血糖値が急に悪化したら膵臓がん?糖尿病で気づく初期症状と検査

急な症状でお困りの方へ ─ 胸痛・麻痺・激しい頭痛・呼吸困難など緊急性のある症状は 救急受診ガイド(119を呼ぶ目安) をご確認ください。

食事や運動を変えていないのに血糖が急に悪くなり、同時に意図せず体重が減ったら、主治医に伝えて膵臓の検査が必要か聞いてください。糖尿病の人の多くが膵臓がんになるという意味ではありません。ただし、糖尿病を合併した膵臓がん患者2,291例の全国調査では、糖尿病の変化をきっかけに見つかった場合、症状をきっかけに見つかった場合より早い段階のがんが多く見られました。

目次

2026年9月の発表とは

2026年9月30日の東北大学などの発表は、糖尿病の変化が膵臓がん発見の手がかりになる可能性を示した全国調査です。日本糖尿病学会認定教育施設を対象に、糖尿病を合併した膵臓がん患者2,291例の診断経緯を調べました。論文は2026年9月16日にCancersに掲載され、日本糖尿病学会も10月2日に研究成果を知らせています。

糖尿病の悪化や新規発症をきっかけに見つかった膵臓がんでは、早期のステージ0・IAが11.0%でした。腹痛や黄疸などの症状をきっかけに見つかった場合は3.9%です。一方、ステージIVはそれぞれ26.1%と49.5%でした。診断前には、血糖の悪化に加えて体重減少も高頻度に見られました。研究者は、糖尿病の急な悪化に注意することが早期発見の手がかりとなる可能性があるとしています。

膵臓がんで血糖値が上がる理由

膵臓がんで血糖値が上がる理由の一つは、血糖を調節するインスリンなどのホルモンが減ることです。膵臓には、こうしたホルモンをつくる働きがあります。膵臓がんによって糖尿病が新たに発症したり、すでにある糖尿病が悪化したりする場合があります。

膵臓がんになると、膵臓から分泌されるインスリンなどのホルモンが減少することがあります。それによって、糖尿病が発症したり、悪化したりすることがあります。そのため、血糖値などの異常を指摘されたときは、膵臓の検査について医師と相談するとよいでしょう。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん 膵臓がんについて」

血糖値やHbA1cがどのくらい上がったら膵臓がんを疑いますか?

膵臓がんを疑う血糖値やHbA1cの決まった上昇幅は、今回の一次資料には示されていません。私はHbA1cが上がったとき、薬を増やす前に、この3か月で食事・運動・体重・薬・体調の何が変わったかを聞きます。説明できる変化がなければ「説明のつかない悪化」とカルテに記し、腹部の画像検査を検討します。

見るのは数値の高さだけではなく、その人のいつもの値からのずれです。HbA1cの意味と、空腹時血糖・食後血糖の違いも参考に、過去の結果と並べて主治医に見せてください。

血糖の悪化に気づいたとき

血糖の悪化に気づいたときは、生活や薬の変化、体重と症状を一緒に確かめます。次の表を、受診時に伝える内容の整理に使ってください。

状況 考えられること 次にすること
食事・運動・体重・薬に変化がなく、HbA1cが上がった膵臓を含む病気や薬の影響を考える段階HbA1cの推移と生活・薬に変化がないことを主治医に示し、腹部の画像検査を検討する材料にする
血糖の悪化と意図しない体重減少が同時にある全国調査で膵臓がん診断前に高頻度に見られた組み合わせ早めに主治医へ血糖と体重の経過を伝え、消化器内科での精査について話し合う
新しく糖尿病と言われ、家族歴・慢性膵炎・IPMNもある膵臓がんの危険因子が重なる家族歴・慢性膵炎・IPMNを主治医に伝え、糖尿病の治療と並行して膵臓の評価を考える材料にする
ステロイド・抗悪性腫瘍薬・免疫抑制薬などを始めてから悪化した薬の影響の可能性自己判断で中止せず、処方医や薬剤師に伝える
食べすぎ・運動不足・体重増加とともに悪化した生活の変化で説明できる可能性生活を戻し、それでも下がらなければ再評価する
腹痛・背中の痛み・黄疸・食欲不振がある進行した膵臓がんでも見られる症状早めに受診する。黄疸や強い腹痛は次の定期受診を待たずに受診する

膵臓がんに気づくきっかけは何ですか?

膵臓がんに気づくきっかけには、糖尿病の発症・悪化と、腹部などに現れる症状があります。小さいうちは症状が出にくい病気です。進行すると腹痛、食欲不振、腹部膨満感、黄疸、体重減少、腰や背中の痛みが出ることがあります。ただし、これらは膵臓がん以外でも起こり、膵臓がんでも起こらない場合があります。

皮膚や白目が黄色くなる黄疸や強い腹痛があれば、次の定期受診を待たずに受診してください。受診先に迷う場合は救急受診ガイドを確認し、受診先を決めてください。

初期症状がないときの手がかり

初期症状がないときの手がかりになり得るのは、定期的な血液検査に残る血糖値やHbA1cの変化です。糖尿病のある人は血糖値やHbA1cを定期的に測っているため、症状が出る前に数値の変化に気づける機会をすでに持っています。この記録が手がかりになります。過去の記録と比べ、生活を変えていないのに悪化していないかを確かめてください。

糖尿病が長い人も関係ありますか?

糖尿病が長い人にも、急な血糖の悪化は膵臓がんを考える手がかりになり得ます。全国調査では、膵臓がん診断の3年以上前から糖尿病があった人が76%でした。新しく糖尿病になった人だけの話ではありません。

私は長く値が安定していた人ほど、今回だけ上がった理由を具体的に聞きます。体重も減っていれば、本人が意図して減らしたのかを分けて確認します。意図しない減少と血糖の悪化が重なれば、食事指導より先に消化器内科での精査を勧めます。

糖尿病があると膵臓がんになりやすいですか?

糖尿病は、膵臓がんの危険因子の一つです。日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会は、国内の疫学データで糖尿病と膵臓がんのリスク増加に関連があると報告しています。国立がん研究センターは、血縁のある家族の膵臓がん、慢性膵炎、IPMN、喫煙、飲酒、肥満も発生要因に挙げています。

加齢は糖尿病とがんに共通する危険因子ですが、合同委員会の資料に「何歳から」という境目はありません。私は新しく糖尿病と診断した人について、肥満の有無、膵臓がんの家族歴、発症の経過を聞きます。気になる点があれば、糖尿病の治療と並行して膵臓の評価が必要か検討します。

今回の調査で分からないこと

今回の調査からは、糖尿病の人の何%が膵臓がんになるかは分かりません。対象は、すでに膵臓がんと診断された人です。その診断経緯をさかのぼって比べた調査であり、血糖が悪化した人の多くが膵臓がんだという意味ではありません。血糖が悪化する理由には、表に示した生活の変化や薬の影響などもあり、悪化したからといって膵臓がんとは限りません。ただし、理由の見つからない悪化と意図しない体重減少があれば、主治医に伝えてください。

がんになると血糖値が上がることはありますか?

膵臓がんでは、インスリンなどのホルモンが減って血糖値が上がることがあります。また、がんの治療に使う抗悪性腫瘍薬やステロイドなどでも高血糖が起こり得ます。治療中に血糖が悪化したら、使い始めた薬と時期を処方医に伝えてください。口渇や尿の増加については、喉の渇きと高血糖の記事も参考になります。

膵臓の検査で調べること

膵臓の検査は、症状や危険因子、血液検査と画像検査の結果を組み合わせて進めます。血液ではアミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼなどの膵酵素を調べます。ただし、がんがあっても高くならず、ほかの病気で高くなる場合もあります。

腹部超音波は検査の一つですが、胃や腸のガスで膵臓の一部しか見えないことがあります。疑いがあれば造影CT、造影MRI、MRCP、超音波内視鏡などを検討します。腫瘍マーカーのCA19-9などは、値だけでがんかどうかを診断できません。膵臓がんには、現在、国の指針で定められた検診はありません。

血糖の悪化と膵臓の心配は何科に相談しますか?

血糖の悪化と膵臓への心配は、まず糖尿病を診ている主治医に伝えます。受診時に過去の検査結果と体重の変化を示すと、主治医は消化器内科での精査が必要か判断できます。

当院は内科です。私は外来で悪化の理由を確認し、膵臓の画像検査が必要と考えた場合は、検査ができる医療機関への紹介を含めて検討します。

見落としやすい落とし穴

「痩せたから血糖も良くなるはず」と考える。意図しない体重減少と血糖の悪化が同時なら、主治医にその組み合わせを伝えてください。

腫瘍マーカーが正常なら安心する。腫瘍マーカーの値だけでは、膵臓がんの有無を判断できません。症状や血糖の経過も合わせて主治医に伝えてください。

HbA1cが上がったので、薬を増やすだけで終える。生活や薬に変化がない場合は、治療を強める前に悪化の理由を探します。

ご自身でできることは何ですか?

ご自身でできることは、血糖と体重の変化を時系列で示せるようにすることです。直近1〜2年のHbA1cと体重を並べて書き出してください。食事・運動・薬・体調で変わったこともメモします。家族に膵臓がんの人がいるかを確認し、健診の結果票と服薬中の薬の一覧を持って受診しましょう。健診で再検査を勧められた方は、健診で要再検査になったときの記事も確認してください。

よくあるご質問

Q1. GLP-1受容体作動薬で体重が減っている最中にHbA1cが上がりました。膵臓を調べたほうがいいですか?

A. 意図した減量か、意図せず体重が減ったのかを主治医と確認してください。減量中にHbA1cが上がるなら、薬の効き方だけで説明せず、食事・運動・ほかの薬・体調も確認します。悪化の理由が見つからなければ、主治医はその経過を踏まえて膵臓の検査を検討します。

Q2. 腫瘍マーカーのCA19-9が正常なら膵臓がんは否定できますか?

A. 否定できません。腫瘍マーカーの値だけでは、膵臓がんかどうかを診断できません。主治医は血糖の変化や症状も踏まえて画像検査の要否を判断します。受診時にはその経過を伝えてください。

Q3. 人間ドックの腹部エコーで膵臓に異常なしでした。安心していいですか?

A. 腹部エコーでは、胃や腸のガスによって膵臓の一部しか見えない場合があります。血糖の悪化や意図しない体重減少があれば、異常なしという結果も持って受診してください。主治医はその結果と血糖・体重の経過から、追加の検査を検討します。

Q4. 親が膵臓がんでした。糖尿病の私は何に気をつければいいですか?

A. 親が膵臓がんだったことは危険因子の一つです。両親・兄弟姉妹・子どものうち、膵臓がんになった人が2人以上いる場合は家族性膵がんに当たります。家族歴を主治医に伝え、膵臓の評価と、必要なら遺伝カウンセリングについて聞いてください。

Q5. 血糖が悪化した理由が年末年始の食べすぎだと分かっている場合も検査は必要ですか?

A. 食事の変化で説明できるなら、まず生活を戻して血糖値とHbA1cを見直します。ただし、意図しない体重減少がある場合や悪化が続く場合は、食事だけで片づけず主治医に伝えてください。

意図して体重を減らしている方は、減量中の体重変化についての記事も参考にしてください。

血糖の急な悪化で当院に来るとき

HbA1cが理由なく上がった方、意図せず体重が減ってきた方、新しく糖尿病と言われた方は、当院の内科外来に過去のHbA1c・体重の記録(結果票)と服薬中の薬の一覧をお持ちください。血糖が悪化した理由を確かめ、画像検査が必要なら検査ができる医療機関へ紹介します。保険・自費どちらの可能性も含めてご相談ください。

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まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院のご案内

血糖値・HbA1c・体重の以前の記録と、服薬中の薬の一覧をお持ちの上、受診時にお見せください。

当院では、保険診療で糖尿病・生活習慣病を診ています。担当医は小林 正敬(日本糖尿病学会 糖尿病専門医/日本内科学会 総合内科専門医)です。対面診療とオンライン診療に対応しています。

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参考文献

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この記事を書いた人

まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院 代表理事 / 院長。日本糖尿病学会 糖尿病専門医/日本糖尿病協会 糖尿病認定医/日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医/日本内科学会 認定医制度審議会 病歴要約評価委員/日本老年医学会 老年科専門医・指導医/日本抗加齢医学会 抗加齢専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター。医籍登録番号 第486214号。国立国際医療研究センター国府台病院で内科研修を始めた後、糖尿病内科の道に進み、現在は最新の薬物療法(GLP-1作動薬・チルゼパチド等)と、栄養・運動・漢方を組み合わせた包括的な糖尿病・代謝診療を実践しています。

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