冬の血糖値・HbA1cはなぜ上がる?冬太り・夏やせの幅が大きい人ほど腎臓の働きが落ちやすい

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冬に血糖値やHbA1cが上がるのは、年末年始の食事や、寒くて体を動かす機会が減ることなどが理由として考えられています。日本人の糖尿病の人を調べた研究では、HbA1cは3月ごろに高く、8〜9月ごろに低くなり、差は0.2〜0.4ポイントほどでした。慶應義塾大学などのグループが全国の糖尿病の専門医療機関に通う2型糖尿病の6,700人の記録を調べた研究では、1年の中で体重が大きく変わる人ほど腎臓の働きが落ちやすい結果でした。冬に増えて夏に戻るからと見過ごさず、前年の冬のHbA1cと体重に比べてどうかを確かめましょう。

目次

冬に血糖値・HbA1cが上がるのはなぜか

冬は寒くて外に出る機会が減り、年末年始には食べる量が増えやすくなります。こうした食事と運動の変化が、血糖値やHbA1cが上がる理由として考えられています。体を動かすと筋肉が糖を使います。筋肉が増えると糖を取り込みやすくなり、脂肪が減るとインスリンも効きやすくなります。

米国などで年末年始の時期を調べた研究では、大人の体重が0.4〜0.9 kg増えていました。23人を調べた別の研究では、体重が増えたのは、体を動かして使うエネルギーが減ったことよりも、食べる量が増えたことによると考えられました。日本人で調べた数字ではありません。冬の食事の工夫は季節の食事の記事で解説しています。

HbA1cは冬と夏でどのくらい違う?

日本人の糖尿病の人は、HbA1cが冬から春に高く、夏から秋に低くなる傾向があります。糖尿病の人2,511人の検査を10年間調べた研究では、3月が最も高く8月が最も低く、差は0.2ポイントあまりでした。この研究では、夏から秋のほうが高い人もいました。

別の研究では、高齢の2型糖尿病の人86人について、3月と9月のHbA1cを比べました。この研究では、3月のHbA1cが3年とも9月より0.3〜0.4ポイントほど高い値でした。HbA1cの意味や生活を変えてから数値が下がるまでの話はHbA1cの見方で解説しています。

冬太り・夏やせで体重の差が大きい人ほど腎臓の働きが落ちやすかった

慶應義塾大学などのグループが、全国の糖尿病の専門医療機関に通う2型糖尿病の6,700人の記録を調べました。この研究では、毎月のBMIから、一人ずつ1年で最も重いときと最も軽いときの差を調べています。BMIで見た差は平均0.4 kg/m²でした。全員の値をまとめると、2月ごろが最も重く、7月ごろが最も軽い結果でした。

腎臓の働きを表すeGFRが40%以上下がった人は779人いました。1年の体重の変化が特に大きかった人たちは、変化が特に小さかった人たちに比べ、eGFRが40%以上下がる危険が約1.7倍でした(ハザード比1.72)。体重の変化が特に大きかった人たちは、eGFRが1年に平均1.55 mL/分/1.73m²下がりました。変化が特に小さかった人たちでは平均0.98 mL/分/1.73m²で、大きかった人たちのほうが早く下がっていました。最初のBMIが25 kg/m²未満の、太っていない人でも同じ傾向でした。この研究は、体重の変化を小さくした人の腎臓が守られるかまでは調べていません。

冬に増えた体重が夏に戻れば心配ない、とは言い切れません。

「特に体重が冬に増え夏に減るという季節的な変動はありふれた現象であり、これまで概ね無害であると考えられてきました。」— 慶應義塾大学医学部「今月のサイエンス」2026年7月(衛生学公衆衛生学教室)

糖尿病で腎臓が傷んでも、早い段階では症状がないことが多くあります。冬の体重が年々増えているなら、尿アルブミンとeGFRの検査を予定より早く受けてください。尿たんぱくとアルブミン尿の違いは尿たんぱくとアルブミン尿の見方で、eGFRの数値はeGFRの見方で解説しています。

早見表|季節ごとに起きやすいこと

冬から春はHbA1cと体重が高くなりやすく、夏から秋は低くなりやすい時期です。

時期 HbA1c 体重 よくある背景 その時期に見ること
11〜1月(年末年始)冬に向けて高くなりやすい冬に高くなる傾向年末年始の食事、外出の減少体重の記録と食事・活動の変化
2〜3月3月に高い傾向2月ごろに重い傾向冬の食事と動く量の変化前年の同じ月の値と体重
4〜6月3月から夏に向けて低くなる傾向冬から夏に向けて軽くなる傾向—冬に薬を増やした人の低血糖
7〜9月8〜9月に低い傾向7月ごろに軽い傾向—冬との体重差と血糖値の下がりすぎ

冬のHbA1cは前年の同じ季節と比べる

冬にHbA1cが上がったときは、前年の同じ月との差で上がり方を確かめます。冬の外来で0.2〜0.3ポイント上がった人には、私は前年の同じ月と春の値、体重の記録を並べます。毎年と同じくらいの上がり方なら、すぐに薬を増やすかどうかは、食事や体を動かす量も聞いて決めます。薬を増やさない場合は、変えることを一つ決めて、次の診察で結果を確かめます。

前年の冬よりHbA1cが大きく上がった方や、冬の体重が年々増えている方には、診察で薬を見直し、尿アルブミンとeGFRを予定より早く調べます。冬に薬を増やした人は、春から夏に血糖値が下がりすぎることがあります。その時期の診察で症状と血糖値を確かめ、薬を減らす必要があるか判断します。高齢の人のHbA1cの目標と下げすぎは高齢者のHbA1cの目標で解説しています。

血糖値は気温で変わる?夏と冬の違い

気温もHbA1cの季節による違いに関係しているかもしれません。日本人の糖尿病の人を調べた研究では、夏から秋にHbA1cが低くなる人が多くいました。研究した医師たちは、寒さで体の働きが変わることも関係しているのではないかと考えています。

ただし、この研究で調べたのはHbA1cの季節による違いです。血糖値が上がったり下がったりするのは、気温だけのせいとは言えません。

冬に寒気や冷や汗が出たら血糖値を確かめる

冬に寒気や冷や汗が出たときは、寒さだけのせいと決めつけないでください。低血糖でも、寒気、冷や汗、手足のふるえが出ることがあります。血糖値が60〜70 mg/dL未満になると冷や汗や動悸、手足のふるえなどが出ることがあり、50 mg/dL未満では眠くなったり、意識がはっきりしなくなったりすることがあります。

インスリンや一部の飲み薬を使っている人は、測れるときは血糖値を確認してください。測れなくても低血糖の症状があれば、すぐに吸収の速い糖分(砂糖や砂糖を多く含むジュースなど)をとってください。通常5分以内に症状は良くなりますが、30分ほどで再び低血糖になることがあります。ぼんやりする、ろれつが回らない、意識がなくなる、けいれんなどがあれば、すぐに医療機関へ連絡してください。低血糖を繰り返している人や高齢の人では、症状を自覚しないこともあります。

見落としやすい落とし穴

「春に戻るから」と冬の上昇を見過ごす。春にHbA1cが下がって安心しても、この冬の値が去年の冬より高ければ、糖尿病そのものが悪くなっている可能性があります。診察では、体重と腎臓の検査結果も合わせて確かめます。

体重の年平均だけで安心する。私は外来で、一番重い月と一番軽い月の体重も聞きます。平均が変わらなくても、冬に2〜3 kg増えて夏に戻すことを繰り返す人がいるからです。

冬に増やした薬を夏までそのままにする。春から夏は血糖値が下がりすぎて低血糖になることがあるため、診察で薬の量を見直します。

ご自身でできること

冬の体重の変化は、11月から週に1回、同じ条件で量って記録すると分かりやすくなります。年末年始に入る前に、体重をどこまでに抑えたいか決めておきましょう。私は年末年始の前の診察で、休みの間に体重を量る日を決めてもらいます。

寒い日は家の中で動く、階段を使う、買い物へ歩いて行くなど、続けられる方法を選んでください。会食した翌日は、主食や間食を食べ過ぎないようにしましょう。健診や通院の結果を受け取ったら、体重とHbA1cに加えて、尿アルブミンとeGFRの結果も確かめてください。

よくあるご質問

Q1. ウォーキングで冬のHbA1cは下がりますか?

A. 歩くと筋肉が糖を使い、血糖値を下げる助けになります。筋肉が増えると糖を取り込みやすくなり、脂肪が減るとインスリンも効きやすくなります。寒い日は屋内で歩くなど、続けられる方法を選んでください。

Q2. 冬だけ薬を増やすことはありますか?

A. あります。冬にHbA1cが上がったとき、薬を増やすかどうかは前年の冬と春の値、体重の変化、低血糖の危険を確かめて決めます。冬に薬を増やした場合は、春から夏の診察で減らす必要がないか確認します。

Q3. 冬に体重が1〜2 kg増えるのは普通ですか?

A. 増えた量だけでは判断できません。米国などで年末年始の時期を調べた研究では、体重が0.4〜0.9 kg増えていました。日本人で調べた数字ではありません。前年の冬より重くなっていないか、夏にどれくらい戻るかを確かめてください。

Q4. 夏にHbA1cが下がったのは治療がうまくいったからですか?

A. 夏に下がりやすい季節の動きもあるため、その値だけでは判断できません。前年の同じ時期のHbA1cと体重を比べると、いつもの夏より下がったかが分かります。

Q5. 糖尿病でない人も冬に血糖値は上がりますか?

A. 糖尿病でない人にも同じ動きがあるかは、この記事で紹介した研究からは分かりません。HbA1cの季節差も、体重の変化と腎臓の関係も、糖尿病の人を対象に調べた結果です。

冬の血糖値・体重と腎臓の検査を当院に相談するとき

診察では、今年の冬に上がったHbA1cと体重を、前年の同じ季節の記録と比べます。健診結果や尿アルブミン・eGFRの結果もお持ちください。冬に上がったHbA1cと体重、腎臓の検査について、保険・自費どちらの可能性も含めてご相談ください。

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受診時には、健診結果票と体重の記録をお見せください。

当院では、保険診療で糖尿病・生活習慣病を診ています。担当医は小林 正敬(日本糖尿病学会 糖尿病専門医/日本内科学会 総合内科専門医)です。対面診療とオンライン診療に対応しています。

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参考文献

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この記事を書いた人

まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院 代表理事 / 院長。日本糖尿病学会 糖尿病専門医/日本糖尿病協会 糖尿病認定医/日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医/日本内科学会 認定医制度審議会 病歴要約評価委員/日本老年医学会 老年科専門医・指導医/日本抗加齢医学会 抗加齢専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター。医籍登録番号 第486214号。国立国際医療研究センター国府台病院で内科研修を始めた後、糖尿病内科の道に進み、現在は最新の薬物療法(GLP-1作動薬・チルゼパチド等)と、栄養・運動・漢方を組み合わせた包括的な糖尿病・代謝診療を実践しています。

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