下がる速さを実測した研究では、下がり幅が半分に達するまでに平均34.6日かかっています。食事を少しずつ変えていく場合は、これよりさらに遅く現れます。食事を変えたら、次の採血は2〜3か月後に置いてください。1か月後の数値を見て「効かなかった」と判断するのが、いちばん多い失敗です。途中経過をどうしても早く知りたい場合は、反映される期間が約2週間と短いグリコアルブミンという検査があります。
Q2. 「血糖値を下げる」と書かれたお茶やサプリメントは、飲んでも意味がないのですか?
A. 意味がないわけではありませんが、期待できる範囲が違います。トクホや機能性表示食品に認められている表示は「食後の血糖値の上昇をおだやかにする」といった、食事1回ぶんの範囲です。糖質を含む食事と一緒にとって初めて働くもので、単独で飲んでも効きません。1〜2か月の平均であるHbA1cを動かす目的で買うと、期待と結果がずれます。
Q3. 玄米やもち麦に替えるだけでHbA1cは下がりますか?
A. 主食を替えることは食物繊維を増やす最短の方法ですが、量を据え置いて「替えるだけ」にすることが条件です。玄米の糖質量は白米とほとんど変わらず、もち麦も混ぜる割合が少なければ差はわずかです。茶碗に盛る量が増えれば、食物繊維の分を打ち消します。まず今の1食分を1度だけ計量して量を固定し、それから種類を替えてください。
Q4. 果物は身体に良いと聞きますが、食べてよいのですか?
A. 食べてかまいませんが、「身体に良いから追加する」のではなく、間食の置き換えとして使ってください。果物には食物繊維とビタミンがある一方、果糖とブドウ糖も含まれます。目安は1日に片手にのる程度です。なお、果汁100パーセントのジュースは繊維が失われて吸収が速く、果物そのものとは別の食品として扱ってください。
Q5. お酒はHbA1cに影響しますか?
A. 二方向に影響します。アルコールそのものは肝臓が糖を作り出す働きを抑えるため、飲んだ夜から翌朝にかけて血糖はむしろ下がることがあります。一方で、日本酒・ビール・甘いカクテルには糖質が含まれ、飲酒中は食事量も増えやすいため、1日の総量としては上がる方が多数です。HbA1cが動かない方では、飲酒の頻度と締めの主食を先に見直すと変化が出ることがあります。
「何を食べるか」で行き詰まったら、測るものを変えます
順番どおりに3か月やってHbA1cが動かない方、自己流の食事制限で体重だけが落ちて数値が変わらない方は、一度ご相談ください。当院では、食事・運動の設計の見直しから、インスリンの分泌能と抵抗性を見分ける採血、GLP-1受容体作動薬(食欲と血糖を調える消化管ホルモンの薬)を含む薬物療法まで、保険・自費どちらの可能性も含めて、医師がその方に合う方法をご案内します。対面のほか、オンライン診療にも対応しています。GLP-1治療の全体像はGLP-1ダイエット完全ガイドをご覧ください。
参考文献
- 消費者庁「保健機能食品について」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「ヘモグロビンA1c」
- 日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』第3章 食事療法
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- Tahara Y, Shima K. Kinetics of HbA1c, glycated albumin, and fructosamine and analysis of their weight functions against preceding plasma glucose level. Diabetes Care. 1995;18(4):440-447.(PMID 7497851)
- 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報「食後の血糖値の上昇を穏やかにする表示食品について」
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