健診結果票の尿蛋白の欄に(±)や(+)がついている。体はどこも痛くないし、去年も同じだった——尿蛋白は、腎臓のフィルターから本来もれないはずのたんぱく質がもれているサインです。ただし、病気でなくても出る場面がいくつもあり、記号の重さは「どの健診で受けたか」によっても変わります。そして(±)は、多くのページが書くような「限りなく陰性」ではありません。尿試験紙の添付文書には(±)以上は有意なたんぱく尿を示唆すると書かれています。記号の読み方、放置していい場面とそうでない場面、再検査で何をするかを、早見表から順に整理します。
早見表——尿蛋白の記号と、次にやること
尿蛋白は、尿に試験紙を浸して色の変化でたんぱく質の濃さを段階表示する検査です。試験紙の検出感度はアルブミンで15〜30mg/dLで、この濃さを超えると色が変わり始めます。
| 尿蛋白 | 尿の中のたんぱく(目安) | 意味 | 次の一歩 |
|---|---|---|---|
| (−) | 試験紙が色を変える濃さに届かない | 健常な範囲 | 翌年も健診を続ける |
| (±) | 検出感度ぎりぎりの微量 | 有意なたんぱく尿を示唆する境界 | 生活習慣の見直し+別の日に再検査 |
| (1+) | およそ30mg/dL | 1日500mg以上に相当しうる異常尿 | 医療機関の受診を(判定は下の表を参照) |
| (2+)以上 | それより濃い | 高度の蛋白尿に相当する濃さ | 受診。腎臓専門医への紹介対象 |
「1日500mg以上(試験紙で30mg/dL以上)のたんぱくが排泄される場合、臨床的な異常尿といえます」——これは尿試験紙の添付文書そのものに書かれている一文です。(1+)は、軽い印ではありません。
尿蛋白とは何の数字か——腎臓のフィルターから漏れたたんぱく
尿蛋白とは、腎臓のろ過装置を通り抜けて尿に出てしまったたんぱく質のことです。腎臓には糸球体という毛細血管の塊があり、血液から老廃物と水分をこし取って尿を作ります。たんぱく質は体に必要な成分なので、健康な糸球体はこれをほとんど通しません。わずかに漏れた分も、その先の尿細管で回収されます。
健康な方の尿にもごく微量のたんぱくは含まれており、その上限は1日150mg以下です。日本腎臓学会は、1日150mg以上を臨床的に蛋白尿と診断するとしています。つまり尿蛋白の検査は「漏れているかどうか」ではなく「漏れが許容量を超えているかどうか」を見ています。
漏れ方には型があります。糸球体のフィルターが傷んで漏れる糸球体性、フィルターは無事でも回収役の尿細管が傷んで漏れる尿細管性、腎臓は正常なのに血液側のたんぱくが増えすぎて処理しきれない腎前性、そして膀胱や尿道など尿路の病気に伴うものです。日本腎臓学会も病的な蛋白尿としてこの4つを挙げています。健診で問題になるのはほとんどが糸球体性ですが、試験紙だけでは区別できません。
(±)はどういう意味か——「限りなく陰性」ではない
(±)は、試験紙の検出感度ぎりぎりの量のたんぱくが尿に出ている状態です。検索するとよく「限りなく陰性に近い」という説明が出てきますが、尿試験紙の添付文書は逆のことを書いています。
「“±” 以上の結果を示したときは、有意なたん白尿であることを示唆します。」——尿試験紙 添付文書(医薬品医療機器総合機構 掲載)
慢性腎臓病の重症度分類でも、(±)は「正常」ではなく軽度蛋白尿(A2区分)に置かれています。定量すると尿蛋白/クレアチニン比で0.15〜0.49g/gCrに当たる帯です。
ただし、同じ添付文書には「尿の比重が高い場合、生理的なアルブミン濃度でも“±”と判定されることがある」とも書かれています。朝いちばんの濃い尿は、それだけで(±)に振れうるということです。だから(±)は、1回で決めつけることも、1回で捨てることもできません。答えは「別の日に、条件を変えてもう一度」です。
厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム」は、(±)に対する対応をこう定めています。「尿蛋白弱陽性は、確定的ではありませんが、慢性腎臓病の存在を示唆するサインです。あなたは慢性腎臓病の可能性がありますが、尿蛋白は少ないため、医療機関を受診する必要はありません」——受診は不要、ただし生活習慣の改善に取り組むこと。これが公的な位置づけです。
(1+)と言われたら——判定の重さは、受けた健診の種類で変わる
ここは意外と知られていません。同じ(1+)でも、特定健診と人間ドックでは判定の重さが違います。
| 受けた健診 | (±) | (1+) | (2+)以上 |
|---|---|---|---|
| 特定健診など (血清クレアチニン未測定) | 生活習慣の改善を | 医療機関の受診を | 医療機関の受診を |
| 人間ドック (eGFRを同時測定) | 要再検査・生活改善 | 要再検査・生活改善 | 要精密検査・治療 |
日本人間ドック・予防医療学会は、自らの判定区分が厚生労働省のプログラムに準拠していると明記したうえで、「ただし人間ドックでは腎臓検査eGFRを同時実施しているため、上記より1段階緩い判定になっています」と説明しています。腎機能の数字が同じ紙に載っているかどうかで、たんぱく1項目に背負わせる重さが変わるということです。
これは実務上とても重要です。特定健診の結果票で(1+)が出ていて、しかも血清クレアチニンの欄が空白なら、その紙は「受診してください」と言っています。腎機能が分からないまま(1+)を1年持ち越すのは、公的なプログラムが想定していない扱いです。腎臓の数値そのものの読み方はeGFR 60・45・30の意味にまとめています。
(2+)(3+)は何が違うのか
(2+)(3+)は、尿に出ているたんぱくの濃さの段階です。試験紙の色調表は濃くなるほど上の段階を示しますが、重症度の物差しではありません。同じ漏れ方をしていても、尿が濃ければ段階は上がり、水をたくさん飲んだあとの薄い尿では下がります。
それでも(2+)以上には明確な線が引かれています。日本腎臓学会のCKD診療ガイドは、かかりつけ医から腎臓専門医へ紹介すべき条件の1つ目に「高度の蛋白尿(尿蛋白/Cr 比 0.50g/gCr 以上、または 2+以上)」を挙げています。(2+)は、かかりつけの内科で経過を見る段階ではなく、腎臓の専門診療につなぐ段階です。
私は透析の現場にも立っています。透析の準備をお話しする外来で過去の健診結果票を持ってきていただくと、数年前から(2+)が縦に並んでいることがあります。痛くないので放置できてしまうのが、この検査のいちばん厄介なところです。
病気でなくても尿蛋白が出る場面
尿蛋白は、腎臓が正常でも一時的に出ることがあります。これを機能性蛋白尿・体位性蛋白尿と呼びます。試験紙の添付文書と日本腎臓学会の解説が挙げている場面は、次のとおりです。
- 健診前日や当日の激しい運動——運動後の蛋白尿は代表的な良性の蛋白尿です
- 発熱・かぜなどの体調不良——熱が出ているあいだ一時的に出ます
- 脱水——尿が濃くなり、生理的な量でも(±)に振れます
- 強いストレス——日本人間ドック・予防医療学会が、前日の重度のストレスを一時的な陽性の要因として明記しています
- 月経の時期——日本腎臓学会が、採尿時の状況として運動後・発熱時と並べて注意を促している要因です
- おりものや分泌物の混入——腎臓から漏れたのではなく、採尿の途中で混じったたんぱくに試験紙が反応します。性交渉のあとの尿で(+)が出るのも同じ理由で、いずれも検体の問題です。中間尿で採り直せば消えます
- 尿路感染(膀胱炎など)——腎臓の糸球体が無事でも陽性になります
- 採尿した尿を室温で長く置いた——細菌が増えて尿がアルカリ性に傾き、添付文書が偽陽性の原因として明記している状態です
日本腎臓学会は、これらの身体的要因を除くために「別の日に再検査をします」という手順を示しています。1回の(+)で腎臓病が確定することはありません。逆に、これらの心当たりが1つもないのに出ている(+)は、重く扱ってください。
尿蛋白が出やすい人——起立性蛋白尿と、女性で(±)が多い理由
起立性蛋白尿は、立っている時間が長いと尿にたんぱくが出て、横になっていると出なくなる状態です。思春期から20代のやせ型の方に多く、腎臓そのものに病気はありません。日本腎臓学会も、運動後や発熱時の蛋白尿と並べて、起立性蛋白尿を良性の蛋白尿の代表として挙げています。学校検尿や若い方の健診で指摘された(±)(+)が、調べてみると起立性だったということは珍しくありません。
見分け方は決まっています。日本腎臓学会は「起立性蛋白尿の診断には、早朝起床時の尿と来院時の尿を比べることにより判断します」としています。寝て起きた直後の尿が陰性で、日中動いたあとの尿が陽性なら起立性です。健診は午前中の受付が多く、会場まで歩いてきた直後の尿を提出することになるため、この型の方は健診で拾われやすくなります。
女性で(±)が多い背景には、別の要因が重なります。月経の前後の採尿、おりものの混入、そして膀胱炎の頻度が男性より高いことです。いずれも腎臓の病気ではありませんが、「女性だから気にしなくていい」という意味ではありません。混入を避けた条件で採り直して、それでも出るかどうかを確かめる、というのが正しい順番です。再検査では中間尿——出はじめを便器に捨て、途中の尿を採る方法——を使ってください。
病気が原因のとき——何が起きているか
心当たりのある一時的な要因がなく、たんぱくが出続けている場合に考える病気は、大きく3つの系統に分かれます。
- 生活習慣病による腎障害——糖尿病性腎症、高血圧による腎硬化症。健診で蛋白尿が拾われた成人で、私がまず確認する系統です
- 慢性糸球体腎炎——IgA腎症が代表です。日本腎臓学会のCKD診療ガイドも、成人に多い腎疾患の一次性糸球体疾患の筆頭にIgA腎症を挙げています。血圧も血糖も正常な若い方に、検尿異常だけで見つかることがあります
- その他——多発性嚢胞腎などの腎疾患、膠原病に伴う腎障害、尿路の病気
厚生労働省の保健指導プログラムは、対象者への説明文例のなかでこう書いています。
「尿の異常(尿蛋白陽性)は慢性腎臓病の存在を示す重要なサインです。(中略)腎臓が障害されると、通常尿中に出ない蛋白が尿中に出てきます。尿中の蛋白の量が多い状態が続いている場合は、慢性腎臓病です。また蛋白尿は多いほど、慢性腎臓病が悪化する可能性が高くなります。」——厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」
慢性腎臓病(CKD)は、尿検査の異常か腎機能低下(eGFR 60mL/分/1.73m2未満)が3か月以上続くことで診断されます。1回の(+)ではCKDとは言えませんが、逆に言えば、3か月後にもう一度調べないかぎり否定もできません。
糖尿病のある方は、試験紙の尿蛋白では早期をとらえられない
糖尿病のある方が見るべき尿の項目は、尿蛋白ではなく尿アルブミンです。糖尿病性腎症は、まず微量のアルブミンが漏れるところから始まります。この段階では尿の中のアルブミンの濃さが試験紙の検出感度に届かないため、試験紙の尿蛋白は(−)のまま進みます。
慢性腎臓病の重症度分類でも、糖尿病がある場合の区分だけは尿アルブミン/クレアチニン比で決められています。
| 区分 | 糖尿病がある場合 尿アルブミン/Cr比(mg/gCr) |
糖尿病がない場合 尿蛋白/Cr比(g/gCr) |
試験紙の目安 |
|---|---|---|---|
| A1(正常) | 30未満 | 0.15未満 | (−) |
| A2(軽度) | 30〜299 | 0.15〜0.49 | (±) |
| A3(高度) | 300以上 | 0.50以上 | (+)以上 |
糖尿病で通院している方は、尿アルブミンが測られているかを一度確かめてください。測られていなければ、次回の受診で追加を相談する価値があります。血糖側の数値の読み方はHbA1cの数値の意味に、同じ尿検査の欄に並ぶ尿糖については尿糖(±)(+)の意味にまとめました。
毎年(±)が続いている——問題ないのか
毎年続く(±)は、「毎年出ているから大丈夫」ではなく「3か月以上続いている可能性が高い」という意味に読み替えてください。慢性腎臓病の診断条件は、尿検査の異常が3か月以上続くことです。5年続いている(±)は、この条件をとうに満たしています。
ただし、起立性蛋白尿の方も毎年同じように(±)が出ます。どちらなのかを決めるのは、試験紙の反復ではなく定量と腎機能です。私の外来では、毎年(±)という方にはまず次の3つを揃えます。尿蛋白/クレアチニン比、血清クレアチニンから計算したeGFR、そして早朝第一尿。これで起立性か、A2区分のCKDかが分かれます。
そして、ここを毎年見ていただきたいという数字があります。去年のeGFRと今年のeGFRの差です。たんぱくが同じ(±)でも、eGFRが毎年下がっているなら意味がまったく違います。結果票は捨てずに並べて持ってきてください。
尿蛋白と尿潜血が両方出たとき
尿蛋白と尿潜血がそろって陽性の場合は、単独で出ているときより優先度が上がります。日本腎臓学会は、腎臓専門医へ紹介すべき条件の2つ目に「蛋白尿と血尿がともに陽性(1+以上)」を挙げています。
理由は、この組み合わせが糸球体腎炎を示唆するからです。日本腎臓学会の解説にも、血尿に加えて尿に蛋白も混じっている場合は糸球体腎炎が疑われ、腎生検という精密検査が必要になることがある、と書かれています。血尿だけなら尿路結石や膀胱の病気を考えて泌尿器科ですが、たんぱくが一緒に出ているなら腎臓内科です。結果票を持って受診するとき、この2つが並んでいることを最初に伝えてください。診療科の選択が変わります。
症状は出るのか——尿の泡立ちとむくみ
健診で指摘される段階の尿蛋白に、自覚症状はほとんどありません。日本腎臓学会は、慢性腎臓病では多くの場合、自覚症状が透析の直前まで出にくいと明記しています。症状が出ないからこそ検尿が要る、というのがこの検査の存在理由です。
よく聞かれる「尿の泡立ち」は、たんぱくが多量に出ると起こりうる現象です。ただし、勢いよく排尿したときの泡や、洗剤の残った便器の泡とは区別がつきません。泡が立たないことは、たんぱくが出ていないことの証明にはなりません。目安として、消えずに数分残るきめ細かい泡が続く場合は一度調べる価値がある、という程度に考えてください。
むくみは、たんぱくの漏れがかなり多くなってから出ます。靴下の跡が夕方に深く残る、朝にまぶたが腫れる、体重が数日で2〜3kg増えた——このあたりが出ていれば、健診を待たずに受診してください。
放置するとどうなるのか
たんぱくが漏れ続けている状態を放置したときに起きるのは、腎機能がゆっくり下がり続けることです。そして慢性的に失われた腎機能は戻りません。脱水や薬で急に悪くなった腎障害は原因を取り除けば戻ることがありますが、年単位でゆっくり減った分は戻らない。ここが血糖や血圧と決定的に違う点です。
厚生労働省のプログラムが書いているとおり、蛋白尿は多いほど慢性腎臓病が悪化する可能性が高くなります。慢性腎臓病が進めば透析が必要な末期腎不全に至りますが、透析に届く手前で先に起こることがあります。脳卒中と心臓病です。日本腎臓学会も、慢性腎臓病になると腎不全だけでなく心筋梗塞・脳卒中の発症や死亡の危険性が高くなると述べています。尿蛋白は腎臓の検査ですが、読み取っているのは血管全体の状態でもあります。
一方で、同じプログラムは「慢性腎臓病は、生活習慣の改善や糖尿病・高血圧の治療によって発症を予防することが可能です」とも書いています。早い段階で見つかった方ほど、手が打てる幅が広い。放置の代償と、早く動いた見返りが、どちらも大きい検査です。ステージごとの食事の設計はCKDのステージ別 食事ガイドにまとめています。
何科へ、いつまでに——再検査で行うこと
まずはかかりつけの内科、または腎臓内科です。泌尿器科ではありません(血尿だけなら泌尿器科ですが、たんぱくが主役なら内科系です)。健診の判定が「要受診」なら、次の健診まで待たずに3か月以内を目安に受けてください。
再検査で行うことは決まっています。日本腎臓学会は、再検査のときには試験紙法だけでなく、尿蛋白量と尿クレアチニン濃度を定量して尿蛋白/クレアチニン比を求めることで、より正確な蛋白尿を把握できるとしています。同時に血清クレアチニンを測ってeGFRを出します。
この2つが揃うと、腎臓専門医に紹介すべきかどうかが機械的に決まります。日本腎臓学会が示す紹介の条件は次の3つです。
- 高度の蛋白尿——尿蛋白/クレアチニン比 0.50g/gCr 以上、または試験紙で(2+)以上
- 蛋白尿と血尿がともに陽性——どちらも(1+)以上
- 腎機能の低下——GFRが一定の値を下回る場合(40歳未満の若年者では基準がより厳しくなります)
加えて、3か月で腎機能が30パーセント以上悪化するような速い進行があれば、その時点で相談の対象です。
再検査をどこで受けるか、費用や期限をどう考えるかは健診で要再検査と言われたらに整理しました。
尿蛋白は治るのか
原因によって、消えるものと、減らすことが目標になるものに分かれます。
一時的な要因——運動、発熱、脱水、月経、検体の問題——で出た(±)(+)は、要因が去れば消えます。起立性蛋白尿も、多くは成長とともに出なくなります。これらは「治る」というより、もともと病気ではありません。
一方、糸球体が傷んで出ている蛋白尿は、ゼロに戻すより「減らして、その状態を保つ」のが現実的な目標になります。血圧の管理、減塩、腎臓を保護する薬(レニン・アンジオテンシン系阻害薬やSGLT2阻害薬など)で蛋白尿は減らせます。日本腎臓学会のCKD診療ガイドも、食塩制限とたんぱく質制限の効果として「尿蛋白量減少」と「腎代替療法導入の延長」を同じ欄に並べています。たんぱくを減らすことと、透析までの時間を延ばすことは、同じ列に載っているということです。糸球体腎炎の一部は、免疫を抑える治療で寛解に持ち込めることもあります。
私が外来で患者さんにお伝えしているのは、「たんぱくの量は、これから起きることを変えられる数少ない数字です」ということです。eGFRは基本的に下がる一方ですが、たんぱくは下げられる。だから治療の目標として追う価値があります。
水をたくさん飲めば下がるのか——飲み物で変えられること
水を多く飲めば試験紙の段階は下がりますが、漏れている量そのものは変わりません。試験紙は尿1dLあたりの濃さを見る検査なので、尿が薄まれば表示は軽くなります。添付文書が「尿の比重が高い場合、生理的なアルブミン濃度でも(±)と判定されることがある」と書いているのは、その裏返しです。
これは検査の受け方としては意味があります。脱水気味で受けた健診の(±)は、水分を普通にとった状態で採り直すと消えることがあるからです。しかし治療として水を多く飲むことには意味がありません。むしろ腎機能が下がっている段階では、水分の過剰摂取も極端な制限もどちらも有害だとCKD診療ガイドは述べています。
尿蛋白を下げると称する飲み物やサプリメントで、蛋白尿が減ることを確かめられたものを私は知りません。お茶や健康食品の名前で検索してたどり着いた方には申し訳ないのですが、この数字に効くと確かめられているのは、血圧の管理、減塩、体重、禁煙、そして必要な方には薬です。順番を間違えると、効かないものに時間を使っているあいだに腎機能が下がります。
なお、たんぱく質の多いプロテイン飲料を毎日とっている方は、一度量を見直してください。健康な腎臓でたんぱく質摂取がただちに害になるという話ではありませんが、すでに蛋白尿が出ている段階では過剰にならない範囲に収めるのが原則です。
食事で変えること——塩分とたんぱく質
尿蛋白に対する食事の主役は、たんぱく質ではなく塩分です。日本腎臓学会のCKD診療ガイドは、食塩摂取制限(1日3g以上6g未満)の効果として、はっきり「尿蛋白量減少」を挙げています。減塩は血圧を下げるだけでなく、蛋白尿そのものを減らす手段だということです。日本人の平均摂取量からすると、6g未満はかなり思い切った水準です。
たんぱく質の制限は、段階によって扱いが変わります。同ガイドは、CKDステージG1〜G2(eGFR 60以上)では過剰にならないよう注意する、G3では体重1kgあたり0.8〜1.0g/日、G4〜G5では0.6〜0.8g/日への制限を挙げています。健診で(±)(1+)が出ただけの段階でたんぱく質を減らすのは、やりすぎです。筋肉が落ちれば別の問題が始まります。制限が要る段階かどうかは、eGFRを見てから決めてください。
あわせて、同ガイドは肥満の是正(BMI 25未満を目指す)と、禁煙はCKDの進行抑制のために必須であることを挙げています。日本人間ドック・予防医療学会も、一時的な要因がない場合に必要な改善として糖尿病、高血圧、肥満、喫煙の4つを名指ししています。喫煙は、この4つのなかで唯一その日にやめられる項目です。
減塩の具体的なやり方は減塩の実践ガイドにまとめました。
見落としやすい落とし穴
尿蛋白の読み方には、外来で繰り返し出会う取り違えがあります。
1つ目、(−)なら腎臓は大丈夫だと考えてしまう。試験紙はアルブミンに反応しやすく設計されており、添付文書によればムコたんぱくやグロブリンは60mg/dL以上でないと検出されません。そして糖尿病性腎症の早期に漏れる微量アルブミンは、試験紙の感度に届きません。さらに、たんぱくがまったく出ないままeGFRだけが下がっていくタイプの腎障害もあります。尿蛋白(−)は、腎臓の無罪証明ではありません。血清クレアチニンの欄を必ず一緒に見てください。
2つ目、(+)の重さが資料によって違う。慢性腎臓病の重症度分類は、試験紙(+)以上を高度蛋白尿(A3)の目安として置いています。一方、腎臓専門医への紹介基準の文面は「0.50g/gCr 以上、または2+以上」です。同じ学会の資料のなかで、試験紙の目安が(+)と(2+)で割れているということです。これは試験紙が濃度依存で不安定なことの裏返しで、だからこそ定量(g/gCr)で決めるのが本筋になります。結果票の記号だけで自分の区分を断定しないでください。
3つ目、判定のことばを額面どおりに受け取ってしまう。人間ドックの「要再検査・生活改善」は、eGFRが同じ紙に載っていることを前提に1段階緩められた判定です。その前提が崩れる場面——たとえばeGFRが測られていない職場健診や、eGFRが境界域にある方——では、同じ(1+)でも意味が重くなります。紙に書かれたことばではなく、その紙に腎機能の数字が載っているかどうかを見てください。
ご自身でできること——再検査の前に準備すること
尿蛋白の再検査は、受け方で結果の意味が変わります。ご自宅で、次のことを済ませておいてください。
- 前日の激しい運動を避け、体調のよい日に受ける——一時的な要因を取り除いてから採るのが目的です
- 起床後すぐの尿(早朝第一尿)を、中間尿で採る——起立性蛋白尿を切り分けられます。出はじめは便器に捨ててください
- 採尿からできるだけ早く提出する——室温に長く置いた尿は偽陽性の原因になります
- 月経の期間を外す——女性は、可能なら終了後数日をあけてください
- 過去数年ぶんの結果票を並べて持参する——尿蛋白の欄とeGFRの欄の推移が、その場の1回の数字より多くを語ります
- 家庭血圧を1週間測っておく——蛋白尿と高血圧は互いに悪化させ合う関係で、治療の設計に直接使います
結果票の各項目をその場で確かめたい方は健診結果インタプリタに数値を入れてみてください。
よくあるご質問
Q1. 再検査でも(±)でした。もう一度受けたほうがいいですか?
A. 同じ(±)を3回繰り返すより、検査の種類を変えるほうが答えが出ます。試験紙は尿の濃さに左右されるため、何度繰り返しても(±)のまま決着しないことがあります。次に受けるべきなのは尿蛋白/クレアチニン比の定量と、血液の血清クレアチニン(eGFR)です。この2つが揃えば、慢性腎臓病の重症度分類のどこに当たるかがその場で決まります。私の外来では、2回目も(±)だった方には試験紙の3回目は行わず、定量と採血に切り替えています。
Q2. 尿蛋白が出たと言われましたが、血圧も血糖も正常です。それでも受診は必要ですか?
A. 必要です。血圧も血糖も正常な方に出る蛋白尿には、慢性糸球体腎炎のように腎臓そのものの病気が隠れていることがあります。日本腎臓学会のCKD診療ガイドが成人に多い一次性糸球体疾患の筆頭に挙げているIgA腎症は、健診の検尿異常だけで見つかることが珍しくありません。生活習慣病が原因の腎障害は生活習慣を直せば止まる余地がありますが、腎臓そのものの病気は放置しても止まりません。血圧・血糖が正常でたんぱくだけが出ているときこそ、原因を確かめる価値があります。
Q3. 当日の朝に採尿できず、前夜にとっておいた尿を提出しました。結果は信用できますか?
A. たんぱくの欄については信用できません。尿試験紙の添付文書には、採尿後2時間以内に測定すること、室温に長く置いた尿は細菌が増えてアルカリ性に傾き、たんぱく質の試験部位が偽陽性になる原因になると記載されています。前夜の尿を室温で持ち越した場合、出た(+)が本当の(+)とは限りません。再検査では、当日の起床後すぐの尿をその日のうちに提出してください。冷蔵できない環境なら、会場で採尿する健診を選ぶほうが確実です。
Q4. 子どもが学校の検尿で尿蛋白を指摘されました。大人と同じ考え方でよいですか?
A. 同じではありません。小児では起立性蛋白尿の割合が大人より高く、学校検尿で指摘された方が早朝第一尿では陰性になることが少なくありません。一方で、小児には先天性腎尿路異常やアルポート症候群などの遺伝性腎疾患といった、成人とは異なる原因も含まれます。日本腎臓学会も、小児では採尿方法に工夫が要ることと、成人と考慮すべき疾患が一部異なることを挙げています。学校からの二次検尿の案内には必ず従い、指定された早朝第一尿の採り方を守ってください。
Q5. 腎臓が悪いと言われるのが怖くて受診できていません。受診すると何をされますか?
A. 初回にすることは、尿を出すことと腕から採血をすることだけです。尿で蛋白と潜血を定量し、血液で血清クレアチニンを測ってeGFRを出します。これだけで、経過観察でよいのか、腎臓専門医に紹介すべきなのかが分かれます。腎生検のような入院の検査は、この結果で必要と判断された方にだけ相談するもので、初回にいきなり行うものではありません。透析の現場に立っていると、いちばん惜しいのは病気そのものより、受診をためらっていた数年のほうです。
尿にたんぱくが出たら、腎機能と一緒に読ませてください
尿蛋白が(1+)以上だった方、(±)が毎年続いている方、尿潜血も一緒に出ている方、糖尿病があって尿アルブミンを一度も測っていない方は、結果票を持って一度ご相談ください。当院では、尿蛋白の定量とeGFRを同じ日に揃え、経過観察でよい段階なのか、腎臓専門医の診療につなぐ段階なのかをその場で切り分けます。体重や血糖が背景にある場合は、食事・運動の設計から、GLP-1受容体作動薬(食欲と血糖を調える消化管ホルモンの薬)を含む薬物療法まで、保険・自費どちらの可能性も含めてご案内します。対面のほか、オンライン診療にも対応しています。
この記事は「健診の数値の読み方」シリーズの1本です。健診結果の各項目を数値帯ごとに読み解く記事をシリーズ一覧にまとめています。気になる項目をその場で確かめたい方は健診結果インタプリタもお使いください。
参考文献
- 日本人間ドック・予防医療学会「尿検査」(尿蛋白の判定区分・生活改善の項目)
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」(尿蛋白に関するフィードバック文例集・健診判定と対応の分類)
- 日本腎臓学会「2.腎臓検診でわかること」(蛋白尿の定義150mg/日・良性と病的の鑑別・起立性蛋白尿・尿蛋白/クレアチニン比)
- 日本腎臓学会『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』第1章(CKDの診断・重症度分類の蛋白尿区分とアルブミン尿区分)
- 日本腎臓学会『CKD診療ガイド2012』(腎臓専門医への紹介基準・食塩3g以上6g未満とたんぱく質摂取量)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)掲載 尿試験紙の添付文書(たん白質試験部位の検出感度・偽陽性の条件・(±)の解釈)
- 日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』(糖尿病性腎症とアルブミン尿)
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