LDLコレステロール140・160・180の意味|薬が必要になる分かれ目を糖尿病専門医が解説

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健診結果のLDLコレステロールに印がついた——140mg/dL以上は「高LDLコレステロール血症」という診断がつく線ですが、そのまま薬が始まる線ではありません。同じ140でも、すぐに薬を勧める方と、数か月生活を変えて様子を見る方に分かれます。何がその分かれ目なのか、結論の早見表から始めます。

目次

早見表——LDLコレステロールの数値帯が意味すること

LDLコレステロールの判定は、日本動脈硬化学会の脂質異常症の診断基準で120mg/dLと140mg/dLを境に区切られます。それより上の帯は、数値そのものよりも「他に何を持っているか」で意味が変わります。

LDL-C 区分 次の一歩
120未満基準内高リスクの方は、この帯でも目標未達のことがある
120〜139境界域糖尿病・高血圧・喫煙があれば対応の対象
140〜159高LDL-C血症まず食事と運動。危険因子を数える段階
160〜179高LDL-C血症低リスクでも目標を外れる。受診を推奨
180以上高LDL-C血症家族性高コレステロール血症を疑う水準

単位はいずれもmg/dLです。「次の一歩」が数値だけで決まらないのは、LDLコレステロールが単独で病気を起こす数字ではなく、他の危険因子との掛け算で効く数字だからです。

LDLコレステロールとは何の数字か

LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ粒子に含まれる、コレステロールの量です。コレステロール自体は細胞膜やホルモンの材料で、体に必要なものです。問題になるのは余った分が血管の壁に入り込み、酸化して炎症を起こし、内側にプラークという盛り上がりを作ることです。これが動脈硬化で、心筋梗塞や脳梗塞の土台になります。「悪玉」と呼ばれるのは運び先の話であって、粒子そのものが毒という意味ではありません。

健診で測るLDLコレステロールには、直接測る方法と、総コレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪から計算で求める方法(フリードワルド式)の2通りがあります。この違いが、後述の落とし穴に関わってきます。

「140」は病名がつく線であって、薬が始まる線ではない

140mg/dLという数字の出どころは、日本動脈硬化学会による脂質異常症の診断基準です。厚生労働省 e-ヘルスネットにも同じ基準が掲載されています。

「LDLコレステロール 140mg/dL以上:高LDLコレステロール血症/120〜139mg/dL:境界域高LDLコレステロール血症」——厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症」

ここで押さえていただきたいのは、これは「診断基準」であって「治療開始基準」ではないということです。診断基準は病名をつけるための線で、治療をどうするかは別の物差しで決めます。健診の判定欄に印がつくのは前者、外来で薬の話になるかどうかは後者です。この2つが混ざっているために、「140を超えたら薬」という誤解が広まっています。

外来で140台の結果票を持ってこられたとき、私が最初に確認するのは数値そのものではありません。年齢、性別、喫煙の有無、血圧、血糖、HDLコレステロール、そして家族に若くして心筋梗塞や脳梗塞になった人がいるか——この7つです。同じ145mg/dLでも、この組み合わせ次第で方針は正反対になります。

あなたの目標値はいくつか——リスク区分で変わる

日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』では、まず冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)やアテローム血栓性脳梗塞を起こしたことがあるか(二次予防)、ないか(一次予防)で分けます。脳梗塞のうち、心房細動などが原因の心原性脳塞栓症は、この二次予防の区分には入りません。一次予防の方は、久山町研究にもとづくスコアで今後10年間に動脈硬化性の病気を発症する確率を計算し、2パーセント未満なら低リスク、2から10パーセント未満なら中リスク、10パーセント以上なら高リスクに分類します。その区分ごとに目標値が決まります。

区分 LDL-C目標 当てはまる方
一次予防・低リスク160未満若年で危険因子がない
一次予防・中リスク140未満年齢・血圧・喫煙などが重なる
一次予防・高リスク120未満糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患など
糖尿病で合併症あり100未満網膜症・腎症・神経障害・末梢動脈疾患または喫煙
二次予防100未満冠動脈疾患・アテローム血栓性脳梗塞の既往
二次予防で高リスク70未満急性冠症候群・家族性・糖尿病の合併など

糖尿病があると、心筋梗塞を起こしたことがなくても自動的に高リスクに入ります。この表がいちばん大きく効くのはここです。健診でLDLコレステロール135mg/dLと言われた方は、糖尿病がなければ境界域として様子を見る帯ですが、糖尿病があれば管理目標の120未満を15mg/dL超えていることになります。同じ135でも、片方は経過観察、もう片方は治療の対象です。血糖側の読み方はHbA1cの数値の意味と併せて見ていただくと、自分がどちらの物差しで測られているかがはっきりします。

日本動脈硬化学会は、この10年間の発症確率を計算できる一般向けのウェブアプリを公開しています。年齢・性別・血圧・脂質・血糖・喫煙を入れるだけで区分が出ます。ご自宅で結果票を手元に置いて、まず自分がどの区分かを確かめてください。

なぜ上がるのか——食べすぎだけではない

LDLコレステロールが上がる理由は、食事の内容、体重、遺伝的な体質、他の病気の4つに整理できます。

食事で効くのは、コレステロールそのものより飽和脂肪酸です。バター、脂身の多い肉、加工肉、洋菓子やパンに使われる油脂がここに入ります。卵を1日1個やめるより、これらを減らすほうが数値は動きます。

見落とされやすいのが閉経です。女性ホルモンのエストロゲンはLDLコレステロールを下げる方向に働くため、閉経を境に多くの女性でLDLコレステロールが上がります。40代まで基準内だった方が50代で急に140台になるのは、珍しいことではありません。このとき血糖も同時に動くことがあり、その関係は更年期と血糖値の記事にまとめました。

そして遺伝性の家族性高コレステロール血症があります。日本人のおよそ300人に1人とされ、未治療でLDLコレステロール180mg/dL以上、アキレス腱の肥厚などの腱黄色腫、親・きょうだい・子に家族性高コレステロール血症か若年発症の冠動脈疾患——この3つのうち2つで診断されます。生活習慣の問題ではないため、生活改善だけで様子を見続けるのは危険です。

見落としやすい落とし穴

LDLコレステロールは、次の3つの場面で読み違えが起きます。

1つ目、中性脂肪が高いときのLDL値は当てにならないことがある。計算で求めるフリードワルド式は、中性脂肪が400mg/dL以上だと成り立ちません。この場合、実際より低く出ることがあります。中性脂肪が高い方は、LDLコレステロールが基準内でもnon-HDLコレステロール(総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値。170mg/dL以上で高値)で評価します。中性脂肪の読み方は中性脂肪の数値の意味にまとめています。

2つ目、痩せているのにLDLが高い場合は、他の病気を疑う。甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、閉塞性の肝胆道疾患、ステロイドや一部の利尿薬などの薬剤でも上がります。体格にも食生活にも問題がないのにLDLコレステロールだけが高い方では、私は甲状腺機能(TSH・FT4)を一度測ります。これで説明がつく方が一定数おられ、その場合は原因の治療が先になります。

3つ目、LDLだけを見て脂肪肝を見逃す。LDLコレステロール、中性脂肪、ALTが同時に高い方は、肝臓に脂肪が溜まっている可能性が高くなります。脂質の数字だけを追って肝機能を見ないと、静かに進む肝障害を取り逃がします。脂肪肝の食事の記事で、この組み合わせの読み方を扱っています。

ご自身でできること——LDLは食事の「質」に反応する

LDLコレステロールは、食事の量より質に反応する数字です。ご自宅で始められることを、効きめの大きい順に並べます。

  • 飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換える——脂身の多い肉と加工肉を減らし、青魚、大豆製品、オリーブ油、ナッツに寄せる
  • 水溶性食物繊維を増やす——海藻、きのこ、大麦、オートミール、野菜。腸で胆汁酸を抱え込んで排泄させ、その材料としてコレステロールを消費させる
  • 腹囲と体重を落とす——内臓脂肪が減ると中性脂肪とnon-HDLコレステロールが動く。腹囲85cmの記事で扱った体重3パーセント減が起点になる

私の外来では、低リスクから中リスクの方には3か月後の再検査を約束して、この3つを先に試していただきます。それでも目標に届かないとき、初めて薬の話をします。逆に、家族性高コレステロール血症が疑われる方、すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こした方、糖尿病に合併症がある方には、初回から薬物療法を提案します。待っている時間のほうが損になるからです。

よくあるご質問

Q1. LDLコレステロールが140台です。薬を飲まずに下げられますか?

A. 他に危険因子がなく低リスクと判定される方であれば、まず3か月から6か月の食事と運動で様子を見るのが標準的な進め方です。飽和脂肪酸の多い食品を減らして不飽和脂肪酸に置き換え、食物繊維を増やす方法で、LDLコレステロールは下がる余地があります。ただし家族性高コレステロール血症が疑われる方や、すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こした方は、この段階から薬物療法を検討します。

Q2. 卵を控えればコレステロールは下がりますか?

A. 卵だけを控えても、期待したほどは下がらないことが多いです。血液中のコレステロールの大半は肝臓で作られており、食事から入るコレステロールの影響には個人差があります。厚生労働省 e-ヘルスネットも「食事中の飽和脂肪酸と血中のコレステロールとの関係は、食事中のコレステロールと血中のコレステロールとの関係よりも強く」と述べ、まず飽和脂肪酸、次いで鶏卵などの順で注意するよう勧めています。バター、脂身の多い肉、菓子パンや洋菓子に含まれる油脂を減らすほうが先で、卵を無制限に食べてよいという意味ではありません。

Q3. 健診の前日にお酒を飲みました。LDLコレステロールに影響しますか?

A. LDLコレステロール自体は前日の食事や飲酒で大きくは動きませんが、中性脂肪は跳ね上がります。中性脂肪が400mg/dL以上になると、計算でLDLコレステロールを求めるフリードワルド式が使えなくなり、検査値の意味が変わります。日本動脈硬化学会の診断基準では、基本的に10時間以上の絶食を空腹時とし、水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可としています。

Q4. 家族に若くして心筋梗塞になった人がいます。何か違いますか?

A. 大きく違います。家族性高コレステロール血症という遺伝性の体質があり、日本人のおよそ300人に1人と決してまれではありません。未治療のLDLコレステロール180mg/dL以上、アキレス腱の肥厚などの腱黄色腫、親・きょうだい・子に家族性高コレステロール血症または若年発症の冠動脈疾患がある、この3つのうち2つが当てはまると診断されます。生活習慣とは別の枠組みで、早い段階から薬物療法を考える対象です。

Q5. コレステロールの薬を始めたら、一生やめられないのですか?

A. やめられない薬ではありませんが、やめれば数値はおおむね元に戻ります。薬は体質そのものを変えるのではなく、飲んでいる間だけ数値を押し下げているためです。スタチンは肝臓でのコレステロール合成を抑え、エゼチミブは小腸での吸収を抑えるというように、薬によって効き方は違いますが、やめれば元の体質が表に戻る点は共通しています。一方で、減量や食事の変更で下がった分は薬を減らす根拠になります。私の外来でも、体重が落ちて中性脂肪と肝機能が改善した方では、薬の量を下げて経過を見ることがあります。自己判断で中断せず、主治医と減量の相談をしてください。

140という数字だけでは、まだ何も決まっていません

LDLコレステロールが140を超えている方、糖尿病や高血圧があってLDLコレステロールが120台の方、痩せているのに数値だけが高い方は、一度ご相談ください。当院では、脂質の数値だけでなく血糖・肝機能・腹囲を突き合わせて、その方の目標値がいくつなのかを決めるところから始めます。体重が関わっている場合は、食事・運動の設計から、GLP-1受容体作動薬(食欲と血糖を調える消化管ホルモンの薬)を含む薬物療法まで、保険・自費どちらの可能性も含めてご案内します。対面のほか、オンライン診療にも対応しています。GLP-1治療の全体像はGLP-1ダイエット完全ガイドをご覧ください。

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この記事は「健診の数値の読み方」シリーズの1本です。健診結果の各項目を数値帯ごとに読み解く記事をシリーズ一覧にまとめています。気になる項目をその場で確かめたい方は健診結果インタプリタもお使いください。

参考文献

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この記事を書いた人

まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院 代表理事 / 院長。日本糖尿病学会 糖尿病専門医/日本糖尿病協会 糖尿病認定医/日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医/日本内科学会 認定医制度審議会 病歴要約評価委員/日本老年医学会 老年科専門医・指導医/日本抗加齢医学会 抗加齢専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター。医籍登録番号 第486214号。国立国際医療研究センター国府台病院で内科研修を始めた後、糖尿病内科の道に進み、現在は最新の薬物療法(GLP-1作動薬・チルゼパチド等)と、栄養・運動・漢方を組み合わせた包括的な糖尿病・代謝診療を実践しています。

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