痩せていても糖尿病になることがあります。インスリンを出す力が弱いと、太っていなくても血糖値は上がります。日本人男性の糖尿病予備群を調べた研究では、「太っていないのに血糖が高めのタイプ」の発症しやすさは、数値がそろって低いタイプの9.81倍でした。ただし、このタイプの全員が痩せ型という意味ではありません。痩せている人の対策は、さらに体重を落とすことではなく、食後の血糖を確かめ、食事を減らしすぎず、筋肉を保つことです。意図せず体重が減ってきた場合は、早めに検査を受けてください。
痩せ型糖尿病は正式な病名ではない
痩せ型糖尿病は医学上の正式な病名ではなく、太っていない人に起きる糖尿病を指す一般的な呼び方です。肥満の基準であるBMI 25 kg/m²に届かない人にも、糖尿病は起こります。多くは2型糖尿病ですが、緩徐進行1型糖尿病が紛れていることもあります。体格だけで種類を決めることはできません。
痩せているのに血糖値が高くなる原因
痩せている人の高血糖には、インスリンを出す力の弱さ、筋肉の少なさ、隠れた脂肪、家族歴などが関わります。インスリンが十分に出なければ、食後の血糖が上がりやすくなります。筋肉が少なく、体を動かす機会も少ない場合は、血糖を取り込みにくくなります。
見た目は痩せていても、内臓脂肪や脂肪肝がある人もいます。BMIだけで判断せず、腹囲や肝機能、中性脂肪も見ます。隠れ肥満についての記事でも、体重と体脂肪の違いを説明しています。
痩せた若い日本人女性を調べた研究では、耐糖能異常のある人は、食後早い時間のインスリン分泌が低い結果でした。体力とインスリンの効きも低い結果でした。
日本人は太っていなくても糖尿病になる
太っていなくても糖尿病になる背景には、インスリンを出す力と効きやすさの両方が関わります。東アジア系を含む74コホート、3,813人の解析では、両者の関係に集団間の違いが見られました。著者らは、東アジア系が遺伝的に糖尿病になりやすい可能性を指摘しています。
この結果だけで、個人の発症を予測することはできません。体格が細くても、健診結果票の空腹時血糖とHbA1cの欄を見てください。
早見表|痩せている人の高血糖で考えること
痩せている人の高血糖は、結果票の数字と体重の変化を手がかりに、原因を分けて確かめます。
| タイプ | 特徴 | 結果票やきっかけで分かること | 外来で行う確認 |
|---|---|---|---|
| インスリンを出す力が弱いタイプ(2型) | 食後に血糖が上がりやすい | 空腹時血糖は正常でもHbA1cが高め、または家族歴がある | 75g経口ブドウ糖負荷試験や食後血糖 |
| 隠れた内臓脂肪・脂肪肝があるタイプ(2型) | BMIは正常でも腹囲や検査値が高め | 腹囲、ALT、中性脂肪 | 腹囲と肝機能を確認 |
| 緩徐進行1型糖尿病 | 半年〜数年かけてインスリン分泌が低下 | 初めは2型糖尿病に見えることがある | 自己抗体の血液検査を検討 |
| 急に体重が減っている | 血糖の悪化や膵臓の病気の可能性 | 意図しない体重減少、HbA1cの急な上昇 | 早めに診察し、画像検査も検討 |
私は痩せている人の高血糖を診る初診で、まず抗GAD抗体を測るかどうか決めます。緩徐進行1型糖尿病を2型糖尿病として治し続けないためです。
痩せ型糖尿病の症状は喉の渇きや体重減少
痩せ型糖尿病の症状は、血糖が高い状態が続いたときの喉の渇き、尿の増加、疲れやすさ、体重減少などです。一方、症状がなく、健診で初めて見つかる人もいます。喉の渇きと糖尿病の記事でも、症状の見方を説明しています。
痩せたのに血糖値が下がらないときは何を疑うか
意図せず体重が減るのに血糖値が上がる場合は、血糖の悪化や別の病気を考えます。高血糖が続くと尿に糖が出て、体重が減ることがあります。膵臓の病気が隠れている場合もあります。血糖の急な悪化と膵臓の病気の記事も参考にしてください。
私は、何もしていないのに体重が減り、HbA1cも上がってきた人では、次の予約を待たずに検査を急ぎます。体重を落とす指導を始める場面ではありません。
痩せ型の糖尿病予備群はどれくらい危ないのか
糖尿病予備群の発症しやすさは、体重だけでは決まらず、血糖などの検査値によって違います。J-DOIT1の解析では、空腹時血糖100〜125 mg/dLの日本人男性2,172人を5年間追跡しました。この範囲には、正常高値とされる100〜109 mg/dLの人も含まれます。
参加者はBMI、空腹時血糖、ALT、non-HDLコレステロールで3タイプに分けられました。数値がそろって低いタイプは1,149人で、糖尿病になった割合は年間0.70%でした。太っていてインスリンが効きにくいタイプは581人で年間2.73%、前者の3.95倍です。太っていないのに血糖が高めのタイプは442人で年間6.73%、前者の9.81倍でした。
最後のタイプは、太っているタイプほど肥満ではなく、空腹時血糖が最も高い集団です。全員が痩せ型だったという意味ではありません。また、研究の対象は男性だけで、空腹時血糖で選んだ予備群です。
電話による生活習慣の支援では、糖尿病になる人が減ったのは太っているタイプで、数値は0.59倍でした。太っていないのに血糖が高めのタイプでは、今回の分析で有意な差は示されませんでした。糖尿病情報センターの予備群向け資料には減量目標もありますが、私は痩せている人へそのまま当てはめません。私はまず食事量を聞き、筋肉の減少がないかを見ます。
痩せ型の女性は血糖に何を気をつけるか
痩せた若い女性でも、食後の血糖を処理しにくい状態が見つかることがあります。日本人の研究では、痩せた若い女性98人と標準体重の女性56人に75g経口ブドウ糖負荷試験を行いました。耐糖能異常はそれぞれ13.3%と1.8%でした。耐糖能異常のある痩せた女性では、食後早い時間のインスリン分泌、体力、インスリンの効きが低い結果でした。
日本肥満学会のワーキンググループは、20代女性の約20%がBMI 18.5 kg/m²未満の低体重であると示しています。低体重・低栄養が耐糖能異常などにつながるとして、「女性の低体重/低栄養症候群」を提唱しました。痩せている女性に、さらに食事を減らす助言はできません。
痩せ型の男性にも予備群はあるのか
男性でも、太っていないことだけを理由に糖尿病予備群の指摘を見過ごすことはできません。J-DOIT1の男性を対象とした解析では、「太っていないのに血糖が高めのタイプ」に442人が分類されました。ただし、これは痩せ型の男性442人という意味ではありません。空腹時血糖に加え、HbA1cや体重の変化も見ていきます。
痩せている人も血糖値とHbA1cで調べる
痩せている人の糖尿病も、血糖値とHbA1cを組み合わせ、必要なら食後の血糖を調べて見つけます。空腹時血糖が正常でも、食後だけ高くなる人がいます。糖尿病情報センターは次のように説明しています。
「空腹時血糖が正常でも、食後血糖が高い「隠れた糖尿病」があります。」
出典:糖尿病情報センター「糖尿病は早く見つけましょう」(更新日 2026年4月3日)
糖尿病型の数値には、空腹時血糖126 mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上、75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値200 mg/dL以上、随時血糖200 mg/dL以上があります。糖尿病型が同じ日または別の日に2つ確認されると、糖尿病と診断されます。健診は空腹時血糖とHbA1cが中心です。空腹時と食後の血糖の違い、HbA1cの読み方も確認できます。
私は、空腹時血糖が正常でもHbA1cだけ高めの痩せた人や、家族歴のある人には、75g経口ブドウ糖負荷試験を提案します。食後の上がり方を見て、次の検査や治療を決めます。
緩徐進行1型糖尿病の可能性はあるのか
緩徐進行1型糖尿病は、半年〜数年かけてインスリンを出す力が低下する病気です。初めは2型糖尿病のように見え、インスリン注射なしで血糖を抑えられることもあります。その後、血液検査で自己抗体が見つかり、病気の種類が分かる場合があります。
このタイプが疑われる場合、膵臓に負担をかけるような飲み薬は推奨されません。インスリン治療などで膵臓を守る治療を始めることが望ましいとされています。どの検査を行うかは、血糖と体重の経過を見て外来で判断します。
痩せ型糖尿病の食事はどう整えるか
痩せている人の食事では、量を極端に減らすより、筋肉を保ちながら食べ方を整えます。主食を抜いたり、食事全体を減らしすぎたりすると、筋肉も減ります。毎食たんぱく質をとり、食物繊維や食べる順番にも目を向けます。
私は食事の相談で、最初に「主食を抜いていないか」「食事量を減らしすぎていないか」を聞きます。そのうえで、毎食のたんぱく質をどう足すかを一緒に考えます。
筋トレは痩せ型糖尿病の筋肉を保つ
筋トレは、血糖を取り込む主な場所である筋肉を保ち、増やすための方法です。痩せた若い女性の研究では、耐糖能異常のある人は体力とインスリンの効きが低い結果でした。有酸素運動と筋トレを組み合わせ、続けられる動き方を考えます。
私は運動の相談で、階段を使う機会や、しゃがむ動作が普段どれだけあるかを聞きます。そこから、脚の大きな筋肉を使う場面を増やします。体重が増えても腹囲が増えていなければ、筋トレを止めるようには言いません。
太れば血糖値はよくなるのか
痩せている人が脂肪で体重を増やしても、血糖がよくなるとは限りません。内臓脂肪が増えれば、血糖には逆効果になることもあります。目を向けたいのは筋肉です。BMI 18.5 kg/m²未満の低体重や低栄養がある場合は、食事量と体重の変化も診察で聞きます。
痩せ型糖尿病は治るのか、薬は必要か
痩せ型糖尿病の治療は、原因を見分け、血糖を正常に近い範囲に保てる状態を目指すものです。「治る」と一律には言えません。インスリンを出す力が弱い人には、その力を補う、または守る治療を検討します。緩徐進行1型糖尿病が疑われる場合は、インスリン治療も選択肢です。食事、運動、薬の必要性は、検査結果を見て決めます。
見落としやすい落とし穴
痩せている人の高血糖では、体格や空腹時の数値だけで安心し、必要な確認を逃すことがあります。
BMIが正常だから、血糖の指摘を気にしない。糖尿病は太っていない人にも起こります。健診結果票の血糖値とHbA1cを確認してください。
空腹時血糖が正常だから大丈夫と思う。食後の血糖が高い場合は、空腹時の結果だけでは見つかりません。HbA1cや食後の検査も判断材料です。
予備群と言われ、さらに食事を減らす。痩せている人では筋肉まで減るおそれがあります。食事量を減らす前に、何を食べているかを振り返ってください。
ご自身でできること
ご自身でできる確認は、健診結果票と体重の変化を並べて見ることです。空腹時血糖とHbA1cを確認し、家族に糖尿病の人がいるかも思い出してください。体重は月1回記録し、意図せず減っていないかを見ます。階段を使い、しゃがむ動作で脚の筋肉を動かします。受診時には結果票と体重の記録を持参すると、変化を伝えやすくなります。
よくあるご質問
痩せている人の高血糖では、健診の案内、家族歴、検査についても疑問が生じます。
Q1. 健診で糖尿病予備群と言われました。BMI 21 kg/m²でも生活指導の対象になりますか?
A. BMI 21 kg/m²でも、腹囲が基準以上なら特定保健指導の対象になり得ます。まず腹囲・BMIで対象を拾い、そのうえで血糖などのリスクを数えます。腹囲もBMIも基準未満なら、血糖が高めでも対象にはなりません。結果票の血糖値とHbA1cを見て、自分で受診を決めてください。
Q2. 痩せ型の糖尿病は遺伝しますか?
A. 家族歴は血糖が高くなる要因の一つですが、遺伝だけで決まるわけではありません。家族に糖尿病の人がいる場合は、健診の血糖値とHbA1cをあわせて見ます。
Q3. 甘いものを食べないのに血糖値が高いのはなぜですか?
A. 甘いものを控えていても、インスリンを出す力が弱ければ血糖は上がります。主食や飲み物を含めた食事の内容に加え、空腹時と食後の血糖も手がかりになります。
Q4. 抗GAD抗体の検査はどんな人が受けますか?
A. 痩せている、若い、血糖が急に上がったといった経過を見て、緩徐進行1型糖尿病が疑われる場合に医師が検討します。初めは2型糖尿病のように見えることもあるため、体重と血糖の変化を診察で伝えてください。
Q5. 筋トレを始めて体重が増えたら、血糖管理にはよくないですか?
A. 体重の数字だけでは判断できません。痩せている人では、筋肉を増やすことと、内臓脂肪を増やさないことを分けて考えます。健診結果や体重の変化を見て判断します。
痩せている人の高血糖を当院で相談するとき
痩せている人の高血糖の相談では、健診結果、体重の変化、食事の内容を確認します。空腹時血糖が正常でもHbA1cが高い場合や、意図せず体重が減る場合は、その経過をお伝えください。必要な検査と治療を診察で考えます。保険・自費どちらの可能性も含めてご相談ください。
まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院のご案内
受診時には、健診結果票と体重の記録をお見せください。
当院では、保険診療で糖尿病・生活習慣病を診ています。担当医は小林 正敬(日本糖尿病学会 糖尿病専門医/日本内科学会 総合内科専門医)です。対面診療とオンライン診療に対応しています。
参考文献
本文で触れた検査、研究、診療情報の出典です。
- 糖尿病情報センター「糖尿病は早く見つけましょう」
- 糖尿病情報センター「1型糖尿病ってどんな病気?」
- 糖尿病情報センター「糖尿病予備群といわれたら」
- Sakane N, et al. Identification of distinct metabolic subtypes among Japanese men with prediabetes: a data-driven cluster analysis from the J-DOIT1 study. Diabetol Int. 2026;17(3):62. PMID: 42440651
- 糖尿病ネットワーク「同じ『糖尿病予備群』でも発症のしやすさに大差 日本人男性を分析」(2026年10月9日)
- Sato M, et al. Prevalence and Features of Impaired Glucose Tolerance in Young Underweight Japanese Women. J Clin Endocrinol Metab. 2021;106(5):e2053-e2062. PMID: 33512496
- Tamura Y, et al. Female Underweight/Undernutrition Syndrome (FUS). J Obstet Gynaecol Res. 2026;52(2):e70201. PMID: 41721462
- Kodama K, et al. Ethnic differences in the relationship between insulin sensitivity and insulin response. Diabetes Care. 2013;36(6):1789-96. PMID: 23704681
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」第3編(2007年)
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