人工甘味料は体に悪い?砂糖から置き換えても腎臓は守れなかった|腎臓内科・透析医が解説

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砂糖入りをやめてゼロカロリーに替えた——その時点で、多くの方は対策が一段落したと感じます。ところが腎臓を追いかけた大規模研究は、コーヒーに入れる甘味料でも、冷蔵庫のゼロカロリー飲料でも、砂糖からの置き換えでは慢性腎臓病のリスクが下がらなかったと報告しています。同じ研究が、下がる置き換え先も示しています。それは水でした。

目次

早見表——人工甘味料は種類ごとに扱いが違う

「人工甘味料」はひとつの物質ではありません。規制上の扱いも研究の蓄積量も種類ごとに違い、混ぜて語ると判断を誤ります。

甘味料 よく入っているもの いま言えること
アスパルテームゼロカロリー飲料、ガム2023年にIARCが「発がん性の可能性あり(グループ2B)」に分類。証拠は限定的とされ、JECFAは一日摂取許容量を体重1kgあたり0〜40mgのまま据え置いた
スクラロース
アセスルファムK
飲料、菓子、ドレッシングWHOは2023年、体重管理の手段として使わないよう勧告(条件付き)。スクラロースはサッカリンとともに、ヒト試験で血糖応答の悪化が示された
サッカリン卓上甘味料、漬物同じくWHO勧告の対象。ヒト試験で腸内細菌の変化と血糖応答の悪化が示された
エリスリトール砂糖代替の甘味料、低糖質の菓子糖アルコールのためWHO勧告の対象。ただし血中濃度が高い人ほど心血管イベントが多いとする2023年の報告がある
ステビア飲料、卓上甘味料植物由来だがWHO勧告の対象に含まれる。「天然だから対象外」ではない
人工甘味料と腎臓の図。砂糖入り飲料をゼロカロリー飲料に置き換えても慢性腎臓病の発症リスクは1.03倍と変わらず、水に置き換えると0.91〜0.93倍、果汁では0.90〜0.93倍に下がることを示す一覧
砂糖入り飲料をゼロカロリー飲料に替えても慢性腎臓病の発症リスクは1.03倍で動かない。水に替えると0.91〜0.93倍、果汁でも0.90〜0.93倍に下がる(12万7,830人・追跡中央値10.5年)。

早見表のいちばん下、エリスリトールとステビアの2行に注目してください。「天然由来だから安心」「糖アルコールだから別物」という線引きは、機関が引いている線とずれています。WHOの勧告は植物由来のステビアを含み、逆に糖アルコールのエリスリトールは外れる。外れた理由は安全だからではなく、カロリーを持つため定義上「非糖質甘味料」に当たらない、というだけです。

腎臓——「卓上の小さじ」と「ゼロカロリー飲料」で別々に確かめられている

人工甘味料と腎臓については、測っているものが違う2つの大規模研究があります。ひとつはコーヒーや紅茶に入れる卓上の甘味料、もうひとつはゼロカロリー飲料です。結論は同じ方向を向きました。

卓上の甘味料——15万6千人を13年

2026年8月、英国の大規模コホート研究から、人工甘味料の摂取量と慢性腎臓病(腎臓のろ過機能が年単位で失われていく病気)の発症を調べた報告が出ました。

  • 対象は15万6千人(平均56.8歳、女性54.5パーセント)。開始時に腎臓病や尿蛋白のある人は除外
  • 追跡期間の中央値は13.3年。この間に6,022人が新たに慢性腎臓病と診断された
  • 高摂取群は1日小さじ4杯以上(この群の平均は小さじ7.3杯)
  • 年齢・体格・喫煙・血圧・血糖・脂質・総エネルギー量などを調整して、高摂取群の発症リスクは摂取なし群の1.19倍(95パーセント信頼区間 1.08〜1.30)。腎機能の下がり方(eGFRの傾き)も高摂取群のほうが急だった

ここでこの研究が何を測ったのかを押さえてください。集計されたのは「コーヒー・紅茶・シリアルに入れた甘味料が何杯(何錠)か」という24時間の食事記録で、ゼロカロリー飲料を飲む人は「含まれる甘味料の量を正確に出せない」という理由で4万3千人あまりが解析から外されています。つまりこの「小さじ4杯」は、卓上の甘味料についての数字です。ペットボトル何本ぶんかを、この研究から読み替えることはできません。

そのうえで、この報告が実務に効くのは置換解析です。砂糖を同じ甘さになる量の卓上甘味料に置き換えたらどうなるかを推定した結果は、リスク比1.02倍(95パーセント信頼区間 1.01〜1.04)。1を下回りません。つまり、下がらなかった。

“Substitution analysis indicate no advantage to using AS instead of sugar to reduce the risk of CKD.”(置換解析は、慢性腎臓病のリスクを下げる目的で砂糖の代わりに人工甘味料を使うことに利点がないことを示している)——Wang J ほか, J Nutr Health Aging 2026;30(8):100917(PMID: 42379074)

ゼロカロリー飲料——12万7千人を10年

では、除外されたほうの飲料はどうか。2024年にJAMA Network Open誌で報告された、同じ英国のコホートを使った研究があります。12万7,830人を中央値10.5年追い、4,459人が慢性腎臓病を発症しました。

  • ゼロカロリー飲料が1日1杯を超える人は、飲まない人の1.26倍(1.12〜1.43)。1杯以下でも1.10倍(1.01〜1.20)
  • 砂糖入り飲料が1日1杯を超える人は1.19倍(1.05〜1.34)
  • 果汁(100パーセントジュース)では、はっきりした関連が出なかった
  • 砂糖入り飲料をゼロカロリー飲料に置き換えても、差は出なかった(1.03倍・0.96〜1.10)
  • いっぽう、砂糖入り飲料またはゼロカロリー飲料を1日1杯ぶん水に置き換えると0.93倍・0.91倍、果汁に置き換えると0.93倍・0.90倍に下がった

卓上の小さじでも、ペットボトルでも、甘いものを別の甘いもので置き換えた場合は動かず、甘くないものに置き換えた場合に下がる。測り方の違う2つの研究が、同じ形の答えを出しています。

どちらも観察研究であり、因果の証明ではありません。甘味料を多く摂る人はもともと体重・血圧・糖尿病の頻度が高く、統計で調整しきれない部分は残ります。言えるのは「甘味料が腎臓を壊す」ではなく、「置き換えればリスクが下がるはずだ」という期待が、この規模のデータでは支持されなかったということです。なお2026年の論文には訂正が出ていますが、訂正は引用文献2件の削除で、結論には影響しないと訂正文に明記されています。

体重については、WHOが2023年に答えを出している

非糖質甘味料を体重管理の手段として使わないよう、WHOは2023年5月のガイドラインで勧告しました。対象はアセスルファムK、アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、ステビアなど。長期の体重や生活習慣病リスクの低減につながる証拠が得られなかった、というのが理由です。

この勧告には、報道であまり触れられない条件が3つあります。推奨の強さは「条件付き」で、確実性の高い証拠に基づく強い勧告ではありません。糖アルコール(エリスリトールなど)と、歯磨き粉や薬に含まれるものは対象外です。そしてすでに糖尿病がある人は、対象から除かれています

三つ目は臨床的に大きい。だから外来では、糖尿病があってHbA1cを追っている方には砂糖入りからの置き換えをそのまま続けてもらい、体重だけが主訴の方には成分ではなく本数の話に切り替えます。WHOが「使うな」と言っているのは体重を落とす手段・病気を予防する手段としての甘味料であって、糖尿病のある方の日常の置き換えまで一律に否定してはいません。

血糖については、甘味料そのものより腸内細菌が動く

人工甘味料は血糖値を直接は上げません。カロリーがなく、血糖として吸収されないからです。問題はその先にあります。2022年にCell誌に載ったヒト試験では、健康な成人120人が2週間サッカリン・スクラロース・アスパルテーム・ステビアを摂ると腸内の細菌が変化し、とくにサッカリンとスクラロースの群で糖を処理する能力が悪化しました。その腸内細菌を無菌マウスに移植すると、マウス側にも同じ悪化が再現されています。

甘味料が血糖を上げるのではなく、甘味料が変えた腸内細菌が糖の処理を鈍らせる。2週間・120人の試験で日常の摂取を断罪はできませんが、「カロリーゼロだから代謝的にも無」という前提は無傷では残りませんでした。

「カロリーゼロ」の表示は、ゼロという意味ではない

日本の食品表示基準では、飲料は100mLあたり5kcal未満であれば「カロリーゼロ」「ノンカロリー」と表示できます。500mLのペットボトルなら、25kcal近く入っていても表示上はゼロです。

1本ならわずかな量です。ただ、透析の患者さんの飲水記録を見ていると、ゼロ表示の飲料は本数が増える。砂糖入りなら2本でやめていた人が、「ゼロだから」という理由で4本、5本と飲む。カロリーの差より、この行動の変化のほうが実害として大きいと私は見ています。ゼロ表示が自分の本数のブレーキを外していないかを確かめてください。

外来で見ている3つの落とし穴

甘味料の話で患者さんが損をするのは、たいてい成分そのものではなく、その周りで起きる行動の変化です。

1つ目、置き換えで「対策済み」にしてしまうこと。ゼロカロリーに替えた月からHbA1cも体重も動いていない、という方は珍しくありません。そこで満足すると、本丸の食事量と間食に手がつかないまま数か月が過ぎます。

2つ目、甘さの基準がリセットされないこと。人工甘味料の多くは砂糖の数百倍の甘味度を持ちます。置き換え続ける限り、強い甘さに慣れた舌はそのままです。減量目的の方に私が提案するのは、まず甘味料入りに替えて本数を保ち、次の1か月で甘くない飲みものの割合を増やす二段構え。いきなり無糖に振ると、たいてい3日で戻ります。

3つ目、腎臓が悪い人ほど飲む量が多いこと。のどの渇きから飲みものの量が増え、そこにゼロ表示が重なると、水分制限のある方では制限そのものが崩れます。腎機能が落ちている方の飲みものは、成分の議論より先に1日の総量を決めてください。

では何に替えるのか——ご自宅でできる置き場所の作り方

甘い飲みものを別の甘い飲みもので置き換える設計は弱い、というのがここまでの結論です。データが下がる方向を示したのは水と果汁でした。ご自身で組み替えるなら、順番があります。

  • まず本数を数える。成分ではなく本数です。1週間分をレシートで数えると、たいてい自己申告より多く出ます
  • 減らす対象は砂糖入りから。ここは置き換えでもゼロカロリーでもかまいません
  • 1日1杯を水に替える。研究で下がったのはこの置き換えです。全部を入れ替える必要はなく、まず1杯から
  • 甘いものは「飲む」から「食べる」へ移す。液体は満腹感を作らないまま量が入ります。同じ糖質量なら、噛むものに置くほうが総量は減ります
  • 腎機能に指摘のある方は、総量を先に決める。主治医から水分の指示が出ている場合は、その枠の中で組みます

ご自身の適正なエネルギー量と減量ペースは減量カロリー計算ツールで確認できます。血糖の上がりにくい食べ方は低GI食の完全ガイドに、健診の腎臓の欄の読み方はeGFRの数値の意味の記事にまとめました。腎臓の状態をご自身で確かめたい方は腎機能チェックツールもお使いください。

よくあるご質問

Q1. ゼロカロリー飲料は1日1本までなら問題ありませんか?

A. 「1本までなら安全」と示した研究はありません。飲料を調べた2024年の報告では、ゼロカロリー飲料が1日1杯以下の人でも、まったく飲まない人にくらべて慢性腎臓病の発症が1.10倍でした。1杯を超えると1.26倍です。少ないほど良い、という形の関係で、安全な本数の線が引けるデータではありません。

Q2. ラカントやエリスリトールも人工甘味料と同じ扱いですか?

A. 違う扱いです。エリスリトールは糖アルコールで、WHOの2023年の勧告の対象から外れています。ただし安全性が確認されたという意味ではありません。2023年にNature Medicine誌で、血中エリスリトール濃度が高い人ほど心血管イベントが多いという報告が出ています。別の物差しで見る必要がある、という位置づけです。

Q3. 腎臓が悪いと言われました。今日から甘味料をやめるべきですか?

A. やめる順番が逆になりがちです。腎臓の予後を決めるのは血圧・血糖・尿蛋白・鎮痛薬の使い方で、甘味料はその後ろ。私が外来でまず削るのは市販の鎮痛薬の常用と、塩分、そして甘い飲みもの全体の本数で、砂糖入りかゼロカロリーかは次の話にします。

Q4. アスパルテームが発がん性ありと報道されましたが、飲むのをやめるべきですか?

A. IARCが2023年に分類したグループ2Bは「発がん性の可能性がある」という区分で、証拠は限定的とされています。同時にJECFAは一日摂取許容量を体重1kgあたり0〜40mgのまま据え置きました。WHOの説明では、体重70kgの人がこれを超えるにはアスパルテームを200〜300mg含む缶飲料を1日9〜14本超える必要があります。

Q5. では何に替えれば腎臓のリスクは下がりますか?

A. 水です。2024年の報告では、砂糖入り飲料またはゼロカロリー飲料を1日1杯ぶん水に置き換えると発症が0.91〜0.93倍に下がりました。果汁への置き換えでも同じ方向でした。一方、砂糖入りをゼロカロリーに替えただけでは差が出ていません。置き換え先が甘くない飲みものであることが要点です。

飲みものを替えても数値が動かないなら、置き換えではなく設計の問題です

ゼロカロリーに替えて数か月、体重もHbA1cも動いていない。健診で腎臓の欄に印がついた。そういう段階でいらしてください。当院では、飲みものと間食の実態を洗い出したうえで、食事の設計から、必要に応じてGLP-1受容体作動薬(食欲と血糖を調える消化管ホルモンの薬)を含む薬物療法まで、保険・自費どちらの可能性も含めてご相談を受けています。腎機能の指摘がある方は尿検査の結果もお持ちください。対面のほか、オンライン診療にも対応しています。

まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院のご案内はこちら

参考文献

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この記事を書いた人

まさぼ内科 腎臓内科・透析医。日本内科学会 総合内科専門医/日本透析医学会。医籍登録番号 第537442号。杏林大学医学部医学科を卒業後、練馬綜合病院での研修を経て自治医科大学医学部附属病院 腎臓内科に所属。新小山市民病院、古河赤十字病院、芳賀赤十字病院などで腎臓内科の臨床経験を積んできました。慢性腎臓病(CKD)・糖尿病性腎症・透析・高血圧管理を専門とし、減塩・血圧・むくみの観点から、ダイエットと腎機能保護を両立する食事指導を行っています。

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